臨床整形外科49巻5号

2014年05月発行

症例報告

易感染性疾患既往のない患者に発症した稀な化膿性大胸筋炎の2例

著者： 近藤祐一¹ 伏見一成¹ 川島健志¹ 宮川貴樹¹ 金森茂雄¹ 仁枝祐一¹ 高澤真¹ 坂井聡美² 高見和久²

所属機関： ¹社会医療法人厚生会木沢記念病院整形外科 ²社会医療法人厚生会木沢記念病院内分泌内科

ページ範囲：P.463 - P.466

　われわれは易感染性疾患の既往のない患者に発症した化膿性大胸筋炎の2例を経験した．症例1は78歳の男性で，主訴は発熱であった．自発痛はないが左前胸部の軽度腫脹，発赤を認めた．症例2は29歳の女性で，主訴は発熱，後頚部・右上肢痛，右手のしびれであった．2例とも発症翌日に，胸部CT，MRIで化膿性大胸筋炎と診断され，抗菌薬投与で保存的に治癒した．化膿性大胸筋炎は本邦では非常に稀であり，診断が遅れることがある．過去の報告では手術を要した症例が多かったが，早期に診断，治療を行えば保存的に治癒する可能性があると考えられる．

参考文献

1) 近田　研，伊東克典，山之内国男・他：化膿性筋炎を合併したNIDDMの1例．糖尿病34：1071-1076，1991

2) 浜崎　充，伊藤惣一郎：急性化膿性大胸筋炎の1例．整形外科25：1198-1200，1974

3) 井上三四郎，野口康男，前　隆男・他：化膿性大胸筋炎の一例．整形外科56：1234-1235，2005

4) 清川貴志，畑尾史彦，比企直樹・他：肺血症に陥った大胸筋の化膿性筋炎の1例．日臨外会誌62：1598，2001

5) 久保　学，有吉　護，玉木　隆・他：透析患者に発症した化膿性大胸筋炎，胸鎖関節炎の1例．整形外科48：573-576，1997

6) 奥田隆司，岩渕　亮，中川　悟・他：糖尿病患者に合併した腸腰筋および殿筋の化膿性筋炎の2例．整形外科39：1101-1104，1988

7) López-Rodriguez R, Campos-Franco J, Mallo-Gonzalez N, et al:Sternocleidomastoid and pectoralis major pyomyositis in an immunocompetent patient. Orthopedics 31:1146, 2008

8) 高桑　巧，末松典明，菅原　修・他：化膿性筋炎7例の治療経験．臨整外30：1339-1342，1995