臨床整形外科49巻8号

2014年08月発行

症例報告

新たな尺骨神経障害のメカニズムが考えられた滑車上肘筋の1例

著者： 仲田紀彦¹ 穂積高弘¹ 山川聖史¹

所属機関： ¹がん・感染症センター都立駒込病院整形外科・骨軟部腫瘍科

ページ範囲：P.735 - P.738

　滑車上肘筋による尺骨神経障害の原因は，肘屈曲時に伸長された筋腹による物理的な神経の圧迫とされているが，今回，同筋の筋収縮が尺骨神経刺激の主原因と考えられる症例を経験した．術中に滑車上肘筋以外に尺骨神経を絞扼する因子はなく，滑車上肘筋の電気刺激に伴う収縮により尺骨神経支配筋群の収縮が確認され，また病歴もこれを支持するものであった．滑車上肘筋を持つ若年者の動的因子による尺骨神経障害の一因として滑車上肘筋の収縮による神経刺激が示唆された．

参考文献

1) 坂東健二：北支那人の解剖統計．Ⅲa滑車上肘筋．弘前医学7：123-127，1959

2) Dahners LE, Wood FM:Anconeus epitrochlearis, a rare case of cubital tunnel syndrome:A case report. J Hand Surg Am 9:579-580, 1984

3) 志摩隆之，山下優嗣，豊島良太：滑車上肘筋が原因と考えられた肘部管症候群の1例．整外と災外58：662-664，2009

4) 白石仁志，伊藤益英，鈴木孝宏・他：滑車上肘筋を伴った肘部管症候群．関東整災誌21：259，1990

5) Suden R, Wilhelm A:Das proximale Ulnariskompressionssyndrom unter besonderer Berucksichtigung des M. epitrochleo-anconaeus. Handchirurgie 19:33-42, 1987

6) 鈴木孝宏，長岡正宏，佐藤勤也・他：滑車上肘筋を伴った肘部管症候群．日手会誌12：417-421，1995

7) Wilhelm A:neues uber druckschaden des n. ulnalis und n. radialis. Handchirurgie 2:143-146, 1970