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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科49巻9号

2014年09月発行

雑誌目次

視座

Online Journalを巡って

著者: 関矢一郎

ページ範囲:P.761 - P.761

 研究の成果を英文誌で発表する重要性は現在,誰もが認めることである.いざ論文を投稿する際に,どのjournalを選択するかはいまでも悩ましい問題である.論文を調べる際に,私が大学院生時代であった1990年代後半からは,インターネットのPubMedで検索することが一般的になった.検索結果をプリントして,図書館で紙ベースの論文を探し当て,コピーしたものであった.本学にない場合は,図書館の窓口に申請して数日かけて取り寄せていただいた.ひとつの論文が受理されるまでには,数十編の論文のコピーが束となり,本棚をふさいだものである.

 現在では所属する施設で契約しているjournalや出版社のものは,PubMedのサイトのリンク先から容易にダウンロードして,PDFで全文をみることが可能になっている.そのため,紙ベースで保存する必要がなくなり,以前に集めた文献のコピー集は,惜しげもなく廃棄することが可能となった.また,所属学会から送られる紙ベースのjournalも廃棄可能となり,本棚のスペースに余裕ができた.いつでもPDFでみることができるので,ダウンロードしたファイルに名前をつけたりそれを探しあてる手間をなくすため,自分のコンピューターにPDFのデータを保存する必要もなくなった.

誌上シンポジウム 骨粗鬆症に対する治療戦略

緒言 フリーアクセス

著者: 宗圓聰

ページ範囲:P.762 - P.762

 骨粗鬆症に関しては,診断基準や各種ガイドラインが相次いで発表されるとともに新たな薬剤も次々と登場してきた.現在わが国の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」が改訂作業中ではあるが,新薬の登場も少し時間が空くことから,現時点での骨粗鬆症に対する治療戦略に関する特集を組ませていただいた.

 わが国の「原発性骨粗鬆症の診断基準」は2013年に2012年度改訂版が発行され,同時に診断に際して重要な椎体骨折評価基準も改訂されたが,診断基準の改訂内容は,既にわが国の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」2011年改訂版の薬物治療開始基準に盛り込まれていた.これら診断基準と薬物治療開始基準について,まず紹介していただいた.次いで,骨粗鬆症治療薬が次々と登場し選択肢が増えたが,原発性骨粗鬆症に対する使い分け,逐次,併用療法,さらには治療効果判定について概説していただいた.最近,骨折の連鎖を断つための種々の運動が世界中で展開されているが,わが国でも日本骨粗鬆症学会が主導し,骨粗鬆症リエゾンサービスがスタートしつつある.そこで,これら国内外の活動について紹介していただいた.

原発性骨粗鬆症の新たな診断基準―予防と治療ガイドライン

著者: 細井孝之

ページ範囲:P.763 - P.767

 骨折を起こしていない状態での骨強度の臨床的指標として骨密度の値が最も有用であることを反映し,骨粗鬆症の診断は骨密度の評価と鑑別診断・除外診断に基づいている.一方,骨粗鬆症による骨折,特に椎体骨折や大腿骨近位部骨折をすでに起こした患者における再骨折リスクは,骨密度で補正しても臨床的に有意なものである.このため,これらの骨折既往を持つ患者は鑑別診断・除外診断のうえで原発性骨粗鬆症と診断することになった.他の骨粗鬆症性骨折を既往として持つ場合には,骨密度の測定結果を合わせて診断する.

原発性骨粗鬆症に対する薬物療法

著者: 白木正孝

ページ範囲:P.769 - P.774

 骨粗鬆症治療薬は最近,長足の進歩を遂げ,各種の薬物が臨床に提供されている.また治療導入への筋道もガイドラインとして示されている.本稿においては,どこまでがエビデンスとして確立されているかを主として述べ,治療現場の参考としたい.

骨折の連鎖を断つための新たな活動

著者: 萩野浩

ページ範囲:P.775 - P.780

 脆弱性骨折の既往は,骨密度や加齢とは独立して脆弱性骨折のリスクを高める.骨折のリスクが高い例を治療対象とするほど費用対効果に優れるが,実際に骨折後の症例のうちで適切な骨粗鬆症治療がなされている例の割合は極めて小さい.そこで,近年,コーディネータを介して2次骨折防止を実施するリエゾンサービスが注目されている.リエゾンサービスによる脆弱性骨折後の骨粗鬆症例を対象とした治療は高い治療効率とそれに裏付けられた優れた費用対効果から,高齢者骨折予防改善のための突破口となると期待される.

生活習慣病と骨粗鬆症

著者: 杉本利嗣

ページ範囲:P.781 - P.785

 骨粗鬆症と動脈硬化・血管石灰化には共通の基盤が存在することが知られ,骨・血管相関と称される.さらに近年,動脈硬化を来す代表的疾患である糖尿病,慢性腎臓病(CKD)などの生活習慣病も骨代謝と密接に関連することが注目されている.糖尿病では骨密度は維持されているにもかかわらず骨折リスクが高い,すなわち骨質劣化型の骨脆弱化を来し,その機序として,酸化ストレス増大による終末糖化産物の骨基質への蓄積や骨芽細胞分化の抑制,骨細胞・骨芽細胞のアポトーシスの亢進などが挙げられる.そして生活習慣病関連骨粗鬆症が続発性骨粗鬆症を来す代表例に位置づけられ,その管理が重要な課題となっている.

ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン改訂に向けて

著者: 鈴木康夫

ページ範囲:P.787 - P.795

 10年ぶりに改訂されたステロイド性骨粗鬆症(GIO)の管理と治療ガイドラインは,国内のGIOのコホートの解析により独自の骨折危険因子を抽出して,初めてスコア法を薬物療法開始の基準判定に導入した.すなわち,1,047例の解析により得られた骨折予測因子である既存骨折,年齢,ステロイド投与量(mg/日),腰椎骨密度をカテゴリー化しスコアを与え,症例ごとの骨折リスクを総スコアで評価する.スコア3以上であれば薬物療法の適応とした.薬物療法の推奨は,骨密度減少と骨折の抑制効果があり,かつ1次予防と2次予防の両者において有効性が確認されているアレンドロネートとリセドロネートが第1選択薬として推奨された.

骨粗鬆症の治療目標の設定

著者: 宗圓聰

ページ範囲:P.797 - P.802

 骨折リスクが増大している患者に対しては骨粗鬆症治療薬の投与を長期に継続する必要があるが,長期使用時の有害事象と関連して,骨粗鬆症治療薬の最適な使用期間の設定や一定期間の治療後の休薬を考慮することが提唱されており,休薬に関する基準も複数提唱されている.

 一方,最近では,骨粗鬆症管理に治療目標を設定するという,さらなる戦略を包含することが提唱されるとともに,treat-to-target戦略も提唱された.現在,骨粗鬆症の治療目標や治療ターゲットを確立することの実現可能性を探るためのタスクフォースにおいて議論されている.

連載 整形外科最前線 あなたならどうする?・29

整形外科最前線 あなたならどうする?

著者: 大歳憲一

ページ範囲:P.803 - P.807

症例

症例:14歳,男性,中学軟式野球投手

主訴:左肘痛

既往歴:特記すべき事項なし

現病歴:小学生から投手として活躍していた.中学3年の3月頃から投球時の左肘痛が出現し,持続するため前医を受診した.約2カ月間の投球中止を中心とした保存療法を実施されたが,症状の改善が認められず,当院へ紹介された.

運動器のサイエンス・6

運動器活動は慢性炎症を抑制する

著者: 半場道子

ページ範囲:P.808 - P.810

運動器活動と転写調節因子

 骨格筋活動と慢性炎症との関係を探るシリーズ,本号では骨格筋収縮時に発現する転写調節因子と,その共活性因子PGC1-αを取り上げる.

 第4回では「身体を動かさないライフスタイル」2)が,全身の慢性炎症の拡大を生み,インスリン抵抗性や動脈硬化の増加につながることを述べた.第5回では,さまざまな疾患に共通する基盤病態である慢性炎症と,その分子機構であるinflammasomeについて解説した.

いまこそ知りたい臨床医に必要な放射線の知識Q&A・9

Q9 福島原発事故 1.環境放射能汚染

著者: 鈴木啓司 ,   山下俊一

ページ範囲:P.812 - P.815

 平成23年3月11日午後2時46分に発生した東日本大震災に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下,福島第一原発)の事故により,環境中に多量の放射性物質が放出され,日本全体そして世界に衝撃が走りました.放射線防護や安全教育,もっと言えば原発安全神話の中で放射線リスク教育も含めて欠落していたために,医療関係者ですら右往左往の状況になりました.今までの基礎知識を再整理して,今回の事故の環境影響をまず考えてみましょう.

臨床経験

臼蓋形成不全股に対するソケットの設置位置の検討

著者: 上西蔵人 ,   老沼和弘 ,   田巻達也 ,   三浦陽子 ,   白土英明

ページ範囲:P.817 - P.821

 2008年6月から2012年6月までに臼蓋形成不全股(Crowe分類2~4型)に対して初回人工股関節全置換術(THA)を施行した193関節を対象とし,ソケットの設置位置を検討した.原臼位に近いほど,臼蓋母床のソケットの被覆度を示すカップCE角は減少したが,適切な内方化と前後方へのプレスフィットおよびスクリュー固定により初期固定が得られた.最終観察時,弛みを認めた症例はなかった.カップCE角が0°以下(-27.6°~28.4°)でも,プレスフィットとスクリュー固定の併用で初期固定が得られることが示唆された.

症例報告

正中神経運動枝を選択的に障害した砂時計状ガングリオンの1例

著者: 橘昌宏 ,   金子哲也 ,   後藤渉 ,   中島一郎 ,   田鹿毅 ,   高岸憲二

ページ範囲:P.823 - P.825

 症例は41歳の女性で,主訴は左手掌部の腫瘤であった.母指球皮線撓側に1.5cmの弾性硬の腫瘤を認め,短母指外転筋の高度萎縮を認めた.正中神経領域の感覚障害は認めなかった.MRIでは中手骨基部掌側でくびれた部分を持つ,T1強調像で低信号,T2強調像で一様な高信号の軟部腫瘤を認めた.摘出術を施行し,術中にガングリオンが手根管内で正中神経の運動枝分岐部を圧迫し,横手根靱帯を運動枝とともに貫通している所見を認めた.ガングリオンにより正中神経運動枝が選択的に障害された非常に稀な症例と考えられた.

脳出血後片麻痺が存在したため診断,治療に難渋した結核性頚椎炎の1例

著者: 保田賢児 ,   相原利男 ,   保田勉

ページ範囲:P.827 - P.830

 頚椎に発症する結核性脊椎炎は1~5%と稀である.結核性頚椎炎が片麻痺患者に発症したため診断,治療に難渋したので報告する.78歳女性の四肢麻痺を発症した結核性頚椎炎に前方固定術を施行した.非片麻痺側の機能は回復した.頚椎性の四肢麻痺が回復しても片麻痺が残存するため,機能回復までは困難を要した.

脊椎骨幹端異形成症に伴う内反股に対し矯正骨切りを行った1例

著者: 小林裕樹 ,   田中宏志 ,   鈴木隆之 ,   荻原哲夫 ,   高岸憲二

ページ範囲:P.831 - P.835

 脊椎骨幹端異形成症Sutcliffe/corner fracture型による進行性の内反股に対し,矯正骨切りを行った1例を経験した.ロッキングプレートを用いたBorden外反骨切り術は,角度矯正と手技が容易であり,良好な固定性が得られ,骨端線を損傷しない利点が挙げられる.本症例の術後経過は良好であり,右術後3年6カ月,左術後3年時点において内反股の再発は認めていない.

外傷性の腋窩神経単独麻痺に対し橈骨神経移行術で再建を行った1例

著者: 岡本駿郎 ,   多田薫 ,   八野田愛 ,   土屋弘行

ページ範囲:P.837 - P.840

 症例は44歳の男性で,バイク乗車中に転倒し,多発外傷を受傷し救急搬送された.全身状態は改善したが,左肩外転障害,上腕外側部のしびれが改善せず持続していた.身体所見,筋電図所見,MRIから腋窩神経単独麻痺と診断し,経過観察していたが改善せず,受傷後4カ月の時点で橈骨神経移行術を施行した.最終経過観察時の術後18カ月時点では筋電図所見,三角筋の萎縮に明らかな改善を認めた.神経移行術は手術時期が問題となるが,受傷後4~6カ月までに行うべきと考えられた.

書評

『服部リハビリテーション技術全書 第3版』 フリーアクセス

著者: 芳賀信彦

ページ範囲:P.830 - P.830

 東大病院リハビリテーション部の本棚に,『リハビリテーション技術全書 第2版』(1984年発行の第1刷)がある.おそらく今までに東大に所属した多くのスタッフが手にしたであろう汚れ具合で,勉強会に使用したと思われるプリント類も挟み込まれている.私と同世代のセラピストに聞くと,皆学生時代からこれで勉強してきたという.「いよいよ第3版が出たのですか」という声も聞こえてきた.

 『リハビリテーション技術全書』は,九州帝大医学部から九州労災病院の初代リハビリテーション科部長を経て長尾病院を開設された服部一郎先生が,約10年かけて医師とセラピスト両方に向けて書き上げた教科書で,1974年に初版が出版されている.第2版までは服部先生が中心となり執筆されたが,亡くなられた服部先生に代わり,第3版は蜂須賀研二先生(産業医科大名誉教授)がまとめられた.北九州地区を中心に60名を超える先生方が執筆されており,まさに九州魂が込められた大作である.

INFORMATION

第28回日本靴医学会学術集会 フリーアクセス

ページ範囲:P.767 - P.767

会期:2014年9月26日(金),9月27日(土)

会場:都久志会館(福岡県福岡市中央区天神4-8-10)

第39回日本足の外科学会・学術集会 フリーアクセス

ページ範囲:P.785 - P.785

会期:2014年11月13日(木)~14日(金)

会長:野口昌彦(至誠会第二病院整形外科 診療部長・足の外科センター長)

会場:シーガイアコンベンションセンター

   (〒880-8545 宮崎県宮崎市山崎町浜山 TEL:0985-21-1111 http://www.seagaia.co.jp/)

第4回関東地区小児整形外科ベーシックコース講習会(兼 日本小児整形外科学会若手セミナー) フリーアクセス

ページ範囲:P.802 - P.802

日時:2014年11月29日(土)13:00~17:00

会場:順天堂大学医学部附属浦安病院 3階講堂

   (千葉県浦安市富岡2丁目1番1号 TEL:047-353-3111)

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P. - P.

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.843 - P.843

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.844 - P.844

文献の書き方 フリーアクセス

ページ範囲:P.845 - P.845

あとがき フリーアクセス

著者: 黒坂昌弘

ページ範囲:P.846 - P.846

 第87回日本整形外科学会学術総会を2014年5月22日から25日まで神戸で,“夢の実現,Soul and Spirit of Orthopaedics”の主題の下に開催させていただいてから,早いもので2カ月が経過しました.準備には,神戸大学の教室,同門の先生方を上げて,約3年間をかけて望みましたが大きな問題はなく,ノーベル生理学・医学賞を受賞され,すべての学会にまったく姿を見せておられなかった,山中伸弥教授にもご登壇いただいて,すばらしいお話をいただきました.おかげさまで1万人を超える参加者があり,行事をすると雨に見舞われることの多かった私にはめずらしく大晴天の中で,あふれる参加者の先生方を迎え,無事学会を終えることができ,皆さんのご協力に心より感謝申し上げます.少しでも皆さんの記憶に残る学会でありましたことを心より願っております.

 学会運営の後の,なんともとも言えない虚脱感の中で7月を迎え,中旬を越えると想像を絶する暑さで例年にない完全な異常気象に,日本が熱帯化してきているのではないか,と思わざるを得ない状況になっていると感じます.先日,広島で越智光夫教授主催で開催されたJOSKAS(日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会)も大成功でしたが,広島の太陽の強烈さに今後の日本の気象に一抹の不安を感じてしまいました.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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