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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科5巻10号

1970年10月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ

25.Neurilemmoma/26.Neurofibroma

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.737 - P.740

症例33:28歳,女.昭和42年1月誘因なく腰痛と両側足底部の冷感出現.同年6月には歩行不安定となり,しだいに膝の力もなくなってきた.昭和43年11月には歩行不能となり,44年5月には膀胱障害が現われ,9月に入院椎弓切除および腫瘍全剔出術を受けた.術後1年で術前のD10以下の知覚障害,病的反射も消失し日常生活も正常に復している.
手術所見:第10胸椎左側椎弓と棘突起は充実性の腫瘍でおきかえられ著しく膨隆し,骨皮質は一部破壊され,線維性被膜で被われた腫瘍は筋肉や第9胸椎後部にも浸蝕し,後膜外側に及んでいた.しかし第9胸髄神経根は正常であった(信州大).

視座

他人の研究や考案を大切に

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.741 - P.741

 明治39年10月に田代義徳先生が東京大学に整形外科の講座を創設され,また松岡道治先生が京都大学に,住田正雄先生が九州大学に,おのおの別個に講座を設けられてからすでに約65年を経過した.著者は田代先生からいえば孫弟子になり,また現在の教授の大部分は曽孫弟子になるのではないかと思う.また初代から数えてすでに第5代に相当する方も多いと思う.
 その間の整形外科の進歩の跡をみるに,地方には多数の学会がもたれ,また年1回総会がひらかれて多数の演題が討議され,また宿題報告やシンポジウムがもたれ,それぞれの演者あるいは担当者を中心にして学会はその方向に研究を集中していつた.

論述

リウマチ手の観血的療法

著者: 津下健哉

ページ範囲:P.742 - P.755

 リウマチ手の手術をはじめて10年が経過した.これについての最初の発表は昭和37年の日整会総会であつたが当時はまだリウマチ手に対する観血的療法の報告は少なく,Bunnell,Kestler,Steindlerらのパイオニア的な報告と,Riordan,Fowler,StraubまたVainioとかVaughan-Jacksonらによつてリウマチ手に対する観血的療法の治療原則の確立と新しい分野の開拓がなされて間もないころであつた.ところがその後数年の間にこの方面の報告は枚挙にいとまのないほどとなり,その手術も欧米においてはきわめてありふれたものとなつてしまつた.しかしわが国においてはまだこの方面についての関心は薄く,とくに内科系医師のリウマチに対する観血的療法の関心はきわめて少ないように思われる.今度はメスを持つ者と持たない者が協力してこの治療の困難な疾患に立ち向うことが必要と思われる.
 さてリウマチにおける手の変形の一次的原因が滑膜炎にあることはよく知られているところで,滑膜の肥厚と滑液の関節内貯留は関節嚢の伸展と弛緩を招来し,ついでリウマチ肉芽は関節軟骨,骨を破壊してloose jointを形成する.前者は炎症期であり,後者は変形発生期と呼ばれるもので,これが治癒期に向うとfibrosisの結果,変形は増強され,固定されてくることとなる.

先天股脱に対する減捻内反骨切り術について

著者: 赤星義彦 ,   森英吾 ,   松永隆信 ,   野坂健次郎

ページ範囲:P.756 - P.764

いとぐち
 先天股脱の早期発見,早期治療の普及化につれて非観血的治療成績は著しく向上してきたが,なお初期治療後の遺残性亜脱臼や難治性脱臼例は少なからずわれわれの外来を訪れる.
 このような症例は第1表にみられるようなさまざまな股関節機構の欠陥ないしは異常を有しており,歩行荷重に伴いさらに2次的変化が互いに絡みあつて助長され,将来変形性股関節症へ進展してゆくことは明らかである.

指末節の脈管像

著者: 松林誠之助

ページ範囲:P.765 - P.772

緒言
 指末節は作業上,重要な働きをしている.指末節はまた,知覚,温度,脈波などの検査の対象としてしばしば用いられる.指末節の脈管像の調査はあまり目につかないので調べてみた.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう(37)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   阿部光俊

ページ範囲:P.773 - P.775

 A:症例は38歳の男性で,44年9月仕事中に急に左下腿が痛くなり,埼玉郡加須市の中田病院を訪れました.初診時の所見では左下腿上部にわずかに腫脹,熱感があり,脛骨に圧痛があります.波動,皮膚の静脈怒脹,所属リンパ節の腫脹などは認められません.検査所見では血沈は1時間15,末梢血ではヘモグロビン11.3g/dl,赤血球数356万で軽度の貧血があり,白血球数7,000,百分率ではBaso.が4%で多くなつているほかは異常ありません.尿も異常なしです.

検査法

新生児および乳児の神経学的検査法とその整形外科的意義(1)—運動機能を主とする乳児の神経学的検査法

著者: 村地俊二 ,   篠田達明 ,   沖高司

ページ範囲:P.776 - P.784

いとぐち
 臨床神経学の知見は整形外科領域において重要な分野をしめているが,乳幼児の整形外科的疾患に関する神経学的アプローチはほとんどとりいれられるにいたつていない.
 運動器疾患を診療の対象とするわれわれにとつて,これまで乳児の中枢性および末梢性運動機能異常を検索し,これを客観的に表現する手段が不十分であつたことは否めないであろう.

装具・器械

進行性筋ジストロフィー症に対する上肢装具の1例(BFO)

著者: 大井淑雄 ,   渡辺通泰 ,   真柴清一

ページ範囲:P.785 - P.789

 進行性筋ジストロフィー症の治療と予後に関しては幾多の試みにもかかわらず悲観的な見解が支配的である.その疾患の進行性増悪の故に患者の末期はきわめて悲惨で,多くの者は中年に達する以前に死亡する1).しかしいろいろの装具や工夫によつて患者の日常生活動作(Activity of Daily Living)に少しでも独立性を指たせ,限られた中ではあるが社会生活をなるべく正常に近く過させようということに関心と努力は払われるべきである.われわれは最近比較的緩慢な経過をたどつた進行性筋ジストロフィー症の1例に対してBFO(Balanced Forearm Orthosis)を応用した上肢装具の作成を試み,これにより患者の日常生活動作(以下ADLと略す)の改善を観察したのでここに報告する.

学会印象記

第1回バイオメカニズム・シンポジウムをふりかえって

著者: 山内裕雄

ページ範囲:P.790 - P.792

まえがき
 Waseda Handでつとに有名な,早稲田大学理工学部加藤一郎教授が中心となつて過去2年来「人工の手研究会」が持たれ,すでに15回の研究発表会が行なわれて来たが,今回,この会が主催で,第1回バイオメカニズム・シンポジウムが45年8月29・30・31の3日間にわたつて,伊豆半島は下田のさき,弓が浜に面する南伊豆国民休暇村にて開催された.
 計測自動制御学会・視聴覚情報研究会・日本ME学会・日本自動制御協会・日本人間工学会・日本リハビリテーション医学会が協賛しているということでも想像つくであろうが,まことに幅の広い会であり,約150名の参会者のほぼ2/3がEngineering側,1/3がMedical側で26演題もほぼ同じような割合で両者からのものであつたが,MとEとの協同研究が漸く盛んになりつつあるので,演題も明確にはMのもの,Eのものとは区別がつき難いものが多く,それ故にこそ,この様な会が持たれたことの大きな意義があるものと思われた.

臨床経験

関節切除術を併用した痛風結節摘出術の1例

著者: 武田栄 ,   池内宏 ,   高橋庄平

ページ範囲:P.793 - P.800

 痛風の約20年に近い長い経過中に,脳出血を合併し,ようやく軽快しつつある患者について,6回にわたつて6ヵ所の痛風結節を摘出および右第1M-P関節切除術を実施する機会を得たので報告する.

軟骨腫(特に軟骨肉腫との鑑別)について

著者: 加藤恭之 ,   今井清勝 ,   今井三男 ,   宇野秀夫

ページ範囲:P.801 - P.806

緒言
 軟骨腫の診断は臨床的に比較的容易である.病理組織学的には,一般によく分化した軟骨組織よりなる.しかし,臨床的に明らかに良性の所見を呈しながら,時に組織学的には細胞成分に富み,不規則な軟骨窩の中に2個以上の細胞の集簇を認めるものや,軟骨量の消失により細胞がやや多形成分を帯びた所見,すなわち悪性の所見を思わせる場合があり,また逆に臨床的に悪性の所見を呈しながら組織学的に良性の所見を示す場合もある.そのため時に軟骨肉腫との鑑別に問題となることがある.
 本邦では松野3),阿部ら1,2,4,5),また欧米ではDahlinl0,11),Ackermanら6〜8,11〜15)により同様な点が指摘されている.

Marfan症候群

著者: 冨士川恭輔 ,   関宏 ,   新名正由 ,   水島斌雄 ,   真崎祐介 ,   宇田正長 ,   秦順一

ページ範囲:P.807 - P.816

はじめに
 1896年,Marfanは,四肢,とくに指趾の長い特殊な疾患をPieds d'araignées(Dolicostenomelia=long,thin extremities)となづけた.
 Achard1)(1902)は本疾患が蜘蛛状手指を呈するところからarachnodactylyなる名称を与え,本疾患の遺伝性を指摘した.Salle2)(1912)は心血管系の異常の合併を,Boerger3)(1914)は眼系の異常の合併を報告し,1つの症候群となし,Wilner4)はこれに家族性を加えて主症状のうち2つ以上見られるものをMarfan症候群としてarachnodactylyから区別した,Boerger3),Ganther5)(1927),Ramber6)(1939)らは原因として下垂体機能充進による内分泌障害説を唱えたが,Weve7)(1931)は本疾患はメンデルの法則に従う優性遺伝で,その原因は先天性遺伝性中胚葉性発育異常であるとし,Dystrophia mesodermalis congenita, typus Marfaniとした.その後多くの報告者によりいろいろな説が唱えられたが,現在では筋骨格系,心血管系,眼系に異常をきたす中胚葉性の先天体遺伝性結合織代謝異常症と考えるのが妥当とされている.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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