論述
リウマチ手の観血的療法
著者:
津下健哉1
所属機関:
1広島大学医学部整形外科学教室
ページ範囲:P.742 - P.755
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リウマチ手の手術をはじめて10年が経過した.これについての最初の発表は昭和37年の日整会総会であつたが当時はまだリウマチ手に対する観血的療法の報告は少なく,Bunnell,Kestler,Steindlerらのパイオニア的な報告と,Riordan,Fowler,StraubまたVainioとかVaughan-Jacksonらによつてリウマチ手に対する観血的療法の治療原則の確立と新しい分野の開拓がなされて間もないころであつた.ところがその後数年の間にこの方面の報告は枚挙にいとまのないほどとなり,その手術も欧米においてはきわめてありふれたものとなつてしまつた.しかしわが国においてはまだこの方面についての関心は薄く,とくに内科系医師のリウマチに対する観血的療法の関心はきわめて少ないように思われる.今度はメスを持つ者と持たない者が協力してこの治療の困難な疾患に立ち向うことが必要と思われる.
さてリウマチにおける手の変形の一次的原因が滑膜炎にあることはよく知られているところで,滑膜の肥厚と滑液の関節内貯留は関節嚢の伸展と弛緩を招来し,ついでリウマチ肉芽は関節軟骨,骨を破壊してloose jointを形成する.前者は炎症期であり,後者は変形発生期と呼ばれるもので,これが治癒期に向うとfibrosisの結果,変形は増強され,固定されてくることとなる.