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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科5巻11号

1970年11月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ

27.Lymphangioma/28.Hemangioma

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.817 - P.820

症例35:41歳,女.1年前より左膝に疼痛あり.初診時,右脛骨上部に軽度の腫脹,圧痛および熱感を認め,X線検査で両側の膝,足,手,肘および左肩に嚢腫状の骨破壊巣を発見した.血液,尿の検査はすべて正常値の範囲内であり,biopsyでリンパ管腫と診断された(関東労災病院).

視座

骨折治療への雑感

著者: 青池勇雄

ページ範囲:P.821 - P.821

 骨折治療の要諦は整復と固定を正しく行なうことで,それをできるだけ非観血的に行なうのが原則である.しかし裂離骨折などではネジ釘などの固定が必要となり,大腿骨頸部骨折では釘とかプレートでの固定,さらには高齢者では人工骨頭置換さえ必要となり,また長管骨骨幹骨折に釘やプレートや髄内釘が適応となり,膝や足など下肢の骨折では変形を残さないように手術を必要とするなど,日ごろ骨折の手術が非常に多くなつている.特に交通事故による骨折では治療の困難なものが多くなり,手術例も増えている.そのような傾向はともすると安易に手術が行なわれ,切らないでも良い骨折までも切つていないだろうかと反省すべきである.
 殊に手術されながら,変形治癒や偽関節をのこしているものを見るたびに痛感することである.

論述

悪性腫瘍転移による骨折に対する骨セメントの利用

著者: 松崎昭夫

ページ範囲:P.822 - P.828

 悪性腫瘍の骨転移は原発巣に対する治療を困難にし,その症状を発現すると患者の苦痛を増し,また看護を困難にする.脊椎や骨盤などではかなり進行するまで症状が出ないこともあるが,長管骨の転移では早期に疼痛が起こり,また病的骨折を起こすことが稀でない.しかも四肢骨にあつては転移の大部分が大腿骨,上腕骨にあるため,病的骨折を起こすと患者の不自由さを増し,身体的にはもちろん,精神的にも悪い影響を与え,患者の余命にさえ影響を及ぼしてくる.これら悪性腫瘍転移による病的骨折は多いものではないが,その治療法の開発,改善はわれわれ整形外科医にとつて一つの課題である.私は1968年より1969年にかけてアレキサンダー・フォン・フンボルト財団の研究奨学生としてミュンヘン大学に留学中,骨セメントが股関節全置換以外にも種々の骨手術に利用され,病的骨折においてもAOの頑丈な内副子との併用で用いられていることを知り,またいくつかの経験をすることができた.帰国後,九大整形外科においても癌の転移による病的骨折に骨セメントを利用した骨接合術を行なう機会を得たが,骨セメントの利用により長管骨への悪性腫瘍転移,特に癌転移またはそれによる病的骨折の手術療法の適応範囲を従来より拡げ,手術成績も改善できるものと考え紹介するしだいである.

脊椎分離辷り症に対する各種後方固定術の検討

著者: 佐藤舜也 ,   蒲原宏 ,   堀田利雄 ,   内間荘六 ,   小林邦作

ページ範囲:P.829 - P.836

 昭和30年8月から昭和44年3月までの間に県立ガンセンター新潟病院整形外科において行なわれれ脊椎分離症,脊椎辷り症に対する手術例数は153例である.これらはすべてが後方固定術であり,前方固定術や分離椎弓摘出非固定術などは行なわれていない.今回直接検討した症例について手術術式と成績との関係を検討したので報告する.

幼児期受傷し,長期間放置されたNo man's land腱損傷の手術経験

著者: 三笠元彦 ,   矢部裕

ページ範囲:P.837 - P.843

 指屈筋腱損傷の修復に関する報告は本邦において,佐藤1),津下2),赤松3),田島4)ら,諸外国において,Boyes5),Pulvertaft6),White7),Zrubecky8),Lindsay9),Thompson10),McKenzie11)ら数多くの報告があるが,長期間放置された指屈筋腱損傷の修復に対する報告は少ない.
 われわれはこの度,幼児期受傷したまま放置され,十有余年後に腱移植術を行なつたNo man's land領域における屈筋腱断裂の4症例を経験したのでその治験を報告する.

境界領域

骨腫瘍の放射線治療

著者: 中野政雄 ,   福間久俊

ページ範囲:P.844 - P.855

はじめに
 骨腫瘍の放射線治療の意義は,罹患肢の機能保持をはかるとともに腫瘍の治癒をもたらすという点である.根治照射により切断ないし離断を免れて治癒すればその意義は大である.しかし骨腫瘍の放射線治療にはいくつかの困難がある.その理由を列挙すると,
 1)骨腫瘍にはきわめて放射線感受性の高いものもあるが,大部分は放射線に抵抗を示すものである.

手術手技

踵骨骨折の手術的療法

著者: 桜井修 ,   稲松登

ページ範囲:P.857 - P.864

 踵骨骨折は,日常しばしば遭遇する骨折であるが,その治療法に関しては,現在でも諸家の意見が一致していない.
 治療のむずかしい理由は,まず踵骨の解剖学的位置から,変形治癒や関節症を生じた場合,他の骨での機能的代償ができにくいこと,骨折の形が多種多様であり,ある場合には,解剖学的復原が困難であること,さらにレ線学的,解剖学的に良好な治癒が,必ずしも良好な機能的治癒に結びつかない症例の多いことなどが考えられる.

検査法

新生児および乳児の神経学的検査法とその整形外科的意義(2)—乳児神経学と乳児整形外科諸疾患との関連

著者: 村地俊二 ,   篠田達明 ,   沖高司

ページ範囲:P.865 - P.872

まえがき
 新生児および乳児の臨床神経学に関する最近の知見は整形外科領域においても重要な役割りをはたすであろうと考えられるが,現在までのところ,乳児神経学を理解し,その知識を背景に診療にあたっているのは乳幼児の脳性まひやその他神経・筋疾患(neuromyopathies)をとりあつかう,一部の整形外科医にかぎられている実状といえよう.
 著者らはいわゆる乳児脊柱側彎症について研究をすすめてきたが,この研究過程において,乳児の運動器疾患を解明するにあたつては,乳児神経学の知識をもつことが,いかに重要であるかを痛感させられたのである.

紹介

“よい義肢システムの設計”をめざして—労働福祉事業団労災義肢センター紹介

著者: 土屋和夫

ページ範囲:P.873 - P.879

まえがき
 リハビリテーション医学に関する一般社会の関心や認識は年を追つて深められ,四肢切断者や肢体不自由者のために,より高度な義肢補装具の出現を期待する機運もしだいに強くなりはじめた.
 わが国の義肢補装具は外国のそれと比較すると,全般的にかなりレベルが低いといわれている.その原因はいろいろ考えられるが,まずは研究者層が薄いことであり,つぎには研究者の大半が整形外科分野に局在しており,工学,心理学その他の分野にはほとんど研究者がなかつたということなどが挙げられよう.さらには,諸分野の科学を綜合する専門的な研究開発機関が設置されなかつたことなどもその一因と考えられる.

座談会

転換期をむかえた義肢

著者: 天児民和 ,   沢村誠志 ,   武智秀夫 ,   山内裕雄

ページ範囲:P.880 - P.888

 天児(司会) 今日は御多用中お集りいただいてありがとうございます.さて今回の座談会のテーマを考えた張本人は岩原名誉教授でして,どうも最近の義肢というのは新聞,テレビにはいろいろと大きく出るが,本当にそのように進歩しているのであろうか,義肢が戦後非常に進歩していることには疑いはないが,実用上問題はないのか,また世界の情勢はその後どうなつておるのかと,そういうことを新しい研究者にお尋ねする座談会をやってみたらどうだろうかというお話でした.それからどういう先生方にご出席いただいたらいいだろうといろいろ考えたのでございますが,わが国で義肢をやつておられる方が多いのでありまして,どなたをというわけにはまいりません.今日も大阪大学の川村さんにも座談会においで願いたいと思つておつたのですが,今晩おそくここにお見えになるということで,今日はこの会にはご出席できなかつたわけであります.

臨床経験

慢性関節リウマチの前腕機能障害に対する手術的療法

著者: 菅野卓郎 ,   阿久津寿一

ページ範囲:P.889 - P.894

 慢性関節リウマチは,手関節,肘関節にもつとも好発する.これら病変に起因する機能障害として前腕の回旋障害をみることははなはだ多い.これら患者ではほとんど常に前腕運動に際し,尺骨遠位端部疼痛ないし橈骨小頭部疼痛を伴い,時には尺骨遠位端の背側脱臼や伸筋腱断裂などをきたすことも稀ではない.
 そこでこれら機能障害を改善し,疼痛を除去し,局所病変の鎮静化によつて,起こりうる合併症を予防することが必要である.しかし薬物療法ないし理学的療法には一定の限界があり,とくに骨,軟骨病変に至つた陳旧例ではこれらによる期待は少ない.

膝窩部嚢腫の4症例

著者: 佐藤太一郎 ,   神谷武 ,   家田浩男 ,   二村雄次

ページ範囲:P.895 - P.902

 膝窩部嚢腫は比較的稀であり,Baker嚢腫,膝関節後方ヘルニア,滑液嚢腫,半膜様筋粘液嚢炎あるいは腓腸筋半膜様筋粘液嚢腫などの名称が与えられることもある.またこれにGanglionを追加することもあつて,膝関節後方の嚢腫については名称とその起源をめぐつて混沌とした現状にある.わが国においては蒲原1),小泉2),宇賀3),杉浦4),広畑5)などの報告があるが,われわれも4例を経験したのでここに報告し,若干の文献的考察を加える.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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