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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科5巻12号

1970年12月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ

29.Myeloma (multiple)/30.Leukemia

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.903 - P.906

症例37:62歳男.昭和41年から腰椎あり.42年9月右肩痛が出現,X線検査で右上腕骨頭の嚢腫状透明巣を発見骨頭切除術を行なう,組織像で骨髄腫と診断,全身のX線像で広範囲の異常を認め,血清免疫電気泳動でK type Ig G myelomaの確診を得た.
その後胸椎や左肩胛骨の有痛性病巣に対する照射や全身的制癌剤投与で,45年11月,あまり苦痛なく日常生活を送っている.

視座

こどもの骨折治療に

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.907 - P.907

 こども,幼小児の骨折にはいくつかの特殊性,特徴がある.骨折部(これをたとえば上腕骨顆上部および橈側顆部),骨折型(これをたとえば竹節状骨折,骨端線離開)などにこれがみられ,また修復機転がさかんで,治癒に導きやすく,またしたがつて治療法が成人におけるのとはおのづから異なるところがあることなどもこれである.これらはいずれも骨折が成長期骨に起こったことに由因するもので,幼若個体の旺盛な活力に関連するものでもある.
 いまさら言うまでもなく,骨折は非観血的に,閉鎖性に治療するのが原則で,とくに幼小児の骨折においてそうである.古くWolfの応変則Transformationsgesetz,Rouxの機能的適応説funktionelle Anpassungstheorieなどにもあるように,骨には大きな順応性,自家調整能がある.それが,生体の活力の特大である幼小児の骨においてはその順応性,自家調整能が驚くほど大で,成人においてはみられないほどの自家調整能を現わし,順応性を示すものである.骨折治療においてこれらの活力,自然治癒力を最大限度に活用しないてはない.

論述

手の末梢神経損傷治療の成績評価の実施法とその意義

著者: 山本潔 ,   広谷速人 ,   上羽康夫

ページ範囲:P.908 - P.918

はじめに
 手の末梢神経損傷による機能障害は社会生活および日常生活において重大な意味をもつており,その治療および治療成績の判定に際しては特別な考慮が払われなければならない.
 われわれは1964年以来,Surgical microscopeを用いて神経縫合をfuniculusのlevelで行なうFunicula suture1〜4)を開発し,臨床面にもこれを応用してかなり優れた成績5)を得ているが,その治療成績の評価に際して,手のような精細な機能を有するものについての合理的な基準がなく,世界に共通する合理的な治療成績評価基準の必要性を痛感している.

CP児の外反扁平足変形

著者: 高松鶴吉 ,   佐竹孝之 ,   柴田玄彦 ,   原晃

ページ範囲:P.919 - P.925

はじめに
 脳性麻痺(以下CPと略す)児は単に神経筋系の問題ばかりでなく種々の困難を有しており,治療を行なううえに各種専門職によるチームアプローチが必要であるということは諸家の強調するところである.よりよいチームを確立することはCP児治療の前提であることは言をまたない.
 CP児に対する手術的療法の可否も,多くの先人達の努力と,このチームによる治療という考えかたの中で種々変遷をしてきているが,現在では,よく吟味された適応,熟練した手術手技,適切な術後管理に加えて,術前,術後に正しい理学療法,作業療法が行なわれることによつて,手術的療法は十分にその成果をあげることができ,ときには非常に有効であると考えられている.

関節リウマチの治療—長期金療法を中心に

著者: 棈松紀雄 ,   宮坂忠篤

ページ範囲:P.926 - P.930

はじめに
 関節リウマチ(以下RAを略す)は非常に多い疾患であるにもかかわらず,その本態が明らかでなく,したがって治療法も確立していないのが現状である.日常RAの治療にあたりとくに痛感することは,病状を正確に把握し評価しにくいことと,治療のスタンダード化が困難であるということである.病状の評価にはSteinbrocker,Lansburyをはじめ多くの基準が提唱されているが,いずれも十分とはいえない.また治療法も薬物療法を中心とした全身療法,滑膜切除術を中心とした局所療法(手術療法)に加えて広義のリハビリテーションを加味するというレールが敷かれているが,個々の症例により治療による反応のしかたが異なり,case by caseの治療を行なわざるをえない傾向がある.
 広く行なわれている薬物療法にしても非常に多くの薬物があり,一方新しい薬剤が現れては消えるという現象がくりかえされている.たとえば一時全盛をきわめた副腎皮質ステロイド剤も,現今では主流から除外されていることは周知のとおりである.

乳幼児期における脳性麻痺の早期診断と早期治療

著者: ,   梅垣修三

ページ範囲:P.931 - P.946

まえがき
 第13回全国肢体不自由児療育研究大会(会長 愛知県立第1青い鳥学園々長・干田嘉八博士)は,1968年10月24日,25日の両日に亘り,名古屋市において開催された.
 本大会は,西独よりFrau Dr. med. Hadwiga Schulzeを招へいし,表題のような特別講演を依頼したが,脳性麻痺の療育に関して益するところが大きかつた.

検査法

整形外科領域におけるリンパ造影

著者: 秋貞雅祥 ,   林三進 ,   東博彦

ページ範囲:P.947 - P.954

はじめに
 リンパ管またはリンパ節を出そうとする方法として,古くから色素を周辺組織に注射することにより染色しようとする試みがなされていた.生体においてX線学的に造影しようとする試みは1928年Memenow研究室が蛙のリンパ管を臭化ナトリウムおよび炭酸ビスマス液を用いてみずかきの皮下に注射して造影したのを初めとする.
 彼らの業績は後年1934年1)発表されているが,生体のリンパ造影(lymphography 以下L. G.と略す)はKinmonth2)(英国の外科医)により初めて行なわれた.Kinmonthは予め青染したリンパ管を切開しリンパ管に直接金属針を刺入した.

境界領域

脊髄損傷患者の膀胱訓練

著者: 宮崎一興

ページ範囲:P.955 - P.964

緒言
 社会経済の進歩発展に比例して,脊髄損傷(以下脊損と略す)が,労働災害,交通災害の産物として社会問題の中に登場してきたことはもはや新しいことではない.その病像の複雑にして多岐な点では,他の疾患に余り例がないといつても過言ではなく,ひとたびこの疾患に真剣に対応した医師は,現代医学の直面するもつとも困難な疾患の一つであることを認めざるをえないであろう.脊損に伴う諸症状は,正に症候群と言うに値するほど多彩であつて,到底一Departmentの専門医の知識をもつて全症状を把握,処理することは困難で,整形外科,神経外科,泌尿器科,神経内科,心理精神科の専門医の協力はもとより,看護要員,機能訓練士,作業療法士,職業指導員,case workerらparamedical staffをも加えた総合的rehabilitation teamが一丸となつて,あくまで患者の福祉を目標に活動するのでなければ理想的なrehabilitationはできるものではない.

手術手技

臓器損傷を伴う骨盤骨折について

著者: 内山元昭

ページ範囲:P.965 - P.975

 骨盤の骨折,脱臼は四肢脊椎のそれに比べると少ないが,強大な外力による重篤な損傷が多く,しばしば骨盤臓器や血管の損傷を合併し,整形外科的処置以外に全身ならびに局所的処置を必要とする点で特有な境界疾患であるといえる.近年産業交通の発達とともに,重篤な労働災害や交通事故が頻発し,骨盤骨折も臓器損傷を合併する症例が増加し注目されている.今回,編集子の依頼を受けたので,最近の手術例をもとに,骨盤骨折に臓器損傷を伴う症例について,外科医の立場から述べてみたい.

臨床経験

乳糜胸手術後骨吸収像を示した1症例

著者: 赤坂嘉久 ,   鈴木勝己 ,   原徹也 ,   神沼誠一

ページ範囲:P.976 - P.980

はじめに
 乳糜胸は稀な疾患で,胸管が先天奇形,損傷,疾患などにより破綻を生じ,胸膜腔に乳糜が貯溜したものである.その外科的療法において胸管を結紮しても,まもなく副行リンパ路が形成され,なんら障害をきたさないとされている.
 最近われわれは非外傷性乳糜胸の手術後,右肋骨,胸腰椎移行部に多発性の骨吸収像を示した1例を経験したので報告する.

広範なる骨硬化像を示した前立腺癌の剖検例

著者: 福岡良樹 ,   大谷宏明

ページ範囲:P.981 - P.988

 転移骨癌の病像は原発臓器の種類により異なり,一般に骨破壊性転移像を示すが,前立腺癌の骨転移は好んで骨形成性転移像を示すものが多く,広範で著明な骨硬化像を示すものでは,しばしば大理石病,Paget病などと誤認されやすい.このように広範に骨硬化を作つた症例は,本邦では,浦山1),菊屋2),本倉3),小宮山4)らの報告例のみである.
 われわれは,ほぼ全身骨に骨硬化像を呈した前立腺癌の症例を経験し,剖検により二,三の興味ある知見を得たので,文献的考察を加えて報告する.

縫工筋短縮症の1例

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.989 - P.994

はじめに
 一般に大腿四頭筋短縮症と呼ばれている疾患は先天性および後天性の原因により大腿四頭筋が拘縮に陥り,そのために股関節および膝関節の関連運動に障害をきたす状態である.しかし,Hnevkovský4),Fairbank and Barret1),Gammie et al2),Karlen7),河野9)らの報告している症例では病変が中間広筋に限局しているためにVastus intermedius contracture or fibrosisと呼ばれ,その症状は膝関節単独の屈曲障害のみである.これに反して,笠井6),木下8)をはじめ多くの人々によつて報告された症例では大腿の前面に注射を受けたことが一つの原因となっていると思われるものが多く,病変は主として大腿直筋にみられると共に股関節および膝関節の関連運動が障害されているので大腿直筋短縮症と呼ばれている.

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基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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