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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科5巻2号

1970年02月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ

9.Osteosarcoma/10.Parosteal osteosarcoma

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.77 - P.80

症例13:12歳の男で,約4カ月前より跛行,右下腿近位部に腫脹が生じ骨髄炎の診断にて化学療法を受けていた.来院時右下腿近位部に腫脹が著明で圧痛および静脈怒張あり,腫瘍は弾性硬で輪廓不鮮明である,43年9月右大腿下部より切断.同年12月両肺野に転移.頭蓋骨にも転移出現,44年5月10日死亡(岩手医大).
症例14:12歳の男で約3ヵ月前より左股関節痛,蹟行を訴えて、ヘルテス氏病または結核性股関節炎として治療されていた.来院時右股関節部に腫脹変形著明,静脈怒張があり,右肺野に数個の転移を認める.発症後8ヵ月にて死亡(岩手医大).

視座

手術は退け際も大切

著者: 佐藤孝三

ページ範囲:P.81 - P.81

 敵を知り己を知らば百戦すともあやうからず,という兵法のことばは,単に戦争に用いられるだけでなく,たとえとして商売上の取引などによく用いられる.医師が行なう手術の場合にも同様のことがいえると思う.患者の状態をよく知つて,さらに自分の力量や病院の協力体制をよく知つて,万全を期して行なう手術には失敗が少ないからである.
 しかし患者の状態をよく知るといつても限度があつて,現在われわれが行なつている諸種の検査法によつて,患者の状態がすべてわかるわけではない.思いがけぬ伏兵に遭遇して,これはしまつたと思うことは多くの人達が経験しているところである.

論述

乳児筋性斜頸のいわゆる自然治ゆについて

著者: 篠田達明 ,   山田英世

ページ範囲:P.82 - P.88

いとぐち
 先天性筋性斜頸には自然治ゆが見られることは知られているが,どの程度の病変が,いかなる経過をたどつて治ゆに至るかについて系統的に報告した文献はほとんど見当らない.近年,胸鎖乳突筋腫瘤が新生児期より乳児初期にかけて発見されるようになり,筋性斜頸症例の大多数は生後1ヵ月前後で外来を訪れてくる.これらの患児について,いずれが自然治ゆを営み,いずれが定型的斜頸に移行するかを初診時にあらかじめ知りうるならば,斜頸の治療上きわめて有意義なことといえよう.
 わたくしたちは筋性斜頸患児のもつ自然治ゆ力はいかなるものか,また早期予後判定の指標となるものは何かを明らかにすることを目的として,生後1ヵ月前後で受診した症例を対象とし,これらにまつたく治療を行なわず,定期的観察のみにより症状の推移を追究した.これら乳児筋性斜頸の無処置経過観察例のうち,ほぼ観察を終えた症例につき検討を加えて報告する.

最近の体内金属応用による脊柱側彎症治療の進歩

著者: 井上駿一 ,   寺島市郎

ページ範囲:P.89 - P.106

はじめに
 脊柱側彎症の治療はながい間もつとも治療困難な脊柱症患として"Crux orthopedica"として考えられてきた.しかしながら今日依然として本態不明な点が多く貽されながらも早期発見,くり返し観察のうえ,体操療法,装具,およびギプス療法を適宜選択するかあるいは組合せ治療により多くの側彎の進行を明らかに防止しえ,さらに進行を制禦しえぬものに対して手術的治療を加えることによって確実な進展予防と矯正保存とが期待できる時代となってきた。
 側彎症の手術的治療法としてstapling,肋骨切除術などが行なわれた時代もあるが,現今では固定そのものに対する一部の根強い批判がありながらも最良の手術的治療法として後方固定手術が安定した成績を示している.

頸部椎間板症の治療成績—とくに放置例を対照として

著者: 佐々木正 ,   平林洌 ,   有馬亨 ,   浅井博一 ,   高橋惇

ページ範囲:P.107 - P.116

いとぐち
 頸部椎間板症の手術療法はSmith & Robinson28)(1957),Cloward4)(1957)が椎体前方侵襲法を開発して以来,数多く追試され,普遍化してきた.それまでに行なわれていた椎弓切除術とあいまつて,近年本邦においても多くの椎体前方固定術に関する手術成績の報告を見る.しかるに保存的療法,とくに放置例についての検討は少ない.
 今日ややもすれば,頸部椎間板症に対して観血的治療にはしりすぎるきらいなしとしない.つまり放置,もしくは保存的に治療しても寛解,もしくは治癒をみたかもしれない症例にまでも手術をしているのではなかろうか.他方,手術効果の上らない症例も少なくない.周知のとおり,脊髄症状を呈したものは発症後経過期間が長いものほど予後は芳しくないのであり,保存的治療で時間を浪費することは許されない.

検査法

Microangiography

著者: 辻陽雄

ページ範囲:P.117 - P.124

緒言
 Microangiographyは古くから解剖学,生理学,血液学領域で利用されてきたが,整形外科領域においてもまた,広く応用されてきている.
 たとえば,大腿骨頭に関してはCooper(1823),Layer(1876)などの古きにはじまりLexer(1904)1),Nussbaum(1924)2),Kolodny(1925)3),Vereby(1942)4),Wolcott(1943)5),Tucker(1949)6),Howe(1950)7),Trueta(1953)8),Harrison(1953)9),Trueta(1957)10),Lemoine(1957)11),Brooke(1957)12),Brodetti(1960)13),Claffy(1960)14)らにより本邦では最近猪狩(1969)15)氏らが本法を応用するなど枚挙にいとまがない.

学会印象記

アメリカ整形外科学会印象記

著者: 加藤文雄 ,   二宮節夫

ページ範囲:P.128 - P.130

限界に来たアメリカの医学研究,医療制度
 このところアメリカの医学界をめぐる雲行きはあまり穏やかでない.その理由のひとつは,インフレ抑制を至上命令とするニクソン政府が,医学研究費を20パーセントもカットする暴挙にでたためである.公立大学のみならず私立大学でも,その大部分をNIHを通して国費にあおいでいる現状だから,こんどの予算切捨ては研究者たちに手痛いパンチをあたえた.もちろん一斉に抗議の声があがつたが,時の権力の前にははかない蚊の叫びでしかないようだ.この調子でこれからも年々予算をけずられてゆくことになると,アメリカの医学研究の黄金時代はもうおしまいで,暗黒の時代に逆もどりするのではないかと嘆く連中も少なくない.他人の不幸をみてよろこぶなぞ,はしたないわざであろうが,日本がアメリカに追いつき追いこそうとするなら今のうちである.
 いまひとつの問題は,「代金ひきかえのサービス」というモットーのもと,資本主義の自由を謳歌してきたアメリカの医療制度が,いよいよゆきづまつてきたことだ.たとえば一日の入院料だけをみても,1966年に48ドルだつたのが,1969年は68ドルにふえ,数年のうちには100ドルに達するだろうといわれる.これは大きな社会問題で,いかに豊かなアメリカといえども,途方もなく膨張する医療費を賄いきれないことが明らかになつてきたのだ.医療の分布のかたよりもひどく,医者の三分の二は人口の半分にみたない富裕階層の治療に専念しているのだから,あとの貧乏人はとても救われない.

歴史

骨折治療の近代史(4)—不錆鋼の開発

著者: 天児民和

ページ範囲:P.131 - P.134

 Lane,Lambotteらが骨折の非観血的療法の限界を知り,さらによき治療法はないかと考えていたとき,ちようどListerの制腐手術の効果が認められた.それなら手術的に骨折の転位を整復してその位置で骨折部を固定しようとした.それには金属の力を借りる必要がある.Laneは金属副子と螺子を,Lambotteは螺子,針金等いろいろと考按して用いた.その中にはよく治癒したものもあつたがその成績ははなはだしく不安定で,金属板の発錆による破損も多く,破損しなくとも螺子は錆のため腐触し固定力を失ない,それよりさらに悪いことには錆による肉芽形成,膿瘍,瘻孔,感染と悲劇的な結末になることが多かつた.そこで固定力強度,耐錆性ある骨接合材料の探求が始まつたのである.米国では金属の代用として象牙が用いられ,日本では神中先生が牛骨を用いた.牛骨は副子,螺子として用いたが度々苛性ソーダで煮沸しているので蛋白は除去せられたため異種骨移植による抗原抗体反応はなかつたが,固定上強度が弱く折損することが多く,仮骨形成,骨癒合も遷延する例もあり,しだいにわれわれの視界より消滅してしまつた.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう(30)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   金子仁

ページ範囲:P.135 - P.138

 A:この症例は,骨腫瘍検討会に出すには,いささか気が引ける症例ですが,あえて御検討いただきたいと思いまして.
 患者は,1歳4ヵ月の女児で,初産児です.妊娠の経過中および分娩には異常はありません.家族歴,既往歴共にはとくに問題となる点はありません.

臨床経験

頸椎手術および頸髄損傷に合併した尿崩症について

著者: 小野啓郎 ,   杉野哲也 ,   小田義明 ,   松井清明 ,   田島隆興 ,   水野祥太郎

ページ範囲:P.139 - P.146

いとぐち
 脊髄損傷患者の尿量が,時として,かなり増減することはしばしば経験される事実である.ただし,水の出納を十分管理し原因をきわめるだけの綿密な取扱いがなされていないので,結局は,異常かどうかさえわからずじまいになりがちである,合併する尿路感染症が,また,原因の究明を困難にすることもある.尿量の異常な増減が,一般に,短期間で正常化するらしいことも見すごされやすい理由にあげられよう.
 最近わたくしどもは頸椎手術および頸髄損傷にひきつづいて起きた尿崩症を3例経験したので報告し,この問題について考察をくわえたい.

頸椎椎管部発生の原発性良性骨腫瘍

著者: 片岡治 ,   原田寛 ,   沢田雅弘

ページ範囲:P.147 - P.153

はじめに
 頸椎の原発性良性骨腫瘍は稀なものであるが,その腫瘍により脊髄症状や神経根症状を呈するのはさらに稀なものといえる.このような神経症状発生には腫瘍が脊椎管内に存在することが条件となるが,自験3例の頸椎部椎管内腫瘍中2例は,脊髄・神経根症状を呈し,他の1例は顕著なmyelogram陽性所見にもかかわらず,なんら神経学的所見を示さないため,これを対照として,それぞれの臨床経過,手術所見および病理組織学的所見とともに,文献的考察を併せて検討を加える.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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