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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科5巻3号

1970年03月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ

11.Benign osteoblastoma/12.Non-ossifying fibroma

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.155 - P.158

症例16:19歳,男,半年前シャッターで頭を打ち,近医にて加療するも頸部の疼痛とれず受診する.既往歴として中学時代に柔道で首を痛めたことがある(日医大).

視座

診察には観察力の涵養を

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.159 - P.159

 先人の見い出した症状のなかには実によく観察されたものがある.たとえば,これを股関節結核に例をみると,初期には膝関節の内側に疼痛のあることを先人が気づいて,診断の一助にしている.知つてしまえばコロンブスの卵であるが,これを気づくには鋭い観察力と注意力が必要であつたはずである.また股関節結核ではごく初期のうちから臨床的には観察できない程度のきわめて軽微な外転位拘縮をもつているものであるが,この時期の股関節のレ線像には,ほとんど認むべき変化がない.あるいは軽度の骨萎縮があるかも知れないが,診断の根拠になるほど明確な所見でないことが多い.ところが,かかる初期でもレ線像で骨盤が患側へ傾いていることを観察して診断の一助になることがある.それは,股関節が外転位にあるから,レ線写真を撮るときに両脚をそろえることで患側に骨盤が傾くのである.しかし骨盤が傾いているといつても軽微なことで,よほど観察力が鋭くないと,このことを予め教えられていないかぎり,自分で気づくのは非常にむずかしい.
 したがつてわれわれは診察のさいは鋭い観察力と注意力を働かさねばならないと思う.また常に,その涵養に努力せねばならない.それにつけても最近はいろいろと立派な科学的な診察法が発見され,発達して,診断がますます確実さを増してきたことは結構なことである.しかし,これらの診察法には,その疾病自体をズバリと言いあてるものは少なく,たいていは非特定なもので,診断の補助にはなるが,それ以上のなにものでもないことが多い.

論述

小児における脊椎分離症および辷り症の観察

著者: 森崎直木 ,   菅原幸子 ,   関谷昭子 ,   鈴木弥重郎 ,   大井淑雄 ,   菊池久 ,   山崎典郎 ,   御巫清允

ページ範囲:P.160 - P.166

はじめに
 ここにいう脊椎辷り症とはNewmanの第II型,すなわち,脊椎分離症に由来するものを意味し,その他の型を含まない.
 脊椎分離症の原因としては古くから,1)先天性,2)後天性の種々の説が述べられている2,7,9,14,19,24,26).しかし生下時すでに関節突起間部に連続性離断が存在していたという確実な症例は報告されていないし,多数の新生児や死産児に対する検索から,このことは否定的である19).後天性説のなかには,a)外傷性,b)trophostatisch,c)dysplastischなどの諸説がある.このうち a)については1回の大きな外傷によつて関節突起間部が離断するのはきわめて稀な外傷に属するし,普通にいう脊椎分離症がこのような骨折に由来することはほとんど考えられない.b)について言えばMeyer-Burgdorfの説えるÜberlastungschädenによる関節突起間部の離断ということは,成人になつてから,年齢とともに本症の頻度が増加することが認められない19)ことなどから,不十分な説といえる.また c)現在もつとも認められている説はBrocher2)のdysplastische Theorieで,関節突起間部をはじめとする脊椎およびその近傍組織のDysplasieに加えて機械的持続外傷によるこの部の離断を生ずるとなすものである.

当科における軟骨肉腫の検討

著者: 山根繁 ,   松野誠夫

ページ範囲:P.167 - P.176

はじめに
 軟骨肉腫については,1855年Volkmann1),1870年Paget2)らが初めて言及して以来,諸家の研究報告が見られるが3)〜6),まだその臨床像,組織所見などについて不明な点が多く残されている.
 今回われわれは北大整形外科において20例の軟骨肉腫を経験し,そのうち17例の経過を観察することができたので,その概要を報告し,二,三の問題点についてふれてみたい.

歴史

骨折治療の近代史(5)—骨折治癒機序

著者: 天児民和

ページ範囲:P.177 - P.182

はじめに
 骨折はいかなる経過をとつて治るのか,どうすれば治りやすくなるのか,何が治癒を妨害するのか,今日でもなお論議の多いところである.しかし現実には骨折は多く発生し,医師はその経過をみているが,速やかに治癒するものもあれば,容易に治癒しないものもある.この事実をどのように観察し,どのように解釈するかによつて結論が異なつてくるのである.もちろん今日では骨折治癒機序はかなり詳細に実験的に臨床的に明らかになつているが,それでもなお何もかも分つたとは言えない.とくに仮骨の骨化機序はまだ明らかではない.それでは昔の医師はどのように骨折治癒機序を考え,どのように治療しようとしたのであろうか.近代史と言うには19世紀の半ばから論ずるべきである.私は1800年間の二,三の著書を読んでみたがはなはだ平凡である.そこで,も少し古い書物を探したところ1545年のAmbroise Paré(第1図)の著書"La Methode De Traicter"(第2図)がある.400年以上の昔ではあるが床屋医師のParéがどのように観察し,これをどのように判断したか大きな興味がある.このParéの著書は最近復刻版ができ,そのうえにZürich大学の医学史担当のHenry E. Sigeristの独文の訳までついている.もちろんこの訳本も絶版になつていたのを復刻したものである.まず先はそれを紹介したい.

座談会

骨腫瘍研究会(金沢)の臨床病理検討会から

著者: 青池勇雄 ,   赤星義彦 ,   牛込新一郎 ,   宇野秀夫 ,   大野藤吾 ,   岡本佼 ,   奥泉雅弘 ,   土肥千里 ,   鳥山貞宜 ,   野口朝生 ,   福間久俊 ,   古屋光太郎 ,   堀江昭夫 ,   前山巌 ,   松野誠夫 ,   松原藤継 ,   松森茂 ,   安田賢一 ,   山根繁 ,   渡部英一

ページ範囲:P.183 - P.209

 青池(座長) それではこれから臨床病理検討会を司会させていただきます.今回は11の症例を提供いただくことができました.レントゲン写真とプレパラートを各症例20枚ずつ御提出願うことになり,大変な御努力をいただくものですから,症例を広く求めることはこちらから遠慮いたしまして,特定の方に御依頼することになつたわけです.
 また,これらの症例を御検討いただく方も,こちらで適当に選ばせていただきました.お願いいたしましたところ,臨床から18,病理から18の方々に御回答をいただき,都合36の回答を得ました.御協力をいただきまして有難うございました.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう(31)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   山内裕雄

ページ範囲:P.210 - P.214

 A:この患者は16歳の女子高校生で,学校の健康診断で右の胸鎖関節部に拇指頭大の異常陰影があることを指摘されて,昭和42年7月31日外来に来ました.臨床的には自発痛,発赤,圧痛もなく外見上でもまつたく腫脹は認められない状態でした.それでProbeをまずとる目的で入院させました.
 B:まずレ線像(第1図)から検討していただきましょう.

検査法

骨・軟骨の病理組織学的観察法(I)—光顕レベルの一般的方法

著者: 三友善夫

ページ範囲:P.215 - P.227

はじめに
 整形外科領域に見られる疾患の形態学的検索は他の組織や臓器に比較して困難な場合が少なくない.この検索法として細胞診,針生検,一般的生検(試切),手術的摘出材料や解剖材料の検査が上げられる.いずれの検査材料も石灰沈着や器質化した膠原線維などの硬組織が対象であるために,材料の採取,固定,脱灰,包埋,薄切,染色などの標本作製過程にArtefactを生ずる機会が多く,病変の理解に誤りや不足を伴いがちである.これらの病変の適確な処理にとつて,十分な臨床的観察が重要で症例の多角的な検討によつてはじめて病理形態学的意義が生まれてくる.多くの疾患の診断に病理組織学的検索は不可欠であるが,その疾患を構成する病変が器質的な変化を示す場合にのみ限られている.組織や細胞の構造に萎縮,壊死,変性などの退行性変化,循環障害,炎症,腫瘍,肥大過形成の特徴的な病変が推定される時に有効である.そのために①患者の既往歴,症状,レ線所見,臨床検査の成績,年齢,発生部位からあらかじめその疾患を推準し,鑑別を要する類似疾患の形態学的特徴をも表現できる標本作製法を選択すること,②その標本に表現された病変を標本作製上生じた人工的産物Artefactから区別することの2点が問題となる.

学会印象記

第25回アメリカ手の外科学会印象記

著者: 津山直一

ページ範囲:P.246 - P.249

 今年1月16,17両日にChicagoで開催された第25回アメリカ合衆国手の外科学会に出席したのでその内容と印象をお伝えさせていただく.アメリカの手の外科学会(American Society for Surgery of the Hand)は今年が25週年の記念すべき会に当るそうで,アメリカ合衆国整形外科学会(American Academy of Orthopedic Surgeons,1月17日より23日まで開催)に先立つて同じ会場のChicagoの大きなホテルPalmer HouseのGrand Ball Roomで行なわれた.会長はNorth CarolinaのDuke大学のDr. Goldnerである.正会員の出席は100名足らずであつたが,整形外科学会に出席の若い医師が大勢講演を聞きに来て居り,2,000近く収容できるGrand Ban Roomもかなりこんでいるほどの盛会であつた.以下各演説内容と印象を紹介する.

臨床経験

Engelmann病の1例

著者: 田川信正 ,   山下弘 ,   伊藤英雄 ,   花村浩克 ,   浅井修

ページ範囲:P.228 - P.234

緒言
 1922年Camuratiにより最初に記載され,1929年Engelmannにより詳細に報告されているEngelmann病の主症状は主として小児の長管骨の骨幹部において,骨皮質の肥厚と骨硬化が多発的,かつ対称的に起こり,筋力低下,歩行障害などを起こすものであるが,先天性骨系統疾患の中でも本症ははなはだ稀なものである.最近本症と思われる1症例を経験したのでここに報告する.

腰痛疾患におけるコンレイ・ペリドログラフィー

著者: 吉田徹 ,   加藤晋 ,   杉浦皓

ページ範囲:P.235 - P.245

はじめに
 Peridurography(硬膜外造影法)は1921年Sicard et Forestier1)によりはじめて報告された.彼らはLipiodol 2mlを仙骨裂孔より硬膜外腔に注入し,この部の腫瘍や圧迫性骨炎等の部位を決定するのに興味をもつたと述べている.なお,これは有名なことであるが,彼らは翌1922年にはじめてLipiodolによるmyelographyを施行している.その後脊髄外科の隆盛にもかかわらず,この絢爛たるLipiodol-myelographyのかげにかくれて,peridurographyについての文献は散見するにとどまる.本邦においては1932年に東2)が第7回日本整形外科学会宿題報告「ミエログラフィーと脊髄外科」のなかで,Lipiodolによる硬膜外造影法に触れ,ついで前田・岩原3)もThorotrastによる硬膜外ミエログラフィーについて述べ,脊髄硬膜外腔造影法なる名称を提唱した.1941年Sanford & Doub4)は空気を硬膜外腔に注入したが,優秀なレ線像が得られなく,判読が困難で注目されなかつた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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