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歴史
骨折治療の近代史(5)—骨折治癒機序
著者: 天児民和12
所属機関: 1九州大学 2九州労災病院
ページ範囲:P.177 - P.182
文献購入ページに移動骨折はいかなる経過をとつて治るのか,どうすれば治りやすくなるのか,何が治癒を妨害するのか,今日でもなお論議の多いところである.しかし現実には骨折は多く発生し,医師はその経過をみているが,速やかに治癒するものもあれば,容易に治癒しないものもある.この事実をどのように観察し,どのように解釈するかによつて結論が異なつてくるのである.もちろん今日では骨折治癒機序はかなり詳細に実験的に臨床的に明らかになつているが,それでもなお何もかも分つたとは言えない.とくに仮骨の骨化機序はまだ明らかではない.それでは昔の医師はどのように骨折治癒機序を考え,どのように治療しようとしたのであろうか.近代史と言うには19世紀の半ばから論ずるべきである.私は1800年間の二,三の著書を読んでみたがはなはだ平凡である.そこで,も少し古い書物を探したところ1545年のAmbroise Paré(第1図)の著書"La Methode De Traicter"(第2図)がある.400年以上の昔ではあるが床屋医師のParéがどのように観察し,これをどのように判断したか大きな興味がある.このParéの著書は最近復刻版ができ,そのうえにZürich大学の医学史担当のHenry E. Sigeristの独文の訳までついている.もちろんこの訳本も絶版になつていたのを復刻したものである.まず先はそれを紹介したい.
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