icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科5巻6号

1970年06月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ

17.Liposarcoma/18.Lipoma

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.419 - P.422

症例23:17歳,女.昭和40年から左膝痛があり.42年1月から疼痛はひどくなり,6月初診.X線検査で左脛骨上端の腫瘍を発見,7月病巣を切除し,massive bone graftを施行.45年1月再読なし(九大).
症例24:26歳,男.1ヵ月前から左膝痛あり.X線像で左大腿骨下部に悪性腫瘍像を認め,大腿切断術を施行した.術後3ヵ月で肺転移が現われ,6ヵ月後死亡した(東北大).

視座

大腿骨頸部内側骨折

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.423 - P.423

 大腿骨頸部内側骨折は人類が長寿になるに従つて多発するようになるが,この骨折には未解決の問題が多い.この骨折では骨頭の血流が遮断されて早期に壊死に陥るのであるが,幸に血流の一部が残存していると,この部から周辺の壊死骨に血流が回復し壊死骨の置換が起こる.骨折の正確な整復と強固な固定が行なわれると,骨折部からも血管が侵入して壊死骨を置換する.骨頭の壊死骨置換が完成するには少なくとも2年を要するといわれている.しかも体重負荷部の置換がもつともおくれる.片脚起立時に骨頭に体重の2倍以上の荷重が加わる.したがつて,置換が行なわれていない体重負荷部にしばしばcollapseが起こる.一般にこれをlate segmental necrosisと呼んでいるが,late segmental collapseと呼ぶのが正しい.壊死は受傷後早期に起こつているのであつて2年後に起こるのではない(Barnes).
 Lintonは大腿骨頸部骨折の転位について研究し,骨折線は常に一定しており,骨折後の転位の程度によつてレ線上の像が種々に変化すると主張した(J.B.J.s.,31-B:184, 1949).

論述

股関節症の治療法の反省と考察—走査電顕像からみて

著者: 広畑和志 ,   石川斉

ページ範囲:P.424 - P.436

はじめに
 すでに電子顕微鏡による形態学的な細胞構造の所見は,われわれの整形外科領域においても漸次,診断や治療に貢献している.軟骨の電子顕微鏡の観察といえば,組織を固定し,一旦超薄切片を作製して,個々の細胞やmatrixなどを対象としたり,あるいはアイソトープや酵素学的操作を加えて,その細胞の機能を推定するのが普通である.これらの方法で試料の表面を観察することは,極めて困難である.そこでレプリカ法が行なわれ,細菌の表面,あるいは金属の表面などが観察される様になつた.われわれの領域でも2〜3の人により関節の表面が観察されている.しかし,この方法でも走査電子顕微鏡に比べると技術上多くの困難な問題があり,かつ,広範囲な自由表面が観察されない欠点がある.走査電子顕微鏡的研究では,すでにリウマチにおける滑膜や軟骨に関しての井上らの報告がある.
 われわれは最近,股関節症に対して,種々の手術療法を行なつているが,それらの手術をしたうちとくに,2例の症例の骨頭の軟骨の自由表面を,走査電子顕微鏡で観察した.この所見を参考にして軟骨の変化と股関節症の手術法について少し検討を加えてみたい.

プラスマ膜およびフィブリン膜の臨床応用

著者: 西重敬

ページ範囲:P.437 - P.445

はじめに
 生体に利用される医用材料,とくに挿入物質は多少とも生物,物理,化学的な反応を伴うものであり,これらの反応については諸々の研究結果が発表され,外用としては各種薬剤,内用としては薬を初め手術時の金属や高分子化学材料に至る各種の分野に対して,それぞれの立場でその生体反応すなわち刺激性が論ぜられており,時として異物として作用する結果好ましくない結果を生ずる場合があり,個人差の問題も見逃すことのできぬ条件となりつつある.しかも生体内において完全に吸収置換される物質は数少なく,これとても抗原抗体反応に悩まされる種々の問題を含んでおり,とくに整形外科領域において使用される各種手術材料においてそうであり,最近優秀な無刺激性金属や合成樹脂の出現により,その無刺激性の故に利用度が増加しつつある.しかし一方において長年月の間には異物としての作用のために除去せざるをえない結果をも招いている現状のように考える.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう(33)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   阿部光俊

ページ範囲:P.446 - P.448

 A:症例は18歳の女性です.昭和44年9月ごろから歩くと左臀部が痛いということで.翌月島田総合病院を受診しました.しかし臀部にはわずかに圧痛がある程度で,腫脹や搏動,波動などはありません.血液や尿の検査でも特別の異常は認められません.
 これがレ線写真です(第1図).planeではあまりはつきりしませんが,Tomo.の方がよく判ります(第2図).右腸骨の仙腸関節に近いところがosteoiyticに抜けています.下方のcortexはうすくなつて少し膨隆していますが消失しているところはありません.

検査法

骨・軟骨の病理組織的観察法(II)—病変の組織表現(1)

著者: 三友善夫

ページ範囲:P.449 - P.457

 骨・軟骨の病理組織学的検索は剖検材料が四肢切断の手術材料をのぞくと,病変の全貌が検索の対象の材料の中に含まれることは極めて少なく,試験切除材料のように一部分の病変の観察か,ときにはその一部分の中に副病変のみで目的の主病変の含まれないことすらある.単純な炎症や腫瘍そのものが得られたとしてもその時期や治療による影響を考えねばならない.さらに骨・軟骨はこの単一な病変に骨の反応性増生,新生,吸収,破壊,骨折,線維化,出血,感染などの副病変が加わつて複雑な形態像を作り上げている.そして採取された材料という狭い小さい場のみの観察によつてその病変が患者の中で果たしている主役的存在を見落して,材料内での主役的病変を把握してしまうことがある.たとえば,ほとんどの骨病変に出現する巨細胞についてみても骨肉腫,巨細胞腫,骨嚢腫,類骨性骨腫,良性骨芽細胞腫,骨軟骨腫,内軟骨腫,軟骨芽細胞腫,軟骨粘液線維腫,線維肉腫など数限りないほどである.この破骨細胞性多核巨細胞を2〜3個把握しただけでは鑑別すべき疾患名を列挙するにすぎないだろう.巨細胞の存在の背景である組織構造,その組織構造の場である個体の性状,つまり年齢,性,病変の部位についての知識,レ線検査の所見による全体像の認識があつてその巨細胞の占めている位置が知れる.

臨床経験

掌骨・指骨に転移した癌の症例

著者: 浜野恭之

ページ範囲:P.458 - P.462

 悪性腫瘍,ことに癌の骨転移の発生頻度はリンパ節,肺,肝などについで高く,整形外科領域においてもこれら癌の骨転移についての報告はしばしば見うけられる.しかし四肢末梢への転移は稀である.私は最近若年者におきたS字結腸原発の腺癌で中手骨に転移した例および左顎下腺癌が示指中節骨に転移した稀な2例を経験したので報告する.

尺側手根伸筋腱鞘より発生したTenosynovial osteochondromaの1例

著者: 狩谷勝 ,   寺山和雄 ,   松井猛

ページ範囲:P.463 - P.466

 腱鞘より発生したosteochondromaは稀であり,調べえた範囲では,諸外国では11例,本邦での報告はまだみあたらないようである(第1表).
 われわれは,左手関節の尺側手根伸筋腱鞘より発生した1例を経験したので報告する.

Morquio病の1剖検例

著者: 山田雄治

ページ範囲:P.467 - P.470

 錐体路症候を伴つた典型的なMorquio病患者を剖検する機会を得たので,症例報告と若干の文献的考察を加えて述べる.

頭部症状を伴ったShoulder-Hand Syndromeの1例

著者: 江川正 ,   吉田博利 ,   朝長邦男 ,   野本晴仁

ページ範囲:P.471 - P.474

 肩手症候群(Shoulder-Hand Syndrome)は,1947年Otto Steinbrockerによつて,"reflex neurovascular syndromes"の一元的概念のもとに独立した一症候群として取り扱われるようになり,以来,欧米ではかなりの報告が行なわれているが,本邦における報告は比較的少ない.
 われわれは,最近,全身痙攣および意識障害に続いて発症した本症候群の難治例を経験したので報告する.

習慣性股関節脱臼の治療経験

著者: 村井俊彦 ,   鈴木勝己 ,   高橋定雄 ,   武井秀丸 ,   佐藤功

ページ範囲:P.475 - P.480

 股関節の習慣性脱臼は稀なものとされており,現在までに約22例の報告を数えるにすぎないが,われわれは最近,外傷性股関節脱臼にひき続いて,比較的軽度の外力により脱臼をくり返した興味ある症例を経験したので,いささかの文献的考察を加えて報告する.

骨髄炎の病勢と臨床検査所見との関係について

著者: 伊藤英弘 ,   黒川高秀 ,   大井淑雄 ,   中村隆一 ,   林浩一郎 ,   高橋定雄 ,   鈴木勝己 ,   南条文昭

ページ範囲:P.481 - P.486

 骨髄炎の治療は,今日なお整形外科領域の大きな課題となつているが,それを適確に行なうためには,その病勢を正しく把握することが大切である.元来,骨髄炎がひとたび慢性化すると,予後の判定は,かなり困難となるが,抗生物質普及後の骨髄炎の病像の変化はこの問題を一層複雑にしていると思われる.
 通常,病勢の判定の手段として,局所所見とともにレ線所見,臨床検査所見が参考とされているが,今回,われわれはこれらのうち,局所所見と日常もちいられている臨床検査の所見との間にどのような関係があるかを調査,検討してみた.とりあげた臨床検査の種類は,赤沈値,白血球数,CRP,ASLO値,血清総蛋白量,赤血球数,ヘマトクリット値などであり,これらの検査成績が骨髄炎の各病期によつてどのような傾向を示すかを調査して,その診断的意義を検討するとともに,局所所見とそれに対する全身反応との関係の一端を考察してみた.

海外だより

パリ報告

著者: 弓削大四郎

ページ範囲:P.487 - P.489

 著者は1965年〜1966年にかけてパリのCochin病院のMerle d'Aubigné教授の下で,今回は,今年1月15日からパリ郊外にあるRaymond-Poincaré病院のJudet教授の許で,フランスの整形外科を研修する機会を得た.
 4年後の今日,医学教育の制度が改革されて,パリ大学医学部は10の医学部に細分化され,それぞれ医学部長がいるようになつている.大世帯で動きのとれなかつたものを小回りのきく小世帯に分けたもので,確実に改善の方向に向かつている.Centre hospitalier et universitaire de Parisとして,Faculté de Cochin(Prof. Merle d'Aubigné et Prof. Postel),Raymond-Poincaré病院と,Foch病院が合併して,Faculté Ouest(西医学部)となり,整形外科は,Prof. Judetと,Prof. Ramadierとなつている.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら