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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科5巻7号

1970年07月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ

19.Osteoid osteoma/20.Angiosarcoma

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.491 - P.494

症例26:28歳,男,昭和43年9月より右大腿に疼痛あり,夜強く痛む.45年2月初診,右大腿中央部内側に骨の膨隆をふれ,圧痛あり.アスピリン無効,血沈1時間値2,45年3月Nidusを含めて骨皮質の肥厚部を切除,翌日より疼痛は消失した(東大).
症例27:23歳,男,昭和38年9月より寝返りをすると頸痛あり,39年2月痛みが強くなり初診,下部頸椎に圧痛,運動制限あり.5月病巣を含めて椎弓切除術を行なう.術後疹痛は消失した(東大).

視座

「骨折治療近代史」の中絶

著者: 天児民和

ページ範囲:P.495 - P.495

 5回に亘って「骨折治療の近代史」を書いてきた.その間医学書院にもいろいろ事故があって本誌の出版が大変遅れてしまい,そのうえあの原稿も1,2回は電話で校正を頼まれた.新聞社でいつも校正している人ならば電話校正ができるかも分らないが,われわれのようなものには少々無理である.自分ではかなり校正したはずであるが,さて印刷になつてみると随分文章もまずいし誤植もある.皆様に申訳ないと思つている.また御愛読を賜つた読者諸兄に深謝したい.
 今回5回でとうとう中絶することになつた.やめるのではない,何故かといえば今執筆するだけの資料がなかなか集まらないためである.骨折のようなあまり普遍的でない医学の分野はこつこつと文献を探してゆかなければならないが,日本の各大学の図書館は歴史を勉強するにははなはだ未整理である.九大の医学部図書館も1860年代から古い有名な雑誌は一応揃つているが,読む人が少ないので本棚の隅つこに押しやられている.とくに単行本はそれがひどい.そんなこともあるので私は多忙な現在の生活の中でそれを探し出すことに大変な時間と労力が要る.それで遂に5回で中絶することにした.

論述

手の新鮮外傷に対する1次再建術(Primary Reconstruction)

著者: 諸橋政樻

ページ範囲:P.496 - P.504

いとぐち
 手の重度損傷初期治療に際して,治療手技に関する問題は,いろいろな角度から検討され,いまなお古くかつ新しい分野として議論が絶えない.それはすでに何度も強調されているように初期治療のやりかたいかんによつてその手の将来が決るといわれても過言でないからである.一方これらの問題の底を支え,かつ出発点となっているのは「手の外科」的観点に基づいた,損傷手に対する評価の仕方と即戦即決を迫られる治療方針のたてかたであろう.
 われわれは〔外傷→(深部組織温存)→創閉鎖→2次的再建手術〕という公式を教えられ,これにしたがつて治療方針をたてて処置を行なつてきた.そして一般には創が複雑であればあるほどできるだけ深部組織に手をつけずにまず皮膚(創)の閉鎖を,という原則が守られ努力されてきた.実際そのとおりなのであるが,しかしここで大切なのは創の形や損傷組織が多種多様で複雑だということと,創の汚染度や組織の生活力喪失度が大きいということとは問題が別だということである,もちろんお互いに深い関係はあろうが,この点をはつきり認識したうえで治療してゆき,創閉鎖ということにある程度安定した成績を得られるようになると,つぎは複雑な創になるほど場合によつては創閉鎖に先だつて深部組織の修復を行なつてもよい,行なつた方がよい,ときには初期治療の際だけしか行なえないものがあるのではないかという考えかたも必要ではないかと思われてきた.

人工関節軟骨を加味したTotal hip prosthesis

著者: 服部彰 ,   臼本順一 ,   戸沢一馬 ,   三浦利治 ,   大西優 ,   鳥越紘二

ページ範囲:P.505 - P.513

 疼痛,運動障害を主訴とする先天股脱に続発する脱臼性股関節症や,切除,摘出が有効な比較的良好な骨腫瘍とか,いずれは阻血性壊死に陥る運命にある大腿骨頸部骨折などは人工関節がその適応となりうる場合が多いと考えられる.
 また臼が手術により堀さくされる必要のあるときはもちろん,臼側が正常あるいはほぼ正常である場合であつても骨頭側を人工骨頭で置換する場合,とくに患者が肉体労働に従事するときや臼底の骨質に骨粗鬆症が存在するような場合には臼側にも人工骨頭に適応した人工臼が装用さるべきである.

強直性脊椎炎の頻度と診断基準について

著者: 辻本正記

ページ範囲:P.514 - P.519

はじめに
 強直性脊椎炎(Ankylosing spondylitis)は他のリウマチ性疾患と同様,まだその原因のよく解明されていない疾患である.ただ,その病変が主に仙腸関節をはじめ,脊椎,末梢関節などに見られ,その一次性炎症過程の結果として,脊椎および脊椎旁組織,罹患関節部に石灰沈着や化骨現象を起こし,強直をきたす疾患と考えられている.
 強直性脊椎炎の完成された特異な臨床像は,臨床家によく知られている.日本においては現在まで数箇の症例報告として散見される1〜3).しかし,その詳細な疫学的調査は,現在までない.

検査法

骨・軟骨の病理組織学的観察法(III)—病変の組織表現(2)

著者: 三友善夫

ページ範囲:P.520 - P.533

I.骨・軟骨の形成異常と生検
 病理組織検査で取り扱われる整形外科領域の材料のうち,腫瘍や腫瘍類似の病変をのぞくと炎症性病変と血管障害性病変はともかくとして内分泌疾患や代謝異常に原因する全身性または単発性に発現する形成異常に対応する先天性発育異常による骨・軟骨疾患の形態像の認識把握にはしばしば困惑させられる.また遺伝的検索によつて染色体の組成や構造の異常が明らかな一群の疾患にあつて,これらの骨・軟骨疾患の細別や発現の程度などを知るために試みられる生検にもおのずから制限があり,時にはまつたく無能に等しい場合も少なくない.とりわけ軽症の先天性形成異常を示す骨・軟骨の病変部位は変形や骨折の発現ののちにはじめて生検が行なわれることが多いために繰り返される骨折のもつ多彩な形態像が原疾患を被覆して生検像は複雑となる.たとえば骨形成不全症osteogenesis imperfectaの定型例や重症例は死産児や生後1〜2年の乳児が大部分で,解剖材料にはなるが生検の対象となる機会は少ない.しかしながらまれではあるがこの疾患の小児思春期型や成人型の病変部位の小切片やこの病変に随伴しやすい骨折部分の断片的な材料から適確に診断し,骨折の原因となつている骨形成不全症を探り出すことが常に必ず可能であるとは限らず,診断し得たとしてもその病変の進展の程度や強さまで把握し,予後まで推定することは容易ではない.そのうえ遺伝的要因をもつ先天性骨・軟骨疾患をもつ個体は比較的感染症を伴いやすく,骨折に加えて炎症性変化や退行性変化を合併しがちで,原疾患の診断はますます困難となる.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう(34)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   古屋光太郎

ページ範囲:P.535 - P.537

 A:患者は47歳の男性で中学校教員です.昭和43年2月ごろより時々上肢のしびれ感,項部痛がありましたが,昭和44年4月ごろより症状が漸次増加し,持続する様になり,近医を受診し頸椎カリエスの疑いありといわれました.同年8月某大学整形外科を受診,消炎鎮痛剤の投与を受けていましたが軽快しないため,11月6日当科を受診,頸椎の異常を指摘され入院しました.入院時両前腕のしびれ感を訴えておりましたが,知覚障害,筋力低下,腱反射の異常などなく,また頸椎棘突起の圧痛,叩打痛もありませんでした.胸腹部にも異常なく,血液一般検査,血清生化学検査はすべて正常,ワ氏反応陰性,血沈1時間6mmでした.入院後持続牽引によりしびれ感は著明に緩解しましたが,炎症であるのか,あるいは腫瘍であのるか,診断不明のまま,まず抗結核療法を開始しました.第1図は昭和44年11月当科入院時のX線像で,第2頸椎には骨硬化の伴う破壊像があり,棘突起は原位置にあるも椎体は前方に辷り,椎弓は消失しています.椎体前部の軟部組織にも病変が波及しているようです.第3頸椎も一部破壊されていますが,椎間板の狭少はありません.断層写真(第2図)でもほぼ同様所見を示しています.しかし45年1月初めに撮影したX-Pで骨破壊の進行を認め.腫瘍を考えて試験切除術を試みることにしました.

海外だより

ヨーロッパのリハビリテーション施設—世界理学療法学会に出席し,あわせて欧州諸国のリハビリテーション施設を視察して

著者: 西重敬 ,   松村秩

ページ範囲:P.538 - P.540

医師の立場から
 1.はじめに
 かねがね本邦におけるPT,OT,またいわゆる整骨師・柔道整復師・マッサージ師・義肢義足製作業者と医師との関連性や制度について兎角の疑問を抱き,諸先輩の海外見聞記を拝見し,また拝聴するにつけても,このままでは日本は諸外国に立ち後れる一方の様な気がして,一度海外の様子を実際にこの目で見たいと考えていたが,今度表題の会議出席および各地のリハビリテーション施設,整形外科,小児整形外科病院を訪れる機会を得て,欧州諸国の実情の一部を知りえたので,参加日本人17名(整形外科医4名,PT9名,その他リハビリ関係者)よりなる視察団内での意見の交換などにより,日本医療制度の特殊事情と相まつて今後改善されねばならぬ大きな問題を提起したく存じ筆をとつて見た.なお同行した東京リハビリテーション学院の松村氏にお願いしてPTに関する感想文を追加して頂くこととなり,この点紙上を借りて御礼申し上げます.

臨床経験

脛骨後方に腓骨の転位固定された足関節脱臼骨折(徒手整復例)

著者: 浜野恭之

ページ範囲:P.541 - P.545

 日常,足関節周囲の骨折治療の機会は多く,その際,常に関節の適合性や荷重軸などについて解剖学的に正しく整復する考慮が払われねばならない.多くの例では非観血的治療によつて満足すべき結果が得られるが,稀には骨片や軟部組織の介入,小骨片の附着の不適合などによつて徒手整復や整復後の保持が不成功に終る場合,観血的治療が必要となる.
 1947年Bosworthは徒手整復の不成功例の5例について"経骨後方に腓骨の転位固定された足関節脱臼骨折"を報告して以来,同様の報告は散見されるが,その中1例を除いて徒手整復は成功せず,観血的に整復されている.私は最近,同様の脱臼骨折で徒手整復に成功した例および,脛骨下端骨折で腓骨が転位固定され,徒手整復に成功した例を経験したので報告し,いささかの知見を述べる.

下肢骨折による膝関節拘縮について

著者: 池田一郎 ,   山本利美雄 ,   松井清明

ページ範囲:P.546 - P.550

緒言
 近年の交通・産業の発達にはめざましいものがあり,これにつれて四肢の外傷は増加の一途を辿つている.骨折治療は現今その手術手技・リハビリテーションの点において長足の進歩をなしている反面,安易にその治療が行なわれ多くの後遺症を残している.ことに下肢骨折は,骨折部位の特異性よりして入院を余儀なくされ,さらには膝関節拘縮という後遺症まで併発し日常生活動作に多大の苦痛を感ずるものである,われわれはこの点に注目し,過去9ヵ年間の患者の動態を調査し下肢骨折に対する向後の治療の一助ともなればと考え,ここに報告する.

骨折を伴わない陳旧性足関節前方亜脱臼の1例

著者: 斎藤篤

ページ範囲:P.551 - P.554

 足関節の脱臼には,後方,前方および外側脱臼があるが,多くは骨折を伴つており,また後方脱臼がもつとも多く.前方脱臼は稀とされている.
 最近,自動車事故により発生した骨折を伴わない足関節の習慣性前方亜脱臼を経験したので報告する.

脊髄脂肪腫—症例報告と本邦27例の検討

著者: 藤田繁実 ,   田坂紀和 ,   清水達也

ページ範囲:P.555 - P.562

はじめに
 脊髄脂肪腫の全脊髄腫瘍に占める頻度は約1%とされ比較的稀なものであるが,1876年GowersがConusのLipomaを報告して以来欧米で100余例あり,本邦では藤縄の髄内脂肪腫剖検例を初めとして26例の報告がある.しかし,脂肪腫の手術結果は他の脊髄腫瘍に比べ不良であるといわれながら,その特殊性や予後に関する報告は少ない.われわれは頸髄部硬膜外脂肪腫を摘出,術後4年まつたく良好に経過している1例を経験し,本邦報告例を集計検討したので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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