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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科5巻8号

1970年08月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ

21.Malignant giant cell tumor/22.Giant cell tumor

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.563 - P.566

症例29:12歳女児.約3ヵ月前になわ飛びをしてから右膝関節内側に疼痛が生じその後同部に腫脹があらわれて来たので昭和29年11月9日入院した(その後の経過は本誌3巻9号815頁参照).
家族歴,既往歴に特記すべきことなく,胸部レ線像で腫瘍の転移はみとめられない.臨床検査成績はいずれも正常範囲内である.
局所所見:右膝関節部がび漫性に腫脹し,内側に静脈怒張が見られる.同部に圧痛があり,右膝関節に軽度の屈曲制限がある(国立東京第二病院)

視座

椎間板と水

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.567 - P.567

 椎間板は生体内で含水度の極めて高い組織で,水分の椎間板機能に関与する意義は大きい.
 Sylven(1951)により,髄核は3次元のゲル構造をなすことが判明し,正常椎間板の機能はゲル構造の髄核の膨潤力と,相接する線維輪組織の弾力性支持により保たれ,この両者が水分分布の均衡を保ちつつ,正常の機能を発揮している.

論述

不良姿勢“平背”の臨床的X線学的研究

著者: 竹光義治 ,   角田信昭 ,   木田浩隆

ページ範囲:P.568 - P.578

 姿勢異常の問題はすでに前世紀末以来ことにドイツ系の整形外科においてやかましく論ぜられ静力学的腰背痛の関係から重要性が指摘されてきた,Staffel(1889)が提唱した姿勢分類中,平背とは腰椎胸椎の生理的彎曲を欠き軀幹部背柱がほぼ直線状をなすものである10,16)(第1図).
 Pitzen15)によればその原因は胚芽異常,クル病,筋麻痺などで先天性平背は通常第5腰椎体の形態異常に基づき,クル病では坐位亀背が,筋麻痺ではPolioとDMPが原因となりうるとした.しかし,愁訴はほとんどなく,予防はクル病の場合のみ考慮され,治療は訓練ことに呼吸訓練のみ記されている.

整形外科領域における血管外科—一般整形外科医のために

著者: 玉井進

ページ範囲:P.579 - P.587

緒言
 近代産業の発達は種々の血管損傷を伴う四肢外傷を招来して,しばしば生命の危険,あるいは四肢の壊死をきたす場合があり,これらの外傷治療にあたる整形外科医にとつて,いまや血管外科技術は必須のものとなつている.しかるに,一般には血管外科は特殊な専門家の手にゆだねられがちで,専門家に恵まれない病院では,仕方なく消極的な処置に終つてしまう場合が多い現状である.
 Carrel(1902)1)にはじまつた血管外科は,過去10年間に飛躍的な進歩をとげ,Jacobson(1960)2)のmicro-vascular surgeryは,外径1mm前後の血管吻合をも可能とし,その応用範囲は一段と拡大されてきた.

先天性内反足に対する外側発育抑制自家矯正手術の遠隔成績

著者: 日下部明 ,   村上克彦 ,   酒井克宣 ,   魚住潔 ,   飯野三郎

ページ範囲:P.588 - P.597

はじめに
 先天性内反足は先天性股関節脱臼とともに整形外科でとり扱う先天性疾患の双壁と見られていたが,近年先天股脱がしだいに予防的措置あるいは早期の合理的な治療方法の開拓によつて昔のような重篤な変形の固定化を見なくなつているのに反し,内反足は普通の先天性二次性内反足といわれているものでも,その解剖学的完癒はもちろん,機能的にも不良な例が意想外に多いように思われる.本来,先天性内反足は早期の保存的治療によることが原則とされ,出産直後のいわゆる即時治療Sofortbehandlung,その後はおそくとも生後3ヵ月以内に始められるべき早期治療Frühbehandlungを熱心に行なうことが近代古典ともいうべき先天性内反足の金科玉条的対策として現在も通用し,その方式自体も原則的にそう変つていない.こうした方法を専門医師の,あるいは卓越した術者の手で行なつても,なお時に著しいirreversibleの変形をきたし,あるいは特殊の異常要素を残存するのは,先天性内反足そのものの中に潜在するgen異常か,発育要因に関連する宿命的変形醸成factorを内包しているためと感ぜざるをえない.

検査法

骨・軟骨の病理組織学的観察法(IV)—電顕レベルの一般的方法

著者: 三友善夫

ページ範囲:P.598 - P.611

はじめに
 日常,骨・軟骨の病変の病理組織学的検索において,原則的には一般的光顕の観察で十分であるが,病変初期,非定型的症例,境界病変の材料に対する病理学的診断は観察者の主観性に左右されやすく,over diagnosisないしlesser diagnosisと評価される結果となり,治療への影響も少なくない.病変の性状をより客観性をもつて把握するために一般的光顕法に加えて組織化学,酵素組織化学的方法,微生物学的方法,螢光顕微鏡,偏光顕微鏡,位相差顕微鏡,電子顕微鏡,さらにAutoradiography,Radiomicrography,発光〜レ線Spectrum法まで用いられる.これらの検索法にはその適応と選択に制限があつて病変の種類によつては極めて有効であるが,必ずしもすべての病変にすぐれた結果を得るわけではない.ここで述べる電子顕微鏡による検索法もVirus particleを検出したり,細胞質内細線維,糖原顆粒,粗面小胞体の特徴を把え,病変の性状を認識できるが,骨・軟骨の手術材料や生検材料の応用にはあまり直接的でない.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう(35)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   宇野秀夫 ,   増田正樹

ページ範囲:P.613 - P.616

 A:患者は8歳の女児,初診は1968年5月22日,右側下顎骨体部腫脹を主訴として来院,1967年4月頃より右側下顎体部の腫脹に気づき,某歯科医を受診したが診断不明であり,腫脹が漸次増大するため横浜市大口腔外科に紹介されてきました.

臨床経験

Hunter syndromeの1例

著者: 堀田寛 ,   塚田知之 ,   久野宗和 ,   江藤盛治

ページ範囲:P.617 - P.624

はじめに
 本邦におけるGargoylismの症例は,最近の三辺1)らの報告によると89例を数え,その臨床像も詳細に観察されている.これに加えて,生化学的検索の進歩は,本症およびその類似疾患を,ムコ多糖体の先天的代謝異常にもとづくSymptomen Komplex,すなわち,Mucopolysaccharidosisとして理解するようになつてきた.われわれも最近,本症の1例を経験し,多少の知見を得たので報告する.

肩鎖関節脱臼に対するDewar法の手術経験

著者: 小林昭 ,   山田勝久 ,   鈴木一太 ,   土屋恒篤 ,   林輝明

ページ範囲:P.625 - P.630

はじめに
 肩鎖関節脱臼は,比較的多く遭遇する疾患であるが,その治療法はとくにこれといつた優秀なものがなく,報告者によりそれぞれ異なつているのが現状である.
 われわれは最近,Dewarが1965年に発表した手術方法で肩鎖関節脱臼の手術を行なつてみたので,その手技をいささかの考察を加えて報告する.

肩甲背神経の刺激とそのEntrapment neuropathyについて

著者: 山本龍二 ,   小島伸介 ,   片山雅宏

ページ範囲:P.631 - P.635

はじめに
 頸の痛み・肩こり・上肢の疼痛・しびれ感を訴えて外来を訪れる患者は多い.われわれはこれらの患者を頸髄自身に異常のあるもの,またいわゆるcervical syndromeやscalenus syndromeなどとして,それぞれの治療を行なつている.また頸部の外傷によるものを頸部捻挫または鞭打ち損傷として治療しているが,これらは自覚症状が多いにもかかわらず他覚症状が少なく,また不明確なことが多いから,その予後判定が難かしい.したがつて,その治療法もむずかしく,以前は定説がなかつた.しかし最近になつて,各方面の研究がすすみ,その本態はまだ十分に解明されていないとはいうものの,一定の方針にしたがつて治療を行なうと,多くの症例は治癒傾向をとることが明らかになつている.しかし単純な頸椎捻挫型以外の症例ではまだまだ難治例が多く,その治療法の研究は今後に残された課題である.
 われわれは上記の頸の痛み・肩こり・上肢の疼痛・しびれ感などの症状は多くのばあい,なんらかの原因によつて起こつた頸神経の刺激状態ではあるまいかと考えた.また疼痛・放散痛・知覚の変化・筋肉の萎縮などの症状は,その結果起こるものと考えている.

ユーイング肉腫と鑑別困難であつた肩甲骨細網肉腫の1症例

著者: 川村碩彬 ,   月村泰治 ,   芝田仁 ,   笠原正夫

ページ範囲:P.636 - P.641

はじめに
 1921年J. Ewingが血管性もしくは血管周囲性の内皮細胞より発生し,一連の臨床的特徴を有する円形細胞肉腫を報告して以来,今日までユーイング肉腫およびその周辺に関する知見が数多く述べられている.
 一方Jackson and Parker(1939)らは発生年齢,臨床症状,良好な予後に加えて病理組織像の特徴から,ユーイング肉腫など既存の骨腫瘍と異なる独立疾患として骨細網肉腫(reticulum cell sarcoma of bone)を報告した.その後Stout(1943)およびGeschickter, Copeland(1949)らが骨細網肉腫とユーイング肉腫は同一の腫瘍であるとの見解を示したのに対して,Schajowicz, Vall, Musculo(1952),Ivins & Dahlin(1953),Francis(1954),Magnus(1956),Schajowicz(1959)らは病理組織学的および組織化学的検索により,骨細網肉腫とユーイング肉腫とを別個の腫瘍と考えるべきであるとの見解を発表し,今日両者は一応別個の腫瘍と考えられている.

3歳男児の鎖骨にみられたAneurysmal bone cystの1例

著者: 森田正之 ,   石山嘉宣

ページ範囲:P.642 - P.645

はじめに
 aneurysmal bone cystはJafféおよびLichtensteinによつて確立された骨嚢腫性疾患の一つであるが,比較的稀な疾患で,とくに本邦における報告例はその特異な組織像にもかかわらず,はなはだ少なく,われわれの文献を探しえた限りではわずかに44例を数えるにすぎない.ことに鎖骨の報告例ははなはだ少なく,本例以外はわずかに1例にすぎない.われわれは最近3歳男児の右鎖骨に発生した本症の1例を経験したのでここに報告する.

多発性神経鞘腫の1剖検例

著者: 詫摩博信 ,   西川英樹 ,   落合勲 ,   浅野伍朗

ページ範囲:P.646 - P.652

緒言
 脊髄腫瘍の報告は毎年増加の一途をたどり,ことに神経鞘腫についての報告は非常に多数にのぼり,決して珍しいものではないが,多発性神経鞘腫の報告例は最近10年間ではみられない.最近われわれは頸髄部の腫瘍摘出手術により神経鞘腫と診断されて以来,10年の経過をたどり,その間に可能な限りの治療を数ヵ所の大病院で受けたにもかかわらず死亡し,その剖検により神経鞘腫が,脊髄の上部より馬尾に至るまでほぼ全域にわたつて,おびただしく発生しているとともに,小脳橋角部と左右の聴神経にもほぼ対称性に発生をみた症例を経験したので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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