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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科5巻9号

1970年09月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ

23.Reticulum cell sarcoma/24.Ewing's sarcoma

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.653 - P.656

症例31:18歳男子.約7ヵ月前より左肩甲部に疼痛があり,2ヵ月前より同部に腫瘤を触れるようになり,昭和44年5月26日入院した.
左肩甲骨棘下窩に鵞卵大の腫瘤を触れ,圧痛があり,軽度の熱感もあるが発赤はない.体温37℃,頸部はじめ全身のリンパ節に腫脹はない.血沈値は1時間5,2時間19,白血球4,000である.44年9月4日棘上窩上部にて肩甲骨を骨膜とともに部分切除し腫瘍を剔出した.術後現在まで転移なし(浜松療護園).

視座

脳性麻痺に関して

著者: 佐藤孝三

ページ範囲:P.657 - P.657

 この8月に札幌で日本リハビリテーション医学会が開催され,そのシンポジウムに脳性麻痺のリハビリテーションがとりあげられた.河邨文一郎会長が司会者となつて,基本方針について小池文英博士,居宅脳性麻痺児について七戸幸夫・高橋武両博士,職業的リハビリテーションについて佐藤俊之博士,脳外傷,脳手術後遺症について喜多村孝一教授が演述されたが,脳性麻痺のリハビリテーションがいかに困難であるかが浮き彫りにされて,考えさせられることが多かつた.
 そもそも脳性麻痺とは何ぞやという質問に対する解答は,現在のところ,中枢性運動障害を主症状とする病変で,その原因は発育途上にある脳になんらかの傷害が加わつて起こり,それに基づく障害が持続し,もとの傷害自体は非進行性のもの,といつたような漠然としたものである.したがつて脳に傷害を与える原因は一元的でなく,傷害の部位や程度も一定していない.1つの独立疾患ではなくて,疾患群あるいは複合障害と呼びたいところである.

論述

コンピューターによる関節リウマチの情報処理—整形外科方面より

著者: 高取正昭

ページ範囲:P.658 - P.665

緒言
 診断の思考論理に多変量の推計学を導入しようと試みられてからすでに20年になり,今や全世界的に医療面への推測統計学とコンピューターの応用は著しいものがある.
 われわれも関節リウマチに対して,その診断面に,膨大な臨床データの整理に,また各種治療の予後を適確に推定すべく,合理的計画的な情報収集を行ない,客観的にそれら情報を処理すべくコンピューターの活用を目指している.

Arthritis mutilans,Acro-osteolysis,Essential osteolysisについて

著者: 塚本行男 ,   有富寛 ,   甲斐佐 ,   山本眞 ,   森久喜八郎

ページ範囲:P.666 - P.675

はじめに
 腫瘍による骨組織への直接の浸潤を除けばosteolysisをきたす症例を見出す機会はそれほど多くはない.
 しかしosteolysisを招来する疾患は数多く存在し,それらを適切に分類するあるいは解説する試みは極めて少なく,なかには病因がまつたく不明であるばかりでなく,その病名の定義すらも不明確な疾患が含まれている.したがつて同一疾患と思われる症例が他の名称の下に報告され,逆に同じ名称の下に他の範疇に入ると思われる症例が報告されている可能性が少なからず存在している.

慢性関節リウマチにおける股関節外科の吟味

著者: 佐藤俊久 ,   広畑和志

ページ範囲:P.676 - P.687

はじめに
 最近の股関節外科の進歩に伴い,慢性関節リウマチ(以下RA)を中心にいわゆるリウマチ性疾患における股関節の外科的療法が,しだいに認識されるようになつた.しかしながら,一貫した外科的治療の体系づけは,本疾患のもつ症状の多彩性,特殊性から,保存的治療と同様,非常に困難で手術適応の選択には何の基準もないのが現状であろう.今後,多いに発展が期待されるところであるが,われわれの今までの些細な経験に基づき,リウマチ疾患における股関節外科のありかたや問題点について臨床的に分析,検討を加えてみた.

手術手技

下顎骨骨折の手術的療法

著者: 上野正

ページ範囲:P.688 - P.694

緒言
 顎骨のうちでは下顎骨の方が上顎骨より骨折が多い.教室症例727例については,上顎1に対して下顎3であるが1,2),アメリカのMallett(1950)3)のごとく1対16のごとき大きい値を出している人もある.
 他方顎骨骨折は最近の交通事故の増加に伴つて,それによるものが激増し,したがつて全体の症例数も増え続けている.第1表は1931年から67年までの教室症例(上下顎骨骨折)673例を各年度ごとに交通事故によるものを抜き出して,その割合を比較したものであるが,終戦後の5年間の17%を最低に,40%から50%に増加し,61年度は64%に達した.このような傾向は欧米の諸報告にもみられる2)

検査法

走査電顕法による正常および病的関節表面の観察—Scanning Electron Microscopy

著者: 井上一 ,   高取正昭 ,   児玉俊夫

ページ範囲:P.695 - P.704

緒言
 最近の関節リウマチにおける局所関節の病態生理に関する多くの報告には,非常に興味あるものが多い.とくに,リウマチ関節の生化学的な研究とともに,リウマチ関節の滑膜および関節液細胞の超微細構造の検索は,関節リウマチの病因論に多くの示唆を与えている.
 われわれも滑膜表面の超微細構造,あるいは泥様残屑の沈着に興味を持ち,scanning electron microscopyを用いてその形態学的観察を行なつてきた1)

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう(36)

著者: 骨腫瘍症例検討会

ページ範囲:P.705 - P.708

 A:症例は19歳男性で,主訴は右膝関節痛です.
 1969年8月頃より階段の昇降に際し,右膝関節の疼痛をきたすようになり,12月25日に当科外来を受診しました.外来受診時右膝関節の腫脹や変形はなく,可動性も良好で,外見上異常所見を認めませんでした.レ線所見にて,右膝蓋骨に異常陰影があり,そのまま経過をみておりました,1970年4月11日に入院致しました.

臨床経験

脊椎管狭窄を伴つた偽仮性副甲状腺機能低下症の1例

著者: 奥江章 ,   甲斐佐 ,   角田信昭

ページ範囲:P.710 - P.716

 1942年Albrightら1)は特発性副甲状腺機能低下症(Idiopathic Hypoparathyroidism 以下I. H.と省略)に類似した臨床像(低Ca血症,高P血症,テタニー,白内障など)を呈するにもかからず,I. H.のようには副甲状腺ホルモンに反応しない疾患で,I. H.とは明らかに異なつた身体的特徴(侏儒,著しい円形顔貌,中手骨短縮など)をもつ疾患を発表,これを仮性副甲状腺機能低下症(Pseudohypoparathyroidism 以下P. H.)と名づけた.その後1952年2)になりP. H.に著しく類似した身体的特徴を示す症例で生化学的には異常なく,副甲状腺ホルモンに正常に反応する疾患を報じ,この症候群を偽仮性副甲状腺機能低下症(Pseudo-pseudohypoparathyroidism 以下P. P. H.)と呼んだ.以後今日までに本邦の3例を含む110数例が世界中より報告されている.
 われわれも最近偶然に腰痛を訴えて来院した患者の中にこの症候群を見出したので,これに加えた諸検索の結果を報告する.

腰椎麻酔を必要としない水溶性造影剤ConrayによるMyeloradiculography

著者: 加藤晋 ,   吉田徹 ,   杉浦皓

ページ範囲:P.717 - P.727

 脊髄腔造影は,脊髄 脊椎外科において神経学的検索・髄液検査・筋電図とならび重要な診断法であり,SicardとForestier1)が1922年Lipiodolを用いて脊髄腔造影を施行して以来,造影剤の開発とともに数多くの造影剤が使用され来たが(第1表),Shapiro2)も述べているように,理想的な脊髄腔造影剤は髄液と完全に混和し,完全に吸収され,局所的にも全身的にも毒性がなく,薬理学的に不活性で,満足すべき造影能力を有するという条件をみたさなければならない.現在ではアメリカではRamseyとStrain3)が1942年に紹介した油性造影剤ヨード・フェニール・ウンデシル酸のエチルエステルが,商品名Pantopaque(ヨーロッパ諸国ではMyodil)として広く用いられ,一方スカンディナビア諸国では水溶性造影剤のヨード・メタン・スルホン酸のナトリウム塩が,商品名Kontrast U(ドイツ・イタリーではAbrodil,フランスではMethiodal,アメリカではSkiodan)としてもつぱら使用されている.

示指伸展拘束症(Locking of index-finger)の1例

著者: 岸本允男

ページ範囲:P.728 - P.731

 腱の損傷によつて起こる指関節の屈曲あるいは伸展障害はよく知られているが,関節嚢あるいは周囲の靱帯によつて起こるMP関節の伸展障害はあまり知られていない.しかし,1949年にLangenskjöldが側副靱帯が中手骨骨頭に介在して伸展障害を起こす2例の報告をしてより,内外の文献には近年同様症例の報告が散見されるようになつた.著者はこのたび右示指伸展障害を主訴として来院した1例を経験し,その発生原因が種子骨の部分にあることを認め,文献的にも数少ない例であることを知つたので報告したい.

いわゆる「鞭打ち損傷」のアンケートによる予後調査

著者: 酒匂崇 ,   森永秀史 ,   富村吉十郎 ,   馬場順久

ページ範囲:P.732 - P.735

はじめに
 近年,モータリゼーションの急速な発達に伴い交通外傷の発生を多くみるようになり,その中でもいわゆる「鞭打ち損傷」は他覚的所見に乏しく,多彩な病像を呈する特異的な傷害である.本傷害の臨床的あるいは実験的研究報告を多くみるが,本態に関しては心因的な面のみを強調するもの,あるいは器質的変化を推定するものなど種々あり,統一的見解がみられない.本傷害に明らかに情動障害を伴つた症例や賠償神経症と考えられる症例のあることは,日常しばしば経験されており,精神身体医学的な面より検討の必要性が叫ばれている.
 われわれは,本傷害の予後を知る目的にてアンケートにより,現在の愁訴,就労状況および補償問題などについて調査を行なつたので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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