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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科50巻10号

2015年10月発行

文献概要

視座

多施設研究の意義—regional, all Japan, global

著者: 松本守雄1

所属機関: 1慶應義塾大学整形外科

ページ範囲:P.933 - P.933

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 Robert Brophyらの2009年の調査によると,整形外科領域の多施設研究は他の領域と比べても明らかに少なく,Journal of Bone and Joint Surgeryでもわずか7.7%で,New England Journal of MedicineやLancetの40%の足下にも及ばない.しかし現在,整形外科領域の国際学会では多施設研究が急速に増えてきている印象がある.私が専門とする脊椎の分野でも,非常に活動的に多施設研究を行っている国際グループがあり,年に数回メンバーが集まって,朝から晩までリサーチのプロジェクトについて議論しているという.そのメンバーの1人に「なんで君たちはそんなに一生懸命多施設研究をするの?」と聞いたところ,すぐさま“To improve patients' care”という答えが返ってきた.もちろんこれは彼らの主目的であろうが,他に治療法のエビデンスを確立しないと保険の支払いなどに支障を来しうる海外の事情などもあるのだと思う.私たち整形外科医は自らが行ってきた診療が患者の方々にとってベストなものか,もしベストでないならどのように改善していくべきかを明らかにする必要がある.その方策として臨床研究があるわけだが,単一の施設では統計学的解析に耐えうる症例数を獲得するのが困難であり,たとえ可能であったとしても非常に長い年月がかかってしまうなどの問題がある.それを解決する方法が多施設研究である.

 米国では椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの腰椎変性疾患に関する多施設研究であるSPORTなど,多くの前向き研究が行われ成果を上げている.NIHも多施設研究への研究資金を増やしているとのことであるが,わが国でも厚生労働省や日本医療研究開発機構が多施設研究に資金を提供している.整形外科領域では大腿骨頭壊死症や脊柱靱帯骨化症の研究班がその代表であり,all Japanに近い形で多くの多施設研究が行われており,毎年英文誌にも研究成果が報告されている.また,各大学とその関連施設が構成するregionalな研究グループも増えており,わが国でも多施設研究実施への機運が高まっている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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