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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科50巻11号

2015年11月発行

雑誌目次

視座

エビデンス

著者: 田辺秀樹

ページ範囲:P.1045 - P.1045

 EBM(evidence-based medicine)は1992年,Gordon Guyattにより命名され,現在の医学の進歩に欠かせない考え方になっている.よく例えで使われるのが,アメリカ合衆国初代大統領だったジョージ・ワシントンが権威者の判断で瀉血を行い死亡した,だから権威者の意見ではなくしっかりとした客観的な研究結果をみて治療する必要があるということである.そして,研究にもエビデンスのレベルが付けられていて,症例報告や専門家個人の意見などはエビデンスレベルが低く,ランダム化比較試験のエビデンスは高く評価されている.

 近年,整形外科分野でもたくさんのガイドラインが出版されている.ガイドラインの中に推奨度が記載され,推奨度の高いものはエビデンスの高い研究結果が採用されている.しかし逆に言うと,ランダム化比較試験などの研究がなされていない治療法は,あまり評価されない傾向にある.昔から慣習的に行われている治療で,それなりの成果は出ているにもかかわらず,推奨度Grade Iとして根拠がないとされてしまう場合もある.これはなかなか由々しき問題であり,治療の正当性が証明できない.

誌上シンポジウム 成人脊柱変形へのアプローチ

緒言 フリーアクセス

著者: 松山幸弘

ページ範囲:P.1046 - P.1046

 このたび「成人脊柱変形へのアプローチ」の誌上シンポジウムを編集企画させていただいた.高齢者の脊柱変形による症状は多種多彩であるが,超高齢化とよりよいQOL向上を求めて近年手術的治療を行う症例が多くなっているのを実感する.また最近では,この変形矯正手術に低侵襲手術も導入され,矯正率のみならず手術時間や出血量の軽減を可能にしてきている.

 しかし,この成人脊柱変形の病態や自然経過はいまだ明らかでなく,どのような変形が症状を呈し手術的治療を必要とするのか,そして手術適応を決める有効な検査や保存療法は存在するのかなど,疑問は山積している.また,わたくしたちがなおざりにしがちな脊柱変形患者の背筋,臀筋にも注目する必要があり,術前術後での背筋力の評価は,手術効果評価のみならず病態解明や予防医学的にも重要である.

高齢日本人の脊柱アライメント—正常値とは

著者: 戸川大輔 ,   星野裕信 ,   松山幸弘

ページ範囲:P.1047 - P.1052

 近年,脊椎外科の領域で成人脊柱変形とQOLとの関連性が熱心に議論されている.本邦では欧米より高齢の患者が脊柱変形治療の対象となっている.われわれは,愛知県北設楽郡東栄町において50歳以上の高齢者に運動器検診を行っている.高齢検診者の立位脊柱骨盤X線における矢状面アライメントは,高齢群ほど悪く,矢状面アライメントが悪いほど健康関連QOLが悪いことを示した.しかし日本人高齢者では,矢状面の中等度の脊柱変形(PI-LL20°,SVA91mm,PT24°)までは健康関連QOLを悪化させずに許容していた.

腰椎後弯変形患者の腰背筋評価

著者: 榎本光裕 ,   大川淳

ページ範囲:P.1053 - P.1058

 加齢に伴い脊柱変形が進行し,立位姿勢の維持が困難になると日常生活に支障をきたすようになる.最近では,成人脊柱変形の概念が導入され,積極的な脊柱矯正固定術が行われるようになった.しかし,脊柱の支持性と可動性維持に大きな役割を持つ傍脊柱筋(PVM)に対する機能評価は不十分で,PVM機能を客観的に評価するツールが必要となる.表面筋電計は,筋活動を皮膚上から簡便に記録できる装置であり,動作に伴う活動変化を鋭敏に示す.本稿では,表面筋電図の解析手法と後弯変形を伴った高齢患者の筋活動の特徴について解説する.

矢状面バランスを失った成人脊柱変形症例の手術で目指すべきアライメント—代償のないアライメントを目指して

著者: 大和雄 ,   松山幸弘

ページ範囲:P.1059 - P.1064

 矢状面バランスを失った成人脊柱変形症例に対する矯正固定術時の矯正目標について述べる.脊柱変形では局所の変形に対してさまざまな代償性のアライメント変化が生じる.高齢者の広範囲固定例では,これらの代償のないアライメントに矯正すべきである.それには骨盤後傾を改善する必要がある.そこでわれわれは骨盤後傾を改善するために必要な腰椎前弯角を算出するフォーミュラを考案した.十分な腰椎前弯に矯正すると,胸椎や下肢の代償はなくなり,代償のない良好なアライメントが獲得できる.

手術で目指すべきアライメントとは—PI-LLの検証から目指すべき腰椎前弯を探る

著者: 稲見聡 ,   森平泰 ,   竹内大作 ,   司馬洋 ,   大江真人 ,   浅野太志 ,   野原裕 ,   種市洋

ページ範囲:P.1065 - P.1068

 PI(pelvic incidence)-LL(lumbar lordosis)<10°が腰椎前弯形成の指標として広く用いられているが,本研究ではPIの値に応じたPI-LLの理想値を検証した.成人脊柱変形手術後2年以上経過し術後成績の良好な36例を対象とし,PIとPI-LLの関係を回帰分析で解析するとPI-LL=0.41PI-11.12(r=0.45,p=0.0059)の式が得られた.この式から,例えばPI=30°ではPI-LLは1°であり,PI=80°ではPI-LLは22°となる.理想的なPI-LLの値は一定の値ではなく,PIによって変化することが示された.

手術で目指すべきアライメントとは—三楽フォーミュラを用いた手術プランニング

著者: 中尾祐介 ,   佐野茂夫 ,   森井次郎 ,   藤本陽 ,   佐藤雄亮

ページ範囲:P.1069 - P.1076

 成人脊柱変形の矯正に必要な矯正角度の算出方法として三楽フォーミュラを考案した.Pelvic incidenceの大きさに応じた正常pelvic tilt値を設定し,これをもとに骨盤を正常化(pelvic tiltを正常化)したうえで脊椎の矯正角度を算出する方法である.画像を用いるため直視的で理解しやすく,術前プランニングに有用である.

成人脊柱変形に対する矯正手術—手術成績と今後の治療戦略

著者: 岩﨑幹季 ,   奥田真也 ,   松本富哉 ,   前野考史 ,   山下智也 ,   杉浦剛 ,   柏井将文 ,   牧野孝洋 ,   海渡貴司

ページ範囲:P.1077 - P.1083

 腰背部痛を主訴とした40歳以上の成人脊柱変形(脊柱後側弯症)に対して矯正固定術を施行した37例を対象に調査した結果,30例(81%)で良好な疼痛改善を認めた.成績良好群では有意にpelvic tilt(PT)が低値で,仙骨・骨盤まで固定した症例で有意にPTが低値であった.良好な手術成績を獲得するためには,pelvic incidence(PI)-10°〜PI-20°を目標に腰椎前弯を十分獲得することが望ましいが,骨盤後傾を矯正すべき症例ではPT<20〜30°を目標に仙骨・骨盤まで固定して矯正するほうが有利である.さらに,椎体間で後弯と側弯を矯正できる側方椎体間アプローチを併用することも矯正と低侵襲化の両面で有用である.

成人脊柱変形に対する手術におけるOLIF(腰椎前側方進入椎体間固定術)の応用—OLIF/XLIFは脊柱変形手術を変えるか

著者: 金子慎二郎 ,   谷戸祥之 ,   朝妻孝仁

ページ範囲:P.1085 - P.1092

 成人脊柱変形で矯正固定手術の適応となる頻度が高いのは,腰椎変性後側弯症と呼ばれる病態である.腰椎変性後側弯症に対して矯正固定手術を行う際に,特殊な開創器を用いた腰椎の側方進入椎体間固定術を応用することで,より侵襲が少ない形で有効な矯正を行うことが可能となってきている.これらは,固定範囲や手術適応などに関して,成人脊柱変形に対する矯正固定手術の従来の概念に変化をもたらすものである.腰椎の側方進入椎体間固定術の持つpotentialityを鑑みると,これまで明らかになっていないような潜在的利点を有している可能性もあり,さまざまな面から長期的評価を行っていくことが重要である.

整形外科/基礎

肋骨頭と脊柱管の位置関係—胸腔鏡視下脊椎前方手術の観点から

著者: 茂呂貴知 ,   紺野愼一 ,   菊地臣一

ページ範囲:P.1093 - P.1097

 背景:胸腔鏡視下脊椎前方手術における硬膜管や脊髄損傷防止の観点から,肋骨頭と脊柱管前壁の関係について解剖学的検討を行った.

 方法:固定遺体と晒骨を対象とし,左右の肋骨頭前縁を結ぶ線から脊柱管前縁までの距離を各高位で計測した.

 結果:肋骨頭前縁と脊柱管前壁の距離は,第1胸椎が最も大きく,下位胸椎ほど小さな値であった.第12胸椎以外の胸椎において,肋骨頭が脊柱管前壁よりも後方に存在する頻度は少なかった.中位胸椎にも肋骨頭が脊柱管前壁よりも後方に存在する症例が少数,存在した.

 まとめ:術中に鏡視で確認可能な指標から安全域を判断できるように,胸腔鏡視下脊椎前方手術では,術前CTによる肋骨頭と脊柱管の位置関係の確認が必須である.

Lecture

整形外科医と漢方薬

著者: 岸田友紀

ページ範囲:P.1099 - P.1105

はじめに

 整形外科医の先生方は,漢方薬にどのようなイメージをお持ちだろうか.

 「うさんくさい」「非科学的」「当たれば効くらしいが,どう処方すればいいかわからない」私が出会った整形外科医の多くはそう答える.

 “そうはいっても漢方薬はどうも効くときは効くから,ちょっと勉強してみようか”と,教科書を読むと“腹力があって……”などの文言が並ぶ.しかも,添付文書を読むと,「重大な副作用は……」などと恐ろしげなことが書いてある.多くの整形外科医にとって,腹など未知の世界であるし,副作用が出てもどう対処してよいかわからないのが現実であろう.

 漢方薬を勉強したいがどうしたらよいかわからない.でも手っ取り早く知りたい.本稿は,そんな整形外科医に捧げたい.

追悼

荻野利彦先生を悼む

著者: 高木理彰

ページ範囲:P.1106 - P.1107

 こよなく学問を愛し,大切にされた先生でした.スタッフに慕われ,温厚で優しい先生でした.そして患者さんから寄せられる厚い信頼.山形大学医学部整形外科学教室第二代教授,荻野利彦先生は去る5月22日,68歳のあまりにも早すぎるご生涯を閉じられました.体調がすぐれない旨をご連絡いただいたのが4月末.直近まで手術もされていたそうです.前の週は,山形で若い教室員にご指導いただきながら,普段と変わらずお元気なご様子で手術されていたと聞いています.ご退職されてからも,学問への情熱は増すばかりで,先天異常の教科書のご執筆にも取り組まれていました.お仕事がほぼ仕上がり,次の目標はどうしようかと,冗談まじりに愛弟子に語りかけていた矢先でした.ご家族の皆様のご配慮で,悲しいお知らせを頂戴したのは日本整形外科学会学術総会が終わった翌5月25日になります.

 荻野利彦先生は,1946年,現在の静岡県駿東郡でお生まれになったと伺っています.1965年,静岡県立沼津東高等学校,1971年,北海道大学医学部をご卒業され,北海道大学整形外科学教室に入局されました.松野誠夫教授のもと整形外科医の道を歩み始められました.美唄労災病院,函館中央病院での研修を経て,1975年に北海道大学に戻られています.それからは,上肢や先天異常の分野に一層力を入れて取り組んでこられました.裂手症の成立に関する研究で,多指症および合指症の関連性を明らかにされ(日本整形外科学会誌53:535-547,1979),同年,医学博士号を授与されています.1981年ウィーン大学,1982年にハンブルグ大学にご留学され,大勢の海外の先生との知己も得られました.ご帰国されてからは,北海道大学医学部附属病院講師(1982年),助教授(1989年)を務められた後,石井清一教授のもとで,札幌医科大学衛生短期大学部(1990年),同大学保健医療学部(1993年)の教授職を歴任されました.当時,荻野先生とともに学ばれた大勢の先生が,現在,日本のみならず世界でも活躍されています.そして1996年9月.初代,渡辺好博教授の後任として,山形大学医学部整形外科学講座に第二代教授として着任されました.以来,14年余りの長きにわたり,私どもを温かくご指導くださいました.

整形外科/知ってるつもり

脊髄損傷における血糖管理

著者: 小早川和 ,   岡田誠司 ,   久保田健介 ,   出田良輔 ,   芝啓一郎 ,   岩本幸英

ページ範囲:P.1108 - P.1112

■脊髄損傷の病態生理学

 脳や脊髄などの中枢神経系は再生能に乏しく,ひとたび損傷が加われば2度と再生しないと考えられてきた.事実,脊髄損傷は患者に恒久的な四肢麻痺と感覚障害,膀胱直腸障害を残す悲惨な病態である.現在,脊髄損傷に対し行われている治療は麻痺を対象としたものではなく,急性期の全身管理のほか,脱臼や骨折部を手術による除圧や整復固定で安定化させ,さらなる麻痺の増悪を予防するための処置であり,脊髄の回復を直接促す治療法はいまだ存在しない.20世紀後半に動物実験やclinical mass studyにより有効性が報告された急性期ステロイド大量療法は期待されたほどの効果は得られず,近年では有効性よりも重篤な副作用が懸念されるため,使用頻度が激減しているのが実情である.

 このステロイドを含め,これまで脊髄損傷治療の中心的なtargetとなっているのは,機械的な一次損傷に引き続く『二次損傷』と呼ばれる局所の炎症や微小循環障害・浮腫による自己崩壊的な反応である.1960年代から動物モデルを用いた損傷脊髄の病理的な観察からこの概念は提唱され,半世紀近く経った現在でも,この続発的な二次損傷を最小限にとどめることで,脊髄損傷を治療しようとする研究は数多い.このような動物モデルを用いた基礎研究では,多くの知見が生み出されているにも関わらず,実際の臨床現場において,脊髄損傷の予後に影響を与える因子,すなわち治療応用可能な因子は明らかにされていない.これまでに,年齢,性別,感染の有無などが影響を与えるとする論文も散見されるが,いずれもcontroversialである2,3).さらに,予後に影響を与える『臨床的に介入可能な』因子となると,全く報告はない.われわれもこれまでマウス脊髄損傷モデルにおいて,セルソーターを用いた炎症を引き起こす細胞の定量化やプロファイル解析を行い,好中球やマクロファージ,ミクログリアなどの細胞が二次損傷やその後の脊髄組織の自然修復に関わっていること,さらにこの二次損傷の引き金になるミクログリアの活性化の程度の違いが,脊髄損傷の機能予後に影響を与えることを明らかにしてきた5,6,7).このミクログリアという細胞は,脊髄常在性の単球形細胞であるが,近年,ミクログリアを含めた組織常在性単球は高血糖状態で過活性化されるという報告が相次いでいる1,8,9).そこでわれわれは,高血糖が脊髄損傷の予後に影響を与えるメカニズムとしてミクログリアに注目して実験的探索を行った.本稿では,その実験結果と臨床データの解析をまとめた論文(Science Translational Medicine第6巻256号に掲載4))を元に,脊髄損傷における血糖管理の重要性を述べたい.

最新基礎科学/知っておきたい

ビタミンDの骨吸収抑制機序

著者: 菊田順一 ,   石井優

ページ範囲:P.1114 - P.1117

■はじめに

 ビタミンDは生物活性を有する代表的な脂溶性ビタミンであり,骨に作用して骨破壊を抑えることで「骨密度を増加させる」ことが昔から知られていた.実際に,活性型ビタミンD製剤は骨粗鬆症の治療薬として臨床現場で汎用され,その有効性が証明されてきた.しかしながら,ビタミンDによる骨破壊抑制機序の詳細,すなわち“ビタミンDがなぜ骨破壊を抑制するのか”ということについては長い間不明のままであった.特に大きな謎とされてきたのは,in vitroの培養系では,ビタミンDは破骨細胞の数を増やす(=骨破壊を促す)方向に働き,in vivoでの骨密度の増加と逆の作用を持つことである6,7)

 In vitroとin vivoの間にはさまざまな違いがあるが,最大の違いは“細胞の動き”である.In vitroの実験系では,ある一定数の細胞を培養容器に入れて観察するため,細胞の動きの情報を捉えることはできない.しかし,in vivoで血流が保たれている環境では,常に血管腔と骨髄内の間を細胞が出入りしている.

 硬い石灰質に囲まれた骨組織の内部は,従来,生きたままでの観察が極めて困難であると考えられていたが,われわれは,組織深部の観察が可能な“二光子励起顕微鏡”を駆使して,生きた状態のマウスの骨組織内の細胞動態をリアルタイムで可視化するイメージング方法を確立した1-4).この技術を用いてわれわれは,in vivoにおける活性型ビタミンDの骨吸収抑制メカニズムを解明した3).本稿では,これらの成果について概説する.

連載 整形外科の歴史・8

小児整形外科の歴史

著者: 藤井敏男

ページ範囲:P.1118 - P.1123

はじめに

 1970年のわが国の出生数は193万人と多く(2010年107万人),整形外科外来にも多くのこどもたちがいた.当時の発育性股関節脱臼(DDH)の発生率は1%と高く(2010年頃約0.3%),それを専門領域とする教授も多かった時代でDDHは整形外科の必須疾患の1つであり,小児整形外科は整形外科日常診療の中に含まれていた.1942年に高木憲次教授(東京大学)が創設された「整肢療護園」(東京)を嚆矢として,各県に肢体不自由児施設が開設され,主にポリオ患者を診療していた.1959年の皇太子ご成婚(今上天皇)を機に1965年に国内初の小児総合医療施設として国立小児病院(東京)が創設され,その後,兵庫県立と神奈川県立(1970),静岡県立(1977),福岡市立(1980)の“こども病院”が続き,小児整形外科センターが展開され始めた.

臨床経験

膝蓋大腿関節症を伴った内側型変形性膝関節症に対し脛骨粗面前内方移動術を併用した内側開大式高位脛骨骨切り術の5例

著者: 赤松智隆 ,   石川博之 ,   宮坂康之 ,   竹内良平

ページ範囲:P.1125 - P.1131

 目的:膝蓋大腿関節症を伴った内側型変形性膝関節症の外科的治療法として脛骨粗面前内方移動術を併用したopen wedge high tibial osteotomyを施行し,その短期成績を調査した.

 対象と方法:膝蓋大腿関節症を伴った内側型変形性膝関節症患者5例5膝,平均年齢59歳に対し上記手術を施行した.平均観察期間は13カ月で,術前および術後1年後のX線学的変化,臨床成績を検討した.

 結果:FTAは術前平均182°から術後平均172°へと矯正された.5例中4例で階段下降時が消失し,残る1例でも疼痛が軽減した.また全例で膝蓋骨圧迫時の疼痛は消失し,JOAスコアは74点から91点へ有意に改善した.

 まとめ:本術式は膝蓋大腿関節症を伴った内側型変形性膝関節症に対して有効な術式であると考える.

症例報告

L5/S椎間孔外狭窄に対する後方除圧術後に仙骨骨折を生じた1例

著者: 庄司寛和 ,   浦川貴朗 ,   後藤真一 ,   日向野行正

ページ範囲:P.1133 - P.1137

 L5/S椎間孔外狭窄に対する後方除圧術後に仙骨骨折を生じた1例を経験したので報告する.症例は80歳女性で,L5/S椎間孔外狭窄に対し,仙骨翼部分切除を含む後方除圧術を施行した.術後3週,誘因なく腰仙部痛が出現し,MRIとCTで仙骨骨折(両側縦骨折,Denis zoneⅠ)と診断した.L5/S椎間孔外狭窄に対する後方除圧後の患者において,歩行開始後に腰仙部痛が出現した場合,仙骨骨折を鑑別の1つに挙げ,画像精査を考慮すべきである.

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.1043 - P.1043

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.1139 - P.1139

あとがき フリーアクセス

著者: 金谷文則

ページ範囲:P.1142 - P.1142

 今年の夏は例年に比べて暑い日々で始まりましたが,その後は台風の影響か日本各地で大雨や豪雨が続き,記録的に日照時間が短くなったようです.この原稿を書いている途中の9月18日に発生したペルーの地震による津波がわずか1日で日本に達しました.ペルーの海水が日本に達したのではなくエネルギーの波動が日本に届いたと考えれば納得ですが,その早さには驚きました.沖縄はまだ暑い日が続いていますが,9月になると学会で訪れた内地では朝夕は肌寒く,秋の訪れを感じております.10月からは新専門医制度の病院群作りが始まります.臨床研修制度は厚生労働省の思惑と異なり,都会に研修医が集まり地方の医療が疲弊・崩壊しました.官僚は優秀な人が集まっているはずですが,臨床研修制度ばかりでなく年金データの流出や消費税軽減措置に対する対応など,あまり賢さを感じません.机上ばかりでなく,現場を知ることが重要との印象を受けました.

 今回の「視座」はエビデンスについてです.私も日整会ガイドライン委員会の委員長を務めていましたので,日常診療で行っている多くの診療行為に推奨度Grade I(エビデンスがない)を付けざるを得ず,少なからず忸怩たる思いを持ってました.一方,当然と思って行っていた手指滅菌時の滅菌水の使用に有用とのエビデンスがなく,水道水でも十分なことが明らかにされたことは,EBMによる成果の1つです.私たち整形外科医も自らエビデンスを作ってゆくことが大事だと思います.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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