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ビタミンDの骨吸収抑制機序
著者: 菊田順一1 石井優1
所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科免疫細胞生物学
ページ範囲:P.1114 - P.1117
文献購入ページに移動ビタミンDは生物活性を有する代表的な脂溶性ビタミンであり,骨に作用して骨破壊を抑えることで「骨密度を増加させる」ことが昔から知られていた.実際に,活性型ビタミンD製剤は骨粗鬆症の治療薬として臨床現場で汎用され,その有効性が証明されてきた.しかしながら,ビタミンDによる骨破壊抑制機序の詳細,すなわち“ビタミンDがなぜ骨破壊を抑制するのか”ということについては長い間不明のままであった.特に大きな謎とされてきたのは,in vitroの培養系では,ビタミンDは破骨細胞の数を増やす(=骨破壊を促す)方向に働き,in vivoでの骨密度の増加と逆の作用を持つことである6,7).
In vitroとin vivoの間にはさまざまな違いがあるが,最大の違いは“細胞の動き”である.In vitroの実験系では,ある一定数の細胞を培養容器に入れて観察するため,細胞の動きの情報を捉えることはできない.しかし,in vivoで血流が保たれている環境では,常に血管腔と骨髄内の間を細胞が出入りしている.
硬い石灰質に囲まれた骨組織の内部は,従来,生きたままでの観察が極めて困難であると考えられていたが,われわれは,組織深部の観察が可能な“二光子励起顕微鏡”を駆使して,生きた状態のマウスの骨組織内の細胞動態をリアルタイムで可視化するイメージング方法を確立した1-4).この技術を用いてわれわれは,in vivoにおける活性型ビタミンDの骨吸収抑制メカニズムを解明した3).本稿では,これらの成果について概説する.
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