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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科50巻2号

2015年02月発行

文献概要

連載 整形外科の歴史・2

リウマチ外科の歴史

著者: 井上一1 西田圭一郎1

所属機関: 1岡山大学整形外科

ページ範囲:P.142 - P.146

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はじめに

 関節リウマチ(RA)の治療において,外科的治療は当然,薬物治療による疾患活動性のコントロールと大きく連動する.また,RAの関節病変は慢性炎症に伴う高度の関節破壊であり,患者の主訴が疼痛,不安定性,機能障害,美容的外観など多岐にわたるため,個々の関節において適応とタイミングを決めることは大変難しい.最近の生物学的(Bio)製剤の登場による炎症のコントロールによって,外科的治療の位置付けは徐々に変化しつつあり,その価値はなお存続している.RAの外科的治療の歴史的背景から先人の苦労とその時々の価値を振り返りながら,今後の外科的治療の対応のありかたを考えてみた.

 RAの薬物療法としてアスピリンをはじめとする消炎鎮痛薬が用いられ始めたのは19世紀末からである.以後多くの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が開発されたが,いずれも疼痛を軽減する対症療法であり,RAの治療薬にはなりえなかった.1930年代に金製剤が有効とする報告がなされて多くの臨床試験が行われたが,これも副作用が多く,また薬効も低かったため下火になった.続いて1940年代に副腎皮質ステロイド剤がRA治療に用いられたが副作用が多く,現在では基本的にRA早期に期間を限って用いることが推奨されており,疾患の根本的な治療薬とはならないこともわかっている.RAの病態解明が進むにつれ,その病態に直接薬効を示す製剤としてD-ペニシラミン,メトトレキサート(MTX)など疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)が次々と開発・使用されてきた.2000年代に入ってから生物学的製剤の有効性が高く評価され,特にMTXとの併用による優れたRAの疾患活動性コントロールが可能となり,早期例の一部においては寛解もみられるようになった.こうした薬物治療の発展を背景に,外科的治療も大きく変遷してきた13)

参考文献

1) Allison N, Coonse GK:Synovectomy in chronic arthritis. Arch Surg 18:824-840, 1929
2) Charnley J:Arthroplasty of the hip. A new operation. Lancet 1:1129-1132, 1961
3) 居村茂明,西林保朗:人工肘関節置換術.平澤泰介(編):関節リウマチの手術療法.OS NOW No.14,メジカルビュー,東京:pp79-87,1994
4) 井上 一,浜崎丈治,橋詰博行・他:人工肘関節—セラミックス対HDP.1980:整形外科セラミック・インプラント・コロキウム記録集'80:57-61.
5) Kodama T:Surgery of chronic rheumatoid arthritis with special reference to synovectomy of the wrist and knee joint. Seikei Geka 20:250-253, 1969
6) Kudo H, Iwano K, Watanabe S:Total replacement of the rheumatoid elbow with a hingeless prosthesis. J Bone Joint Surg Am 62:277-285, 1980
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9) 中原進之介:RAの頚椎後方亜脱臼例の臨床的検討.日関外誌8:505-510,1986
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11) 西田圭一郎,中原龍一,橋詰謙三・他:生物学的製剤の登場による手術療法の動向と適応の変化について.日整会誌86:394-400,2012
12) Nishida K, Hashizume K, Nasu Y, et al:A 5-22-year follow-up study of stemmed alumina ceramic total elbow arthroplasties with cement fixation for patients with rheumatoid arthritis. J Orthop Sci 19:55-63, 2014
13) 七川歓次,越智隆弘:歴史の中で日本が果たした役割.20世紀までのリウマチ治療・研究.大阪,メディカルレビュー社,2014
14) Suzuki M, Nishida K, Soen S, et al:Risk of postoperative complications in rheumatoid arthritis relevant to treatment with biologic agents:a report from the Committee on Arthritis of the Japanese Orthopaedic Association. J Orthop Sci 16:778-784, 2011
15) 鳥居敏雄:気象病の発生機序に関する研究.清水源一郎(編)リウマチ;新しい考え方と治療.大阪,永井書店,1955
16) Yamamoto S:Total knee replacement with the Kodama-Yamamoto knee prosthesis. Clin Orthop Relat Res:60-67, 1979

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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