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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科50巻2号

2015年02月発行

文献概要

連載 整形外科の歴史

関節形成術を中心とした股関節手術の歴史②

著者: 小野啓郎1

所属機関: 1大阪大学

ページ範囲:P.147 - P.153

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股関節のクリアランス,潤滑と支持性(耐荷重能)

 成長期以後,股関節機能の鍵が支持性(耐荷重能,weight-bearing capacity)と潤滑(lubrication)であるとわかったのは,20世紀も半ばを過ぎた頃ではなかったろうか? Charnleyが切り拓いた全人工股関節置換術(THR)は,完璧とまではいかなくとも,成長期以後のヒトの股関節機能のうちで最も尊重すべき要件がこの2つであることを明確に教えた.支持性と潤滑のいずれが欠けても機能しないこと,良好な潤滑が優れた耐荷重能を保証する仕組みでもあることが,20世紀の半ば過ぎにようやく理解されたのだ.

 考えてみると,それはまことに不思議である.重量物の運搬にすべりをよくする工夫や,コロを利用した歴史は古い(エジプトやバビロニアの古代史にその記録がある).軸受けの工夫は数千年も前からある.しかし医学の歴史を辿っても,その優れた軸受け構造が自分たちの足元(股関節をはじめとして)に,生まれながらにあったという事実には目が向かなかったのではあるまいか.

参考文献

1) Lizhang J, Taylor SD, Jin Z, et al:Effect of clearance on cartilage tribology in hip hemi-arthroplasty. Proc Inst Mech Eng H:1284-1291, 2013
2) 神中正一,河野左宙:関節成形術.日本医書出版,1949
3) Baer WS:A preliminary report of the use of animal membrane in producinng mobility in ankylosed joints. Am J Orthop Surg 7:1-21, 1909
4) Baer WS:Arthroplasty with the aid of animal membrane. Am. J Orthop Surg, 16:1-29, 1918
5) Bick EM:Classics of Orthopaedics. J.B. Lippincott, 1976
6) Caton J:Léopold Ollier (1830-1900):père de la chirurgie orthopédique et réparatrice et de la chirurgie expérimentale. The father of bone and joint and reconstructive surgery (1830-1900). e-mémoires de l'Académie Nationale de Chirurgie 8(3):38-45, 2009
7) Gomez PF, Morcuende JA:Early attempts at hip arthroplasty. 1700s to 1950s. lowa Orthop J 25:25-29, 2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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