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連載 整形外科の歴史
関節形成術を中心とした股関節手術の歴史②
著者: 小野啓郎1
所属機関: 1大阪大学
ページ範囲:P.147 - P.153
文献購入ページに移動成長期以後,股関節機能の鍵が支持性(耐荷重能,weight-bearing capacity)と潤滑(lubrication)であるとわかったのは,20世紀も半ばを過ぎた頃ではなかったろうか? Charnleyが切り拓いた全人工股関節置換術(THR)は,完璧とまではいかなくとも,成長期以後のヒトの股関節機能のうちで最も尊重すべき要件がこの2つであることを明確に教えた.支持性と潤滑のいずれが欠けても機能しないこと,良好な潤滑が優れた耐荷重能を保証する仕組みでもあることが,20世紀の半ば過ぎにようやく理解されたのだ.
考えてみると,それはまことに不思議である.重量物の運搬にすべりをよくする工夫や,コロを利用した歴史は古い(エジプトやバビロニアの古代史にその記録がある).軸受けの工夫は数千年も前からある.しかし医学の歴史を辿っても,その優れた軸受け構造が自分たちの足元(股関節をはじめとして)に,生まれながらにあったという事実には目が向かなかったのではあるまいか.
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