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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科50巻4号

2015年04月発行

文献概要

視座

股関節機能における寛骨臼関節唇の役割は?

著者: 東博彦1

所属機関: 1埼玉医科大学

ページ範囲:P.301 - P.301

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 三十数年前,ある整形外科の雑誌に,「無用の用」なる題名でエッセイを書いたことがある.寛骨臼関節唇はいかなる生理学的機能を有する器官であろうかとの疑問を投げかけ,もしかしたら股関節機能とはあまり関係のない「無用の長物」であるのかも知れないと述べた.当時私が調べた限りでは,常用実験動物中,ヒトと同様な関節唇が存在するのはサルだけで,イヌ,ネコ,ウサギ,ラットなどには存在せず,これらの動物の寛骨臼縁は軟骨で終わっていた.このことから,関節唇は二足歩行の機能と関係ありそうだと推論したが,寛骨臼がいかなる生理学的機能を有するものなのか不明であると述べた.

 1990年代に入るとfemoroacetabular impingement(FAI)が脚光を浴び,関節唇の種々の病態が明らかにされ,その生理学的機能についてもいろいろと研究されてきている.一般的には,関節唇は一種の弁装置として働き,関節腔を密閉し滑液を保つのに役立つとの説が有力である.この密封作用の効果として,関節が牽引された時には陰圧を保って関節の安定性を増し,関節液が軟骨面に塗布されて潤滑機能を保つとともに軟骨の栄養に寄与する.さらにわれわれの研究で,関節唇には自由神経終末や各種の終末器官が存在することを確認したが,疼痛をはじめ圧や深部知覚に関与するsensible shock absorber(Norman Espinosa, J Bone Joint Surg, 2006)として関節唇が働くのではないか,という意見にわれわれも賛成である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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