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整形外科/知ってるつもり
炭酸ガスを利用した骨折治癒促進法
著者: 新倉隆宏1 李相亮1 岩倉崇1 黒坂昌弘1
所属機関: 1神戸大学大学院医学研究科医科学専攻外科系講座整形外科学分野整形外科学部門
ページ範囲:P.354 - P.357
文献購入ページに移動骨折治癒促進は,骨折の研究における永遠のテーマである.骨折治癒促進には2つの意義が包含されていると考えている.1つは,偽関節など難治骨折例を何とか治癒に導くことである.もう1つは,骨折をより早く治癒させることである.前者によって長期間骨癒合が得られず社会復帰が妨げられている患者を救うことができる.また,骨折は治癒するまでに少なくとも数カ月は要するものであるので,後者によってこの期間を短縮することができれば,患者の日常生活動作を早期に回復させ早期社会復帰,生活の質向上へと繋がる.
現在,実臨床で使用可能な骨折治癒促進のツールとしては,低出力超音波パルス,電気(電磁場)刺激や骨形成因子(bone morphogenetic protein:BMP)が挙げられる.しかし,BMPはまだ本邦では臨床使用が認可されておらず,臨床において使用可能な選択肢があまりにも少ないことに悩まされる.そのため,1つでも骨折治癒促進の手段を増やすべく,新しい骨折治癒促進法の開発が待望されている.新しい骨折治癒促進法の開発にあたっては,非侵襲的であること,また,薬のように副作用が懸念されないことがさらに望まれる.
われわれはこの条件に当てはまる骨折治癒促進法候補として,炭酸ガス(二酸化炭素,carbon dioxide:CO2)経皮吸収という手法に注目して研究を継続してきた.本稿では,これまでに得られた知見,進行中の研究内容,今後の課題と展望につき概説する.
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