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連載 運動器のサイエンス・14
慢性疼痛増加の機序を探る
著者: 半場道子1
所属機関: 1福島県立医科大学医学部整形外科学講座
ページ範囲:P.462 - P.465
文献購入ページに移動第13回では,慢性腰痛患者(chronic back pain:CBP)を頻繁に襲う自発痛の脳画像を取り上げた.自発痛は慢性疼痛に特有で,健常者は体験しない痛みである.そのためCBPの脳内で一体何が起きているのか,研究手法の難しさも手伝って,自発痛の実態に迫った研究はほとんど行われていなかったのである.自発痛時のfMRIを用いた全脳スキャン画像によって,CBPの痛みの驚くべき本質がえぐり出された.この解析法を用いると,その患者が感じている痛みがどれほど大きいか,腰痛履歴がどれほど長かったかが,80%の確率で診断可能であると報告されている1).
CBPでは自発痛が数秒から十数分間も持続するが,①自発痛の持続期間と強さに一致して活動が大きく亢進するのは,情動・動機系の神経回路網(内側前頭皮質,前帯状皮質,扁桃体,腹側線条体・側坐核など)であって,②痛みの強さが一過性に急増したと訴える瞬間に活動亢進するのが,感覚・弁別系の神経回路網(大脳皮質第一次/第二次感覚野,島皮質,視床など)であることが明らかにされた1).参考までに各神経核の大まかな位置を図1に示した.
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