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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科50巻6号

2015年06月発行

雑誌目次

視座

ビッグデータの時代と整形外科技術鍛錬

著者: 橋詰博行

ページ範囲:P.507 - P.507

 大量のデータ(大規模データ)を用いた医療施策が行われている.DPC,NCDやレセプトデータなどである.そして,医療現場でもこの大規模データ解析によるエビデンスに基づいた診療を捜し求めている.日本整形外科学会でも,教育研修施設からインターネットを介して集められた骨折や手術症例のデータが解析されている.一方,最近ではさまざまな分野でビッグデータの活用が始まっている.大規模データとビッグデータの違いは,一言で言えば構造化(全体像を見極め構成要素を整理すること)されているか否かである.

 従来の臨床研究は,研究デザインを考え,仮説を立て,サンプルサイズを設計して統計学的に解析する.仮説が証明され,理論とその介入方法が出来上がればランダム化比較試験(RCT)などにより検証される.しかしながら,RCTが倫理的観点から外科手術に適さないこともある.一方,理論ができればその陰に多くの個々の結果が隠されてしまい,それは理論によって情報が劣化するとも言える.したがって理論どおりにすればそこから外れる例が出現し,一人ひとりを幸福にしようとする医療の世界に本当に適しているかということになる.

論述

腰仙椎移行部椎間孔狭窄の病態—腰仙椎椎間孔の形態とL5神経根の走行に着目して

著者: 篠崎義雄 ,   小川潤 ,   磯貝宜広 ,   中島大輔

ページ範囲:P.509 - P.517

 背景:腰仙椎移行部椎間孔狭窄の病態はいまだ十分解明されていない.

 対象と方法:本症に手術加療を行った85例中,症状を認めた計100椎間孔を検討した.

 結果:前後狭窄は46椎間孔,頭尾狭窄は77椎間孔で認め,Type 1(前後狭窄のみ)は22椎間孔,Type 2(頭尾狭窄のみ)は53椎間孔,Type 3(前後・頭尾狭窄合併)は24椎間孔,Type 4(far-out syndrome)は1椎間孔であった.前後狭窄は主に椎間孔内側で認め,神経根は斜走したままで,頭尾狭窄は主に椎間孔外側で認め,神経根は横走化する傾向にあった.

 まとめ:L5/S1椎間孔の内外側で,それぞれ特有のL5神経根障害が起こる可能性が考えられた.

鏡視下肩腱板修復術後に発症した複合性局所疼痛症候群(CRPS)様症状について

著者: 今田美奈子 ,   原田幹生 ,   鈴木俊 ,   村成幸

ページ範囲:P.519 - P.522

 背景:鏡視下肩腱板修復術(以下,ARCR)後に発症した複合性局所疼痛症候群(CRPS)様症状に関与する因子について検討した.

 対象と方法:ARCR後の40名41肩を対象とした.手指に浮腫・可動域制限がみられ,温冷交代浴を行った患者をCRPS様症状ありと診断した.

 結果:CRPS様症状を10肩(24%)に認めた.CRPS様症状発症群では未発症群に比べ,術前の痛みが強く,術前の肩関節自動外旋可動域制限を認めた.

 まとめ:術前の痛みの緩和や術前の入念な肩関節可動域訓練が,ARCR後のCRPS様症状の予防になる可能性が示唆された.

側弯症手術の脊髄モニタリングのアラームポイント—日本脊椎脊髄病学会脊髄モニタリング委員会多施設前向き研究

著者: 山田圭 ,   松山幸弘 ,   小林祥 ,   長濱賢 ,   田所伸朗 ,   和田簡一郎 ,   村本明生 ,   岩崎博 ,   寒竹司 ,   関庄二 ,   平尾雄二郎 ,   溝田敦子 ,   安藤宗治 ,   大田亮 ,   山本直也 ,   川端茂徳 ,   高橋雅人 ,   伊藤全哉 ,   藤原靖 ,   木田和伸 ,   齋藤貴徳 ,   谷俊一 ,   里見和彦 ,   四宮謙一

ページ範囲:P.523 - P.530

 背景:経頭蓋電気刺激筋誘発電位(BrE-MsEP)のアラームポイントは確立されていない.

 対象と方法:日本脊椎脊髄病学会脊髄モニタリング委員会の多施設前向き研究に参加した12施設で施行した側弯症手術273例について,BrE-MsEPのアラームポイント(AP)をコントロール波形の振幅の70%以上の低下とした.術後運動障害の発生を調査し,本APの妥当性を検討した.

 結果:2例で一過性の麻痺,1例で持続性の麻痺を認めた.

 まとめ:側弯症手術においてBrE-MsEPの本APは妥当である.

Lecture

リンパ管腫症・ゴーハム病の診断と治療

著者: 小関道夫 ,   藤野明浩 ,   黒田達夫 ,   濱田健一郎 ,   中村直子 ,   髙橋正貴 ,   松岡健太郎 ,   野坂俊介 ,   深尾敏幸

ページ範囲:P.531 - P.539

はじめに

 リンパ管腫症(lymphanghiomatosis,最近はgeneralized lymphatic anomalyと呼ばれる)は全身臓器にリンパ管組織が増殖する原因不明の希少性難治性疾患である.小児,若年者に多く発症し,症状は浸潤臓器によりさまざまだが,乳び胸など胸部病変を合併すると予後不良である.骨溶解や乳び腹水,脾臓浸潤,リンパ浮腫,血液凝固異常も起こす1).一方,ゴーハム病は1954年にGorhamとStoutら7)が最初にまとめた“disappearing bone”を特徴する疾患で,骨が溶解し,血管やリンパ管組織に置換する疾患である.1983年にHeffezら12)が提唱した診断基準(表1)では,内臓への浸潤はないとされているが12),乳び胸を伴う症例報告も多い.別々の疾患と考えられているにもかかわらず,臨床的にはリンパ管腫症と明確に区別ができないことが問題である17)

 脈管奇形の主要な国際分類であるISSVA(International Society of the Study of Vascular Anomalies)分類が2014年にアップデートされ,これまでリンパ管奇形(lymphatic malformation)と一括りであったのが,細かく分類された3)(表2).近年,リンパ管に関する基礎的研究は大きく進歩してきているが,この2疾患については研究が進んでおらず,病態解明だけでなく,診断や治療法の確立が急務である.

境界領域/知っておきたい

靴と足部障害

著者: 田中尚喜

ページ範囲:P.540 - P.543

はじめに

 履き物としての靴は,人間の歩くなどの活動を支持すること,足部や身体を保護することが最重要の事項と考えられるが,古代エジプトでは神官などの身分を示すものとして使用された.当然,機能的ではない華美な装飾も用いられた.したがって,歴史的な流れの中で,機能的な靴とファッショナブルな靴など,アンビバレントな状況で進化してきた.また,モータリゼーションの影響もあり,本邦のみならず世界的に歩行距離が減少してきている.本来,ファッショナブルな靴も履く側の足に合わせて使用されるものであったが,昨今の靴の選択要素として,短期間の履き心地が重要となっている.オーダーメイドの革靴では使用するまでには1カ月は必要とするのだが,非日常的な遠足や運動会などの直前に既製品を選ぶ際に,履き心地を重視するあまり,「芯のない靴」,言い換えるとソックスを履くのと変わらない靴を購入する方が増えている.確かそれらの行事のお知らせには,靴に対しては「履き慣れた」という言葉が付いていたと記憶している.科学技術の進歩と逆行して,足部は間違いなく退化の一途となっている.

 そこで,靴と履く側の人間の変化を考慮したうえで,現在の足部障害について検証してみる.

連載 運動器のサイエンス・15

慢性疼痛増加の機序を探る

著者: 半場道子

ページ範囲:P.544 - P.546

慢性疼痛の謎解きに迫る mesolimbic dopamine system

 連載第13〜14回では,慢性腰痛の異常な神経回路網形成と自発痛の実態について,脳画像法による解析結果を記述した.痛みを経験した誰もが慢性疼痛に転化するわけではなく,多くの人は適切な治療を受けて痛みが軽減し,再び静穏な日常に復している.しかし,同程度の痛みがあって同じ治療を受けたにもかかわらず,一部の人は慢性疼痛に転化し,自発痛,睡眠障害,うつ状態などの業苦を背負ってしまう.両者の明暗を分けたものは何か,慢性疼痛に転化させる分岐点はどこか,これは痛み研究の長年の謎であった.

 慢性疼痛の謎解きの一焦点として,mesolimbic dopamine system(中脳辺縁ドパミン系)による痛みの制御機構が注目を集めている5,7,9).このdopamine systemの機能低下によって痛みが慢性化し,外傷や手術などをきっかけに,異常で病的な痛みに転化することがわかってきたからである.本稿ではdopamineやopioidなど,高次脳機能に関与する神経伝達物質の代謝や活性について,慢性疼痛研究の最近の進歩を伝えたい.中心となるのは大脳基底核注1),辺縁系注2),中脳,脳幹など,進化的に古い脳器官が行う痛みの制御機構である.

整形外科の歴史・6

肘関節外科の歴史

著者: 伊藤恵康 ,   岩部昌平 ,   古島弘三

ページ範囲:P.548 - P.560

 整形外科学全般の歴史は,岩本幸英教授の『神中整形外科学』23版にお書きになった「整形外科の意義と歴史」に,世界と日本に分けて,詳しい記載がある.さすがに歴史ある九州大学整形外科学教室における資料の蓄積には感服するものである.また,本誌2014年2号の三笠元彦先生の『整形外科の歴史』に,本邦の整形外科学黎明期の諸事情が述べられている.ここでは,肘関節外科の分野で,現代の日常臨床にも応用されている有用な診断法,病態,治療法の歴史を中心に述べる.

整形外科の歴史

関節形成術を中心とした股関節手術の歴史⑥

著者: 小野啓郎

ページ範囲:P.561 - P.568

MüllerによるTHRの改良

 ベルン(スイス)の整形外科医Maurice Müllerは,Charnleyの成功に触発されて以下の3点に改良を加え,自らデザインした人工関節の製品化に成功した.すでに骨折治療を標準化(AO-system)することに成功していた彼は,手術機器メーカーの協力を得て,“普及するTHR”を目指したわけである.

臨床経験

術前の後方すべりは開窓術後に生じるヘルニアの危険因子である

著者: 武中章太 ,   立石耕介 ,   細野昇 ,   向井克容 ,   冨士武史

ページ範囲:P.569 - P.577

 腰部脊柱管狭窄症に対する開窓術後(髄核摘出術,固定術併用を除く),新たに椎間板ヘルニアを発症する危険因子を検討した.開窓術施行381例のうち,18例(ヘルニア群)が2年以内に椎間板ヘルニアによる急性下肢痛を呈し,対照群90例と比較した.ヘルニア群で有意に術前の後方すべりがあり(p<0.001),腰椎前弯角が小さかった(p=0.044).術前の後方すべり率とヘルニア発症をROC曲線で解析すると,カットオフ値は後方すべり率7%であった.7%以上の後方すべりを有する例では同一高位に椎間板ヘルニアを生じるリスクが高いことが示された.

慢性非特異的腰痛症患者に対する骨盤周囲筋の簡便なストレッチによって改善する日常生活動作

著者: 戸田佳孝

ページ範囲:P.579 - P.584

 背景:慢性非特異的腰痛症(腰痛症)の危険因子の一つには長時間の座位が挙げられる.そこで今回,腰痛症に対する骨盤周囲筋のストレッチの効果を評価した.

 方法:患者を骨盤後方,側方と前方の筋肉群のストレッチを指導する“指導あり群”と“指導なし群”に前向きに無作為分類した.

 結果:指導あり群(17例)は指導なし群(16例)に比べて「外出が困難」(p=0.015),「臥床することが多い」(p=0.01)および「階段昇降が困難」(p=0.035)の徴候で改善率が有意に優れていた.

 結論:骨盤周囲筋のストレッチは腰痛症の簡便で有効な治療法となる可能性がある.

症例報告

Closed wedge high tibial osteotomy後,患肢誤荷重に伴う内反転位により再手術を施行した1例

著者: 大島淳文 ,   齋藤健一 ,   大澤貴志 ,   柳澤真也 ,   高岸憲二

ページ範囲:P.585 - P.589

 Closed wedge high tibial osteotomy(CWHTO)後,3週が経過した時点での患肢誤荷重に伴う内反転位に対し,再手術を施行した1例を経験した.

 再手術においては,アライメント矯正後,より強固な再固定を行うことが必須であり,β-TCPの補塡,両側からのプレート固定は有効な手術法であった.

 CWHTO術後は,本症例のように誤荷重からアライメントの変化を来す危険性もあるため,その予防のためには患者教育を徹底するとともに,荷重に強い手術法についても検討する必要があると考えた.

トシリズマブ使用中に血小板減少を合併した高齢者関節リウマチの2例

著者: 小林裕樹 ,   岡邨興一 ,   米本由木夫 ,   金子哲也 ,   小林勉 ,   櫻井武男 ,   井上博 ,   高岸憲二

ページ範囲:P.591 - P.595

 関節リウマチ(RA)治療における生物学的製剤の実用化に伴い,生物学的製剤による治療効果および副作用の報告が散見される.今回われわれは,トシリズマブ(tocilizumab;TCZ)によりRA治療を開始した2症例において,血小板(Plt)の著明な減少を経験したので報告する.症例1はTCZの休薬と薬剤変更によりPltが再上昇した.症例2はTCZによる治療を継続しPltを経過観察中である.TCZ投与例におけるPlt減少の原因はTCZのIL-6阻害作用にあると考えられ,TCZの注意すべき副作用と考えられる.

仰臥位前方進入法により骨接合術を行った大腿骨骨頭骨折の1例

著者: 吉居啓幸 ,   老沼和弘 ,   李向鋒 ,   田巻達也 ,   上西蔵人 ,   三浦陽子 ,   東秀隆 ,   金山竜沢 ,   白土英明

ページ範囲:P.597 - P.600

 股関節前方進入法(DAA)は人工股関節全置換術(THA)での筋温存型進入法である.今回,われわれは外傷性股関節後方脱臼に伴う大腿骨骨頭骨折に対してDAAで進入し,観血整復術を施行した1例を経験したので報告する.

 症例は32歳,男性で,スキーで転倒し受傷した.救急搬送先の病院で左大腿骨骨頭骨折(Pipkin分類type Ⅱ)を伴う股関節後方脱臼の診断で,全身麻酔下に徒手整復が施行され,受傷翌日に当院へ転院となった.当院でDAAによりポリ-L-乳酸(PLLA)スクリューを用いて骨接合術を施行し,短期ではあるが良好な成績を得たので報告する.

脊髄くも膜下出血により急速に対麻痺を来した1例

著者: 鈴木宣瑛 ,   大橋正幸 ,   川瀬大央 ,   皆川豊

ページ範囲:P.601 - P.604

 症例は79歳女性で,心房細動に対してワーファリン内服中であった.突然の背部痛と両下肢のしびれで発症し,MRIで第1〜5胸椎高位に脊柱管内血腫を認め,脊髄は高度に圧排されていた.麻痺は進行性で,発症16時間後には下肢筋力がMMT0〜1となり,緊急手術を行った.硬膜外腔には血腫を認めず,くも膜下腔に多量の血腫を認め,脊髄くも膜下出血と診断した.術後1年の時点でFrankel分類Cの麻痺が遺残していた.術後3カ月のMRIでくも膜囊胞を認めたが,神経症状の悪化や囊腫の増大傾向を認めず,現在,経過観察中である.

肘関節リウマチに対する中間膜挿入関節形成術の経験

著者: 山本博史 ,   藤田俊史

ページ範囲:P.605 - P.610

 メトトレキサート(MTX)の服薬でもコントロールできない疼痛を主訴とする肘の関節リウマチに対し,滑膜切除に併用して腸脛靱帯を中間膜とした関節形成術を行った.術後,疼痛の消失と関節可動域,日常生活動作の改善が得られ,術後3年でも満足な状態が維持された.この方法は,歴史的には古い方法であるが,関節リウマチの薬物治療が進歩し,関節の破壊性変化が減少し変形性関節症様の変化がみられるようになってきた今日では,人工肘関節置換術と比べ,bone stockが温存でき,術後の負荷荷重制限を厳密にする必要がないなど有効な方法と考えられる.

書評

骨軟部画像診断スタンダード フリーアクセス

著者: 野沢雅彦

ページ範囲:P.611 - P.611

 本書は日本医学放射線学会から発表された「放射線科専門医研修カリキュラムガイドライン2014年版」にリストアップされた骨・軟部疾患を網羅するかたちで,要点,臨床的事項,病態生理・病理像,参考文献,提示された症例の画像所見がわかりやすく,簡潔に述べられている.また「脊椎疾患」,「先天奇形,発育異常」,「感染症,炎症性疾患」,「腫瘍・腫瘍類似疾患」,「外傷,障害」,「代謝・内分泌疾患」,「血液・骨髄疾患」,「関節疾患」,「その他の疾患」の大項目で9章が構成され,その大項目の中にガイドラインに沿った疾患が記載されている.内容を見てみると,最初に要点がいくつか記載されており疾患の概要を容易につかむことができる.さらに臨床的事項で疾患の特徴を理解し,病態生理・病理像の項目で疾患の本質を確認し,必要があれば直ぐに参考文献で疾患の詳細が解る.画像所見では典型的な症例の提示が行われ,単純X線所見,MRI像,CT像を中心に,その疾患に特徴的な所見が詳細に述べられている.特筆すべきは,図の説明が明快で,かつわかりやすく,丁寧であり,放射線診断専門医を目指す医師はもちろん整形外科医にとっても格好の書であると言える.「単純X線写真による骨腫瘍の良悪性の評価」,「骨折の分類・治癒過程・合併症」,「単純X線写真による関節炎の評価」の項目は総説的な記載がされており,読者にとってはその解説を理解することにより,骨腫瘍,骨折,関節炎に関しても,より正確な病態の把握および診断を順序立てて行うことができると考える.私は股関節外科が専門であるが,最近の股関節痛の原因として注目されている大腿骨頭臼蓋インピンジメント(femoroacetabular impingement:FAI)についてもわかりやすく述べられており,新しい疾患の概念も多く取り入れられている.また,疾患の表題の部分に専門医レベル,診断専門医レベル,指導医レベルの記載があり,それぞれのレベルで知っておく必要がある疾患を理解することができる.主な執筆者は日本骨軟部放射線研究会の会員であるが,執筆者の卓越した経験と知識が本書のいたるところに生かされており,本書を一読することで,読者が骨軟部疾患の病態を理解し,正確な画像診断を行うステップを確実に踏むことができると考える.

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.505 - P.505

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.613 - P.613

あとがき フリーアクセス

著者: 黒坂昌弘

ページ範囲:P.616 - P.616

 4月も下旬を迎え,春というよりは早くも初夏の日差しを感じる毎日になってきました.どこの職場でも,4月になると新しい新人を向かえ新しい1年に向かい,希望と不安に胸を膨らませる季節になりました.医学部は,僻地の医師不足が今でも問題になり,都市部への医師の集中が問題になっています.また,新しい卒業生の大学離れ,自らの進路選択なども,研修医の有力な選択肢になっています.しかし,ここ数年の過渡期を経て,同時に新しい整形外科専門医制度が検討されるに従い,徐々に後期研修医の大学病院での研修志向も復活してきているのではないかと思います.本当に信頼される臨床医として成長してゆく過程においては,多くの先輩のもとでそれぞれの先輩たちが経験してきた,臨床医としての貴重な指導を受けること,また,臨床医という貴重で責任ある立場に立つために,臨床に根付いた基礎研究が必要になることなども,理解されつつあるのではないかと思います.根無し草の,臨床経験だけを積んだ医師では,やはり飛躍するためには大きな壁があることは,社会の機構から考えても当たり前のことのように思えます.

 経済的な一面のみを求めて,金銭一辺倒のアメリカの整形外科世界でも,日本の医療システムの検討,導入が政府レベルで行われています.特別に選ばれた人たちだけが達成してきた大学入試,医師国家試験,専門医試験を乗り越え,やっと整形外科専門医の資格を手に入れた先生方には,選ばれた人たちにのみ与えられる恩恵があってしかるべきでしょう.新しい専門医システムで,皆さんが納得できるシステムが今後,構築されていくことを心から期待しています.さらに,大学を中心とする,同じ価値観と経験を有する日本独特のシステムが,さらによい方向に進むよう,私自身を含めてさらなる精進と,若い先生たちの理解が深まることを期待してやみません.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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