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あとがき
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著者:
黒坂昌弘
所属機関:
ページ範囲:P.616 - P.616
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4月も下旬を迎え,春というよりは早くも初夏の日差しを感じる毎日になってきました.どこの職場でも,4月になると新しい新人を向かえ新しい1年に向かい,希望と不安に胸を膨らませる季節になりました.医学部は,僻地の医師不足が今でも問題になり,都市部への医師の集中が問題になっています.また,新しい卒業生の大学離れ,自らの進路選択なども,研修医の有力な選択肢になっています.しかし,ここ数年の過渡期を経て,同時に新しい整形外科専門医制度が検討されるに従い,徐々に後期研修医の大学病院での研修志向も復活してきているのではないかと思います.本当に信頼される臨床医として成長してゆく過程においては,多くの先輩のもとでそれぞれの先輩たちが経験してきた,臨床医としての貴重な指導を受けること,また,臨床医という貴重で責任ある立場に立つために,臨床に根付いた基礎研究が必要になることなども,理解されつつあるのではないかと思います.根無し草の,臨床経験だけを積んだ医師では,やはり飛躍するためには大きな壁があることは,社会の機構から考えても当たり前のことのように思えます.
経済的な一面のみを求めて,金銭一辺倒のアメリカの整形外科世界でも,日本の医療システムの検討,導入が政府レベルで行われています.特別に選ばれた人たちだけが達成してきた大学入試,医師国家試験,専門医試験を乗り越え,やっと整形外科専門医の資格を手に入れた先生方には,選ばれた人たちにのみ与えられる恩恵があってしかるべきでしょう.新しい専門医システムで,皆さんが納得できるシステムが今後,構築されていくことを心から期待しています.さらに,大学を中心とする,同じ価値観と経験を有する日本独特のシステムが,さらによい方向に進むよう,私自身を含めてさらなる精進と,若い先生たちの理解が深まることを期待してやみません.