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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科50巻8号

2015年08月発行

雑誌目次

誌上シンポジウム 反復性肩関節脱臼後のスポーツ復帰

緒言 フリーアクセス

著者: 高岸憲二

ページ範囲:P.726 - P.726

 スポーツ選手が反復性肩関節脱臼を起こした場合,選手本来の競技能力を十分に発揮させるためには保存的療法では限界があり,手術的療法が絶対的適応である.しかし,スポーツに復帰させるためには,それぞれのスポーツ特性を考えての手術法やリハビリテーションが異なる.ここでは種目として「野球」,「相撲」,「ラグビー」,「柔道」,「ハンドボール」を取り上げ,「術後のリハビリテーション」もあわせて,反復性肩関節脱臼で来院したそれぞれの競技選手をいかにスポーツ復帰させるかについて,各競技選手を治療されている整形外科医の先生方に治療法をご執筆いただいた.

 高橋憲正先生は,野球選手では術後のメディカルリハビリテーション期と,術後6カ月以降の競技復帰に向けてアスレチックリハビリテーション期が必要と述べている.中川照彦先生は大相撲力士について,本場所へ術後4〜5カ月で復帰できるが,術前の番付を超えるまでは1年半を要すると述べている.田崎篤先生はラグビー選手の直視下Bristow法を行い,術後固定期や復帰準備期など4期に分け,中間可動域と最終可動域の両方での制動性が競技復帰には必須と述べている.内山善康先生は柔道選手にはinferior capsular shiftもしくは鏡視下Bankart法を用い,術後6カ月以降での試合を設定すると述べている.山門浩太郎先生は,ハンドボール選手ではコンタクトスポーツと投球競技との競技特性を考慮して治療プランの決定を行い,ISISスコア5点以上であれば,原則として観血的烏口突起移行術を選択している.櫻井真先生は術式のメリットを最大限に生かし,選手の復帰までのモチベーションを維持向上させるために復帰プログラムを作成している.

野球における競技復帰—鏡視下Bankart法後を中心に

著者: 高橋憲正

ページ範囲:P.727 - P.732

 野球競技者における反復性肩関節脱臼はめずらしくない.投球側ヘッドスライディングでの受傷が多く,非投球側はヘッドスライディングに加えダイビングキャッチでの受傷が多い.治療は原則として手術が必要で,鏡視下Bankart法を主として腱板疎部縫合を必要に応じ補強として追加する.術後はメディカルリハビリテーションに加えて,特に投球側においては投球動作に即したアスレティックリハビリテーションが必要となる.術後のスポーツ復帰はおおむね良好であるが,投球側では平均10カ月,非投球側では約6カ月の期間を要するため,選手の学年やシーズンを考慮して手術を計画する必要がある.

相撲における競技復帰

著者: 中川照彦 ,   土屋正光 ,   佐藤哲也 ,   八百陽介

ページ範囲:P.733 - P.738

 1998〜2014年の17年間に大相撲力士の反復性肩関節脱臼に対して手術を施行した15例16肩および非手術例で当科受診後1年以上の経過を追跡できた反復性肩関節脱臼5例と初回肩関節脱臼9例を対象とし,手術成績(手術から本場所復帰までの期間,術後番付の推移,再脱臼率,合併症)および非手術例の経過を検討した.手術例では手術から本場所復帰まで4〜5カ月と比較的短期であったが,術前の番付を超えるまでに1年半を要した.非手術例では初回脱臼が若年であるほど,反復性脱臼になる傾向がみられた.大相撲力士の反復性肩関節脱臼では力士本人が手術を希望し,親方の同意が得られれば手術適応になると考える.

ラグビーにおける競技復帰

著者: 田崎篤 ,   真下翔太 ,   渡部亮介 ,   若林岳勝 ,   黒田栄史

ページ範囲:P.739 - P.745

 ラグビーは予測できない最大限の衝突を繰り返すスポーツであり,かつ上肢のスキルを要する球技である.肩関節脱臼により生じた関節不安定症は多大な競技パフォーマンスの障害になるため,積極的な治療が望まれ,外科治療は最大限の制動効果をもたらす術式が望ましい.ラグビーは肩関節の中間可動域および最終可動域の両方での制動性が競技復帰には必須である.術後は肩関節,肩甲胸郭関節の可動域訓練とkinetic chain exerciseを適切な時期に開始するとともに,下肢,体幹との協調運動を基軸として行う.

柔道における競技復帰

著者: 内山善康 ,   宮崎誠司 ,   持田讓治

ページ範囲:P.747 - P.752

 肩関節(亜)脱臼の大学柔道選手における既往は8.9%(50/562例)と稀な外傷ではない.競技柔道の反復性肩関節(亜)脱臼で手術になる場合,選手背景を考慮した手術時期の決定が重要である.直視下手術または鏡視下手術でも再脱臼率は5%程度であり,手術法による差異はない.術後競技復帰プログラムは術後6カ月以降での目標とする試合を決定し,十分な筋力回復と得意技の反復練習により競技復帰させる.しかし戦術的に重要な釣り手側の術後外旋制限は,得意技の変更などを強いられることが多く,競技レベルを下げる原因になり注意を要する.

ハンドボールにおける競技復帰

著者: 山門浩太郎 ,   北岡克彦

ページ範囲:P.753 - P.757

 ハンドボール選手の脱臼を治療するにあたって,コンタクトスポーツであり投球競技でもあるハンドボールの特性を理解して治療プランを決定しなければならない.また,腱板損傷や上方関節唇損傷を伴うことは決して稀でなく,背景にオーバーユースの要素が存在することを忘れず手術を行う必要がある.術式選択では,鏡視下手術か観血的手術か,関節内修復か関節外再建か,あるいはこれらを組み合わせて行うかといった決定がなされねばならない.われわれはISISスコアを指標とし,5点以上の場合では原則として観血的烏口突起移行術を選択している.

スポーツ選手の術後リハビリテーション

著者: 櫻井真 ,   柴田陽三

ページ範囲:P.759 - P.763

 反復性肩関節脱臼となったスポーツ選手は,繰り返す脱臼や疼痛によりスポーツ継続が困難となる.選手のスポーツ復帰を目的とし低侵襲の鏡視下Bankart修復術が行われる.その術式のメリットを最大限に活かし,かつ選手の復帰までのモチベーションを維持向上させるために,われわれは術後の復帰プログラムを作成し選手に提示している.本稿ではスポーツ選手に対する鏡視下Bankart修復術後の復帰プログラムについて述べる.

Lecture

人工股関節の三次元評価と骨座標系の問題点—日本CAOS研究会の2014年指針を中心に

著者: 高尾正樹 ,   菅野伸彦

ページ範囲:P.765 - P.771

はじめに

 近年コンピュータ技術の発達ともに,人工股関節の三次元術前計画や手術シミュレーション研究が比較的容易に行えるようになった.一方でインプラントアライメント,可動域の表記方法,インプラントの位置角度計測のための骨座標系などは統一されておらず,研究成果の互換性が得られず研究者相互の議論に支障を来すケースがみられるようになってきた.骨座標系はインプラントアラメントや関節可動域の数値の基準となるため,その種類が異なれば解析結果に大きな影響を及ぼす.まずは複数ある骨座標系の相違を理解することが重要であり,そのうえでどの座標系がどのような解析に適するかを検討する必要がある.またインプラントアライメントや関節可動域の表記方法も複数あることを理解する必要がある.2007年に創設された日本CAOS(Computer Assisted Orthopaedic Surgery)研究会では,この人工股関節三次元評価方法の課題に対して,2014年の第8回研究会のパネルディスカッションにおいて公開議論を行った.その後,世話人を中心としたワーキンググループによって“人工股関節三次元評価方法の指針(2014年版)”を作成し,ホームページ(http://www.ome.med.osaka-u.ac.jp/pukiwiki/)で公開した.統一した標準法が決定できなかったので,指針では複数の方法を提示し,その中でも日本CAOS研究会として推奨するものを示すかたちをとった.その内容と推奨根拠を中心に,インプラントアライメントや関節可動域の表記方法や骨座標系の問題点について詳述する.

境界領域/知っておきたい

運動器リハビリテーションへのロボット導入

著者: 塩田悦仁

ページ範囲:P.772 - P.776

はじめに

 近年のロボット工学の進歩はめざましく,1990年代以降,さまざまなロボットが医療分野へ導入され,その有用性が報告されている7,13,18).ロボットは,ヒトの操作やセンサーからの入力により,あらかじめ設定されたプログラムに従って特定の作業が自動的にできるもので,医療・福祉分野では,手術支援,筋力増強訓練の支援,摂食・整容・移乗・起立・歩行などの支援,コミュニケーションの支援,介護者側の支援などさまざまな用途に利用されている.現在,国内外のリハビリテーション(リハ)領域で使用されている主なロボットには,上肢用としてMIT-MANUS15),ARM guide23),MINE4),ReoGo3),Bi-Manu-Track9,22),My Spoon24),下肢用としてGait trainer12),ALEX(Active leg exoskeleton)2),LOPES(Lower extremity powered exoskeleton)28),KineAssist6,21),HAL®(Hybrid Assistive Limb)17),G-EO Systems26),Muscle suit19),WPAL(Wearable power-assist locomotor)25),Lokomat5)などがあり,主として脳卒中後の麻痺や脊髄麻痺に対して使用されている.

 当院では2011年9月からロボットスーツHAL®を脳梗塞,脳出血,くも膜下出血など脳卒中の急性期リハへ導入し,現在まで130例以上の症例に使用し,その有用性を報告してきた8,10,11,27).2013年11月からは,膝関節・肘関節のリハ用に開発されたロボットスーツである単関節型HAL®(HAL-SJ)を運動器疾患のリハへも導入しているので,その使用経験を紹介する.

連載 「勘違い」から始める臨床研究—研究の旅で遭難しないために・8

アットリスクとはアウトカムを起こしやすいこと?

著者: 福原俊一 ,   福間真悟

ページ範囲:P.777 - P.782

 前回は,曖昧な疑問をPECOに構造化する際に起こりうるさまざまな間違い,またこれらに気づき,防ぐ方法について解説しました.今回は,特に,PECOの対象「P」について考えてみましょう.特に,「アットリスク」とは何かについてです.それではいつもの大風呂医師(O),ハッタリ医師(H)に登場してもらいましょう.

運動器のサイエンス・17

慢性疼痛増加の機序を探る

著者: 半場道子

ページ範囲:P.782 - P.785

痛みの制御,運動制御に関わるdopamine

 最近の神経科学から慢性疼痛の謎を追う本欄,第17回はParkinson's disease(PD)の痛みを取り上げる.PD患者には共通して,苛酷な痛みの問題が浮上しているからである.PDでは,運動症状の軽減に治療の主力が注がれているが,患者は耐えがたい痛みと気分障害などをかなりの高率で抱えており1,3,4,10,12,13),痛みが運動症状に先行して現れた例も多い12).患者数が増加し続ける超高齢社会にあって,「どれだけ訴えても,痛いはずはないと取り合ってもらえない」という,臨床側の無理解を嘆く声も届いている.

 脳内dopamineは,学習や行動などさまざまな作用をしているが,中脳から発するdopamine作動性伝達は,痛みの受容と制御2,8),運動制御に大きな役割を有している.

整形外科の歴史

関節形成術を中心とした股関節手術の歴史⑧(最終回)

著者: 小野啓郎

ページ範囲:P.787 - P.793

流体潤滑説再訪

 「ヒトの股関節が境界潤滑だけではない,関節液による流体潤滑も関わっているとすればどうなるか?」

 20世紀初頭の科学界ではReynolds(図50)の説−hydrodynamic lubrication(流体潤滑)(図51,52)が有力であった.当時の英国鉱工業ならびに陸運・海運の繁栄の中で原動機(エンジン・ピストン)−車軸−軸受けの“低摩擦理論”が飛躍する機運にあったことを物語る.蒸気機関・発電機・内燃機関の動力を大規模工場生産や船の推進力に利用するためには各種のすべり軸受け,ピストンリングにおける摩擦の問題が重大なテーマであった.

臨床経験

初回人工股関節置換術における止血剤の出血抑制効果と凝固線溶系への影響について

著者: 上岡顕 ,   楫野良知 ,   加畑多文 ,   前田亨 ,   長谷川和宏 ,   井上大輔 ,   山本崇史 ,   髙木知治 ,   土屋弘行 ,   宮崎初美

ページ範囲:P.795 - P.798

 目的:トラネキサム酸,カルバゾクロムスルホン酸ナトリウムが初回THAの術中出血量や凝固線溶系に与える影響について検討することである.

 対象と方法:当科にて施行した初回THAで,条件を満たす177股を対象とし,検討項目は術中出血量,術後Dダイマー値,DVT発生率とした.

 結果:止血剤投与群の術中出血量,術翌日のDダイマー値は有意に低値であったが,DVT発生率に有意差はなかった.

 まとめ:初回THAにおいて,止血剤は有意に術中出血量を減少させた.術翌日のDダイマー値が低値であることは,止血剤が線溶系を抑制させる可能性を示唆する.

人工股関節全置換術における手術開始後早期出血量と総出血量との検討

著者: 老沼和弘 ,   古澤志穂 ,   橋本明枝 ,   松浦珠美

ページ範囲:P.799 - P.801

 人工股関節全置換術(THA)に術中回収式自己血輸血は有用であるが,欠点は,術中出血量が少量の場合,保険適応外であること,細菌混入などのリスクを冒してまで返血する医学的意味が乏しいことである.そこで,今回,片側THA165例を対象に手術開始後早期の出血量と総出血量の関係を検討し,早期出血量が総出血量と相関することがわかった.早期出血量に従って術中回収血装置を使うか否かの判断をすれば,効率的な術中回収式自己血輸血の運用に有用と考えられる.

症例報告

頚椎椎間板ヘルニアを伴う椎間関節片側脱臼に対し,頚椎前方アプローチ単独で除圧整復固定を施行した1例

著者: 吉田裕俊 ,   折井久弥 ,   沼野藤希 ,   友利正樹 ,   角谷智 ,   佐藤浩一

ページ範囲:P.803 - P.806

 症例は70歳,男性で,前方に転倒して受傷した.画像上,頚椎椎間板ヘルニアを伴う椎間関節片側脱臼が認められた.術前,両上肢筋力低下,四肢しびれの神経症状がみられたが,頚椎前方アプローチ単独で除圧整復固定が達せられ,術後両上肢に軽いしびれを残す程度に改善が得られた.頚椎椎間板ヘルニアを伴う椎間関節片側脱臼に対する外科的治療法として,一期的頚椎前方後方手術が一般的である.われわれは,頚椎前方アプローチ単独で椎間板ヘルニアを摘出し,椎間関節脱臼を整復し椎体間固定を施行した1例を報告した.

骨折を伴わない足関節開放脱臼の1例

著者: 米澤宏隆 ,   渡邊孝治 ,   安竹秀俊 ,   堀井健志 ,   橋本典之 ,   高田宗知 ,   島貫景都 ,   高木知治

ページ範囲:P.807 - P.811

 症例は21歳,女性で,バレーボールで受傷した骨折を伴わない左足関節開放脱臼である.外果周辺に約5cmの開放創を認め,緊急で洗浄・整復術を施行した.靱帯修復は行っていない.術後MRIで内果と距骨内側の軟骨損傷を疑い,受傷後12日目に足関節鏡検査を施行した.関節内の剝離した軟骨を摘出し露出した軟骨下骨にmarrow stimulation techniqueを行った.術後はギプス固定を6週間,軟性サポーターを6週間使用した.受傷後1年でストレスX線像で足関節不安定性を認めず,MRIでも距骨壊死の所見はない.JSSFスコアは100点で,バレーボールも受傷前と同様レベルで行っている.

診断に時間を要したSurfer's Myelopathyの1例

著者: 森重雄太郎 ,   小栁貴裕 ,   飯田剛 ,   金子康仁

ページ範囲:P.813 - P.816

 症例は30歳の男性で,主訴は排尿・排便障害と走行時の両足底部の痛みとしびれであった.当院内科へ入院となり,多発性硬化症を疑われステロイドパルス療法が開始された後,当科に紹介された.胸腰椎部の単純X線像とMRI画像で異常所見を認めなかった.サーフィン初心者で,パドリングを契機に発症したことから,surfer's myelopathyと診断した.発症1年時,症状は軽快したが,走行時の足底部の違和感と軽度の膀胱直腸障害が残存した.Surfer's myelopathyの病態は不明な点が多いが,反復する脊椎過伸展と海水による冷却が,脊髄虚血を引き起こすのではないかと考える.

橈側手根伸筋腱付着部裂離骨折の治療経験

著者: 牛島貴宏 ,   小島哲夫 ,   小川光 ,   財津泰久 ,   溝口知行 ,   上新淑文 ,   村田大 ,   仲西知憲 ,   榎原純

ページ範囲:P.817 - P.821

 比較的稀な長・短橈側手根伸筋腱(ECRL,ECRB)の遠位付着部での裂離骨折に対して手術的治療を行った3例について報告する.

 症例1は47歳男性で,ソフトボール中に他選手と衝突した.左ECRB付着部裂離骨折に対し鋼線による内固定を行った.症例2は32歳男性で,バイクで走行中に転倒し,右ECRL付着部裂離骨折に対しスクリューによる内固定を行った.症例3はゴルフの打球で痛みが出現し,左ECRL付着部裂離骨折に対してアンカーによる内固定を行った.いずれの症例も最終観察時に疼痛や可動域制限は認めなかった.

抗凝固療法中に誘因なく生じた前腕コンパートメント症候群の1例

著者: 守宏介 ,   有薗行朋 ,   日野竜穂 ,   浜田良機

ページ範囲:P.823 - P.826

 要旨:抗凝固療法中に生じた明らかな外傷のない前腕コンパートメント症候群の1例を経験した.

 症例:69歳の男性で,脳梗塞による軽度の右片麻痺で抗凝固療法を行っていたが,誘因なく前腕の腫脹,しびれが出現した.初診時,前腕の腫脹,発赤を認めたが,疼痛はなく手指の自動伸展不能であった,前腕の筋内圧が45mmHgでコンパートメント症候群と診断し,緊急筋膜切開術を施行した.

 結果・考察:抗凝固療法中はコンパートメント症候群の自然発症の可能性があり,特に麻痺が存在する場合は,痛みの訴えがないこともあるので注意が必要である.

初回人工膝関節全置換術後感染に対して二期的再置換を目指すも反復性脱臼に難渋した1例

著者: 津田晃佑 ,   原口圭司 ,   小柳淳一朗 ,   金政孝 ,   小川剛 ,   藤原達司 ,   藤原桂樹

ページ範囲:P.827 - P.831

 初回人工膝関節全置換術後感染で,人工関節抜去,抗生剤含有セメントスペーサー(以下スペーサー)留置により二期的再置換を目指したが,スペーサーの反復性脱臼に陥ったため,リング式創外固定器を併用しながら再置換術を施行した.スペーサー留置により,局所での抗生剤の徐放効果を期待できるとともに側副靱帯の緊張を保つことが可能となる一方で,骨面とスペーサー面が適合せずに亜脱臼や脱臼,進行性の骨破壊などが手技上の注意点として挙げられており,スペーサーの反復性脱臼は難渋する合併症の1つであると考えられた.

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.725 - P.725

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.833 - P.833

あとがき フリーアクセス

著者: 高岸憲二

ページ範囲:P.836 - P.836

 学校における定期健康診断は,学校保健安全法に基づいて行われていますが,昨年4月「学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令」が公布され,「児童生徒等の健康診断において,運動器に関係する検査を必須項目に追加する」という内容が盛り込まれました.運動器障害に悩む国民と,運動器の健康を守る整形外科医にとって朗報です.この省令が施行されますと,われわれ整形外科医の働きが運動器検診の成否の鍵となります.来年4月から開始される運動器検診は小学校から高校までの生徒が対象となります.短時間に内科,眼科など既存の検診に加えて,運動器の検診も行わねばならない校医の先生方に理解していただくよう,検診内容については現在,日本学校保健会マニュアル検討委員会で議論されています.実際に検診が始まりますと,要二次検診の基準作成,要二次検診者の流れをどのようにするかなどが問題となってきます.二次検診者にはすべての整形外科医が力を合わせて対応することが肝要ですので,皆様のご協力をお願いいたします.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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