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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科51巻1号

2016年01月発行

雑誌目次

視座

アクティブシニア

著者: 秋山治彦

ページ範囲:P.3 - P.3

 何カ月ぶりだろう.久しぶりに京都の実家を訪れました.小さな前庭には下草が茂り,私の腰よりも背の高いキリン草が何本もまっすぐに成長し,あたかもサバンナのようです.黄金色のバッタが雑草の葉にとまり,縁側下の砂の上でも猫が気持ちよさそうにひなたぼっこしています.主のいない空き家になって,まだ数カ月というのに,こんなにも様相が変わってしまうことに驚きを感じました.

 総務省の平成25年住宅・土地統計調査によりますと,全国の「空き家」は820万戸となり,総住宅数に占める割合が13.5%と過去最高を更新しています.東京オリンピックが開催される2020年には全国の空き家は1,000万戸に達すると予測されていて,確かに古くなった住宅地では,雨戸を閉ざした空き家をよく目にするようになりました.日本には現在,一人暮らしの老人が約600万人いると言われ,同居世帯数は13%でしかありません.住み慣れたマイホームがどんどん空き家になるのも頷けます.

論述

肘部管症候群手術症例における術後1年での電気生理学的回復について

著者: 隈部洋平 ,   金谷貴子 ,   名倉一成 ,   美舩泰 ,   国分毅 ,   鷲見正敏

ページ範囲:P.5 - P.8

背景:肘部管症候群の術後1年での電気生理学的回復を検討した.

対象と方法:51例を赤堀の電気生理学的分類〔Ⅰ期;運動神経伝導速度(MCV),感覚神経伝導速度(SCV)がともに正常,Ⅱ期;MCV正常+SCV低下,Ⅲ期;MCV正常下限もしくは低下+SCV低下,Ⅳ期;MCV低下+SCV消失,Ⅴ期;MCV,SCVともに消失〕に基づき評価した.

結果:術前は重症例(Ⅳ,Ⅴ期)であった29例は術後5例へ有意に減少し(p<0.0001),中等症例(Ⅲ期)が有意に増加した(p<0.0001).

まとめ:肘部管症候群の術後の電気生理学的回復は重症例にも期待できる.

頚椎椎弓形成術を施行した頚椎症性脊髄症と頚椎後縦靱帯骨化症における10秒テスト/JOAスコア/JOACMEQの経時的変化,および後方除圧高位が頚部痛と頚椎機能に与える影響に関する前向き比較研究

著者: 藤原啓恭 ,   海渡貴司 ,   牧野孝洋 ,   本田博嗣 ,   松尾庸平 ,   米延策雄

ページ範囲:P.9 - P.18

背景:頚椎症性脊髄症(CSM)と頚椎後縦靱帯骨化症(OPLL)に伴う頚部脊髄症術前後の10秒テスト/JOAスコア/JOACMEQの経時的変化,後方除圧高位別の頚部痛と頚椎機能を前向きに比較検討すること.

対象と方法:頚椎椎弓形成術施行症例55例を対象とし,各スコアの術前から術後12カ月まで経時的変化を観察し,疾患別およびC7温存群とC7挙上群を比較検討した.

結果:各スコアに関して疾患群間に有意差を認めなかった.頚椎機能・頚部痛に関してOPLL群ではC7挙上の有無での有意差を認めなかった.

まとめ:OPLLはCSMと比較し手術治療成績・機能回復予後に有意差を認めなかった.OPLLにおいて術後骨化伸展が危惧される症例はC7挙上を推奨する.

ロコモティブシンドローム検診普及への取り組み—特定健診と併せた実施の有用性

著者: 中藤真一

ページ範囲:P.19 - P.22

背景:特定健診にロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)検診を併せて行った.

対象と方法:対象者にFRAX®とロコチェックの問診票を配布し回収した.FRAX®骨折確率が10%以上またはロコチェック陽性者に,二次スクリーニングとしてロコモ度テストとサルコペニアの評価を行った.

結果:問診票回収率は40.7%で,216人が二次スクリーニングを受診した.

まとめ:ロコモ検診を特定健診と併せて行うことで,検診実施率,受診率の向上が期待できた.FRAX®とロコチェックを活用することで検診の効率化が可能である.

Lecture

学校健診における運動器検診

著者: 内尾祐司

ページ範囲:P.23 - P.28

はじめに

 平成26年(2014)4月30日,「学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令(平成26年文部科学省令第21号)」が公布された13).本省令の趣旨は,「近年における児童,生徒,学生及び幼児(児童生徒等)の健康上の問題の変化,医療技術の進歩,地域における保健医療の状況の変化などを踏まえ,児童生徒等の健康診断の検査項目等の見直しを行うとともに,職員の健康診断,就学時健康診断の様式等について,最近における状況や予防接種法(昭和23年法律第68号)の改正を踏まえた結果を反映するため」である13).改正される項目のうち,児童生徒等の健康診断に係る改正では,座高や寄生虫卵の検査が必須項目から削除される一方,「四肢の状態」が必須項目として加えられるとともに,四肢の状態を検査する際は四肢の形態および発育,ならびに運動器の機能の状態に注意することが規定された.なお,この児童生徒等の健康診断に係る改正規定等については平成28年(2016)4月1日から施行されることになっている.施行日が迫るなか,学校医および整形外科医は本省令公布の背景や運動器検診の内容について熟知しておく必要がある.本稿では学校保健安全法施行規則の改正に至った児童生徒等の運動器疾患・障害の実態やそれまでの法的基盤の変遷,および運動器検診の実際と課題について述べる.

SAPHO症候群

著者: 村田紀和

ページ範囲:P.29 - P.35

はじめに

 胸骨周辺の前胸部を中心に,身体の種々の部位に生じた硬化性あるいは肥大性骨関節病変がさまざまな名称で報告されてきた.これら疾患,病像には共通の要素があるとして,まとめられたものがSAPHO症候群である.今回はSAPHO症候群の術語の成り立ちを中心にSAPHO症候群について概説する.

整形外科/知ってるつもり

Patient Specific Surgical Guide

著者: 坂井孝司

ページ範囲:P.36 - P.39

Patient specific surgical guide:PSG

 PSG(patient specific surgical guide)とは,骨表面の凹凸に適合するように設置し,手術中にガイドワイヤの刺入方向・刺入位置や,骨切り角度・位置を規定する単回使用型の手術支援ガイドである(図1).1998年にAachen University of TechnologyのRadermacherらが,“image based individual template”として,PSGの概念および脊椎手術や骨盤骨切り術への臨床応用をClinical Orthopaedics誌に論文発表したことが端緒となっている14).PSI(patient specific instrumentation),tailor-made surgical guide,custom-made cutting templateなどの呼称も用いられる.近年の3Dプリンターの発達と医療分野での応用に伴い,術前CTあるいはMRIデータから3次元骨格モデルを作製し,その形状に応じたガイドをデザインして骨折治癒後の変形矯正や,目標とするインプラント設置を規定するようにガイドを作製する.造形機(FORMIGAなど)にインプットされた3次元CADデータに従ってナイロン樹脂や石膏を用いて作製され,滅菌して手術中に使用可能とする.人工膝関節全置換術(TKA)1,4-6,12,16,18)や上肢変形矯正骨切り術11)では保険収載され,一般臨床において用いられている.人工股関節全置換術(THA)2,3,7-10,13,15,17,19)や脊椎手術においても今後の一般化に向けた取り組みがなされつつある.

境界領域/知っておきたい

がんリハビリテーション

著者: 辻哲也

ページ範囲:P.40 - P.44

はじめに

 人口の高齢化とともに,わが国における悪性腫瘍(以下,がん)の罹患者数は年々増加し,生涯でがんに罹患する確率は,ほぼ2人に1人である.がんの治療を終えた,あるいは治療を受けつつあるがんサバイバーが500万人を超えようとする現在,がんが“不治の病”であった時代から,“がんと共存”する時代になりつつある.

 2006年に制定された「がん対策基本法」では,基本的施策として,「がん患者の療養生活の質の維持向上」が挙げられている.がん自体に対する治療のみならず,症状緩和や心理・身体面のケアから療養支援,復職などの社会的な側面をサポートしていく,“がんと共存する時代”の新しい医療のあり方が求められている.

最新基礎科学/知っておきたい

脊髄再生は可能か

著者: 川端走野 ,   中村雅也

ページ範囲:P.46 - P.49

はじめに

 脊髄損傷は脊髄実質の損傷を契機に,損傷部以下の知覚・運動・自律神経系の麻痺を呈する病態である.本邦では毎年約5,000人の新規患者が発生しており,慢性期患者数は10〜20万人に達すると言われている.集学的医療の進歩により脊髄損傷患者の平均余命は健常者と遜色なくなったが,損傷した脊髄そのものに対する有効な治療法はいまだに確立されていない.20世紀初頭にスペインの神経解剖学者Ramon y Cajalが,「成体哺乳類の中枢神経系は損傷を受けると2度と再生しない」と述べて以来,この概念は長い間信じられてきた.しかし,神経科学の目覚ましい進歩により,Cajalの通説は覆されつつある.中枢神経系の再生医療の戦略として主に,神経幹/前駆細胞(neural stem/progenitor cells,以下NS/PCs)を用いた細胞移植療法と,それ以外の薬剤やリハビリテーションなどによる治療法の2つに大別される.本稿では,これまでわれわれが行ってきた基礎研究の概要と,脊髄再生の実現に向けた今後の展望について概説する.

Mohawkと腱靱帯分化

著者: 小田邉浩二 ,   浅原弘嗣

ページ範囲:P.50 - P.53

はじめに

 骨格間を連結する靱帯と骨格筋と骨を連結する腱は,関節の安定化と効率のよい運動を可能とし,運動器の構成体が連動して機能するために不可欠となる3).腱・靱帯は,組織学的には規則正しく配列した腱細胞と,主にコラーゲンからなる間質で構成される.腱・靱帯組織の血流は一般的に乏しく,損傷を受けた場合は瘢痕組織により修復され,生体力学的に十分な強度が得られにくい.そのため腱・靱帯の発生と再生を司る,分子生物学的な主要機序の解明が待望されている.

 腱・靱帯は骨・軟骨・脂肪・筋肉といった他の間葉組織と同様に,間葉系幹細胞から分化すると考えられている.しかし,間葉系幹細胞の腱・靱帯分化に関する知見は限られており,どのようなファクターが分化を決定づけるか,今までは十分には解明されていなかった.

連載 東アフリカ見聞録・1【新連載】

緑のブッシュと乾いたサバンナ

著者: 馬場久敏

ページ範囲:P.54 - P.55

 わが家の日本水仙は可憐な花を開き,実に甘い香りで包んでくれる.越前では水仙は古くから「雪中花」とも呼ばれ,由緒ある日本旅館の離れの部屋の名前などにもあてがわれる,実に風流で優雅な呼称である.日本人の感性は素晴らしい.花言葉は“神秘・自己愛”だそうで,冬の越前加賀海岸国定公園には野生種が群生し,“水仙街道”とも呼ばれる国道305号線にはこの時期,遠来の人びともそれ目当てに群れている.越前の人びとは,年末から正月にはほぼすべての家で水仙を生けており,拙宅もしかりである.その可憐な花は実に香しい.自宅脇の小さな“ポタジェ”では昨秋にオランダ産チューリップ200本,日本水仙100本を植え直し,それらを眺めながら東アフリカと関わってきた10年を想う.

 大学を早期退職し,気ままに東アフリカを往来して人びとと関わりたく想い,はや1年が経った.昨年は小生たちが立ち上げたSICOT外傷医学マケレレ教育センター(ウガンダ)から日本とでテレビ会議での症例検討会を開始した.ここに至る10年の経緯では実にいろいろなことがあり,さまざまな人びとと交流をもつこともでき,それらが生き生きと想い起こされる.実に数多くの先輩諸兄からも支援をいただいてきたこと,今更ながらに感謝の気持ちで胸が一杯になる.

「勘違い」から始める臨床研究—研究の旅で遭難しないために・10

前後不覚!?

著者: 福間真悟 ,   福原俊一

ページ範囲:P.57 - P.61

 今回から「比較の質」に関するトピックを紹介していきます.臨床研究の主要な目的は,比較して関連や効果を調べることです.治療の効果を調べたり,特定の検査結果とその後に起こるアウトカムの関連を調べたり,さまざまなリサーチ・クエスチョンが該当します.今回は,「比較の質」に関して最も基本的な勘違いをしやすい,「前後比較」の問題について取り上げたいと思います.

臨床経験

小児肘関節脱臼における合併骨折の検討

著者: 森重昌志 ,   飛田正敏 ,   市本裕康 ,   勝部浩介 ,   河野大助 ,   野崎健治 ,   齊鹿稔

ページ範囲:P.61 - P.64

背景:小児肘関節脱臼は多くの場合で骨折を合併する.初診時に骨折の有無を適切に評価して治療方法を選択することが重要だが,後日に骨折が判明することも多い.当科で経験した小児肘関節脱臼の脱臼方向と合併骨折の関連や頻度を検討する.

対象:橈骨頭の単独脱臼を除く小児肘関節脱臼16例(受傷時年齢4〜15歳)を対象とした.

結果:16例中11例で骨折を合併していた.後外側脱臼に伴う内側上顆骨折が11例中4例と最多であった.

考察:脱臼方向から合併する骨折を予測することは,初診時の骨折の診断に有用と考える.

患者満足度アンケートからみる当院における超音波ガイド下腋窩ブロックの実際

著者: 熊谷洋 ,   田中利和 ,   小川健 ,   野内隆治 ,   落合直之

ページ範囲:P.65 - P.69

背景:患者満足度アンケートから,超音波ガイド下腋窩ブロックの上肢手術における有用性について検討した.

対象と方法:160例(男91,女69例),平均年齢51.2歳(13〜90歳)を対象とし,無記名式のアンケートを作成し,郵送により患者満足度について回答を得た.有効回答数は77例で,その内訳は男性36例,女性41例,平均年齢は59.6歳であった.

結果:手術部位の疼痛は,感じなかった48例,あまり感じなかった11例(有効率77%)と,おおむね良好な満足度が得られた.

まとめ:本法は上肢手術において有用と考えられた.

成長期腰椎疲労骨折CT分類の信頼性—矢状断CT分類と横断CT分類の読影信頼性の比較

著者: 神谷光広 ,   花村俊太朗 ,   前田健博 ,   若尾典充 ,   竹内幹伸 ,   平澤敦彦 ,   室谷健太 ,   出家正隆

ページ範囲:P.71 - P.75

背景と目的:成長期腰椎疲労骨折はMRIで早期診断後,CTで骨癒合率を予測し治療方針を決定する.腹側から背側に向かって進行する骨折線の進行程度で評価する矢状断CT像分類を考案し,従来の横断像CT分類との検者内および検者間信頼性を比較検討した.

対象と方法:31例(38骨折)を横断CT5スライス像と矢状断CT3スライス像で再構築し,3名が各々を読影し,分類した.

結果:横断CTを参照しつつ,矢状断CTで進行程度を分類した結果の検者間信頼性Fleiss' kappa係数が0.582と最も高かった.

まとめ:急性期の成長期腰椎疲労骨折は,横断CTを参照しながら,矢状断CTで分類することが推奨される.

超音波検査を用いた手根管症候群の母指球筋萎縮の評価法

著者: 名倉一成 ,   金谷貴子 ,   鷲見正敏 ,   乾淳幸 ,   美舩泰 ,   国分毅

ページ範囲:P.77 - P.80

背景:母指球筋萎縮における客観的な評価として超音波検査を用い,手根管症候群(CTS)の母指球筋萎縮を評価した.

対象と方法:手術を施行した母指球筋萎縮を伴うCTS患者32手を対象とし,術前に超音波検査を用いて母指球筋の筋厚を測定した.

結果:電気生理学的重症度と並行してまず短母指外転筋の筋厚減少がみられ,重症度の進行につれて母指対立筋の筋厚減少がみられた.

まとめ:超音波検査を用いたCTSの母指球筋萎縮の評価は可能である.

MRSA/MRCNS骨関節炎に対するリネゾリドとダプトマイシンの治療経験

著者: 竹中聡 ,   梅本周作 ,   前田一哉 ,   佐藤世羅 ,   蒲生和重 ,   許太如 ,   葭井健男 ,   朴智 ,   鈴木浩司 ,   岡久仁洋 ,   田川優介 ,   倉都滋之

ページ範囲:P.81 - P.85

背景:新たなMethicillin Resistant Staphylococcus aureus(MRSA)治療薬としてリネゾリド(LZD)とダプトマイシン(DAP)が使用可能となったが,これらの骨関節炎に対する効果を検討した報告はいまだ少ない.

対象と方法:MRSAもしくはMethicillin Resistant Coagulase Negative Staphylococci(MRCNS)による骨関節炎でLZDもしくはDAPで加療した15例を後視的にその治療成績をまとめ検討した.

結果:治療が成功した症例はLZD7/9例(77.8%),DAP3/6例(50%)であった.感染を鎮静化できなかった症例はLZD1/9例(11.1%),DAP3/6例(50%)で,うちDAP2例では多発膿瘍を有していたため,DAPが成功しなかった原因となった可能性がある.LZD1/9例(11.1%)で副作用のため中止となった.

まとめ:LZDはMRSA/MRCNS骨関節炎に対して高い奏効率(77.8%)を示した.

症例報告

上腕骨近位端4-part前方脱臼骨折に対して骨接合術を施行した1例

著者: 加藤知行 ,   高橋正明 ,   堀内孝一 ,   加藤雅敬

ページ範囲:P.87 - P.91

 上腕骨近位端4-part前方脱臼骨折に対して骨接合術を行い,比較的良好な結果を得ることができたので報告する.症例は30歳女性で,スノーボードで転倒し受傷した.Neer分類4-part脱臼骨折と診断し,受傷日から5日後に骨接合術を施行した.術後2年の時点で肩関節可動域は自動拳上120°,外旋40°,内旋Th10である.本症例に関しては将来的に骨頭の圧潰が進行したとしても,肩関節拘縮がなく大小結節の骨癒合が得られているので,容易に人工骨頭置換術への移行ができ,しかも良好な機能を獲得できると考えている.

関節リウマチ肘に合併した尺骨神経皮下断裂の1例

著者: 藤原達司 ,   藤原弘士 ,   島津宏樹 ,   伏見博彰 ,   藤原桂樹

ページ範囲:P.93 - P.96

 関節リウマチ肘に尺骨神経皮下断裂を合併した1例を報告する.症例は77歳女性で,30年以上前に関節リウマチを発症し,5年前から左肘関節の運動時痛が発現し,2カ月前から左手尺側のしびれを自覚するようになった.関節リウマチ肘に合併した肘部管症候群と診断されたが,初診時から2年での手術となった.術中に尺骨神経皮下断裂を認めたため,人工肘関節置換術後,神経縫合を行った.著明な骨破壊や関節動揺,長期間経過した肘部管症候群,これらを併せ持つリウマチ肘では,尺骨神経断裂が危惧されるため,早期の手術治療を検討すべきである.

距骨に発生した軟骨芽細胞腫の1例

著者: 高松広周 ,   須佐美知郎 ,   中山ロバート ,   渡部逸央 ,   西本和正 ,   堀内圭輔 ,   戸山芳昭 ,   中村雅也 ,   松本守雄 ,   佐々木文 ,   亀山香織 ,   森岡秀夫

ページ範囲:P.97 - P.100

 軟骨芽細胞腫は比較的稀な良性骨腫瘍であり長幹骨骨端部に好発するが,今回われわれは距骨発生例を経験した.症例は23歳男性で,2年前からの左足関節痛を主訴とし,各種画像検査,病理組織学的検査により,軟骨芽細胞腫と診断した.手術は足関節内果の骨切りで距骨にアプローチし,拡大掻爬術後,自家腸骨を移植した.術後22カ月現在,疼痛,関節可動域制限はなく,再発・転移を認めていない.不十分な掻爬術では,再発・転移例の報告もあり,慎重な経過観察が必要と考えられた.

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.1 - P.1

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.103 - P.103

あとがき フリーアクセス

著者: 吉川秀樹

ページ範囲:P.106 - P.106

 明けましておめでとうございます.昨年末も,日本人のノーベル賞受賞が大きな話題になりました.なかでも,私が特に関心を持ったのは,生理学・医学賞を受賞された大村智先生でした.意外にも,医薬品開発者の受賞は1988年以来27年ぶりでした.ノーベル賞委員会はこれまで,医薬品開発者への授賞には消極的であり,その主な理由として,長期経過後の副作用の可能性や,それを凌ぐ新薬が次々と現れることなどが挙げられています.現在も,年間約3億人が恩恵を受け続けているという大村先生の業績が,いかに偉大であるかが伺われます.選考委員会では,これだけの人類への貢献は,ノーベル平和賞にも該当するとの賞賛を得たそうです.大村先生は,土壌に含まれる天然の細菌から,寄生虫駆除に有効な新薬「イベルメクチン」他を商品化し,フィラリア症などの特効薬として,世界の感染症発生地域に無償提供しました.さらに,アメリカの大手製薬会社からのロイヤリティ収入を多くの医学研究に寄付しただけではなく,北里メディカルセンターの設立や美術館の設立も行いました.優れた学者でありながら,ビジネス感覚を併せ持ち,得られた収益を私することなく,社会に還元させる姿勢に感銘を受けました.「人があまり考えないことで,世の中の役に立つのが自分の使命だと思って絶えず挑戦してきました.」「自分のこれからの最大の仕事は,人を教育することです.」など,大村先生の言葉は,われわれ整形外科医にとっても,示唆に富み,日本人を勇気づける受賞であったと思います.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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