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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科51巻10号

2016年10月発行

文献概要

Lecture

最近の鏡視下腱板修復術

著者: 大西和友1

所属機関: 1船橋整形外科病院肩関節・肘関節センター

ページ範囲:P.939 - P.946

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はじめに

 腱板断裂に対する鏡視下手術は,1988年にEschらが腱板断裂に対する鏡視下肩峰下除圧術(ASD)を報告したのを皮切りに,鏡視下+mini-open法が普及し,1997年になってGartsmanらやSnyderが初めて鏡視下腱板修復術を報告した.その後,鏡視下手術の普及に伴う手術手技や使用インプラントの向上により,近年では直視下やmini-open法と同等以上の成績も報告されている1).日本肩関節学会が行ったアンケート調査によると,2014年度に本邦で施行された8,426例の腱板障害に対する手術のうち鏡視下手術は約85%を占めており,現在に至っては,腱板修復術における関節鏡技術の習得はもはや必須なものであるといえる.

 鏡視下手術の利点は低侵襲性ばかりではなく,関節内や滑液包側いずれも良好な視野のもとに正確な病態把握と手術操作が可能であることが挙げられる.事実,これらの鏡視下手術の普及に伴い,従来少ないと考えられていた肩甲下筋腱断裂が高頻度にみられることや2),上腕二頭筋長頭腱(以下,LHB)が関節内で肥大することにより結節間溝部で滑走障害を生じる新たな病態が確認されるようになっている3).したがって,鏡視下腱板修復術を行う際には棘上筋・棘下筋のみではなく肩甲下筋腱断裂やLHB病変を的確に診断し,それぞれに適切な修復や処置を行うことが重要である.本稿では,筆者らの術式の変遷および現行の術式を紹介する.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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