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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科51巻12号

2016年12月発行

文献概要

連載 東アフリカ見聞録・12【最終回】

小雨降る径(Il Pleut Sur La Route)

著者: 馬場久敏12

所属機関: 1福井大学医学部器官制御医学講座整形外科学領域 2

ページ範囲:P.1144 - P.1146

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 晩秋から初冬に移るこの時期,銀杏の並木は黄緑の葉を落とし,落葉の絨毯が小雨に打たれる景色は,この上なく哀愁を誘う.どこからかコンチネンタル・タンゴの名曲“小雨降る径(みち)”が聞こえてきそうで,それは本当に素敵な情景である.木々は芽吹き繁茂し,やがては葉を落としてまた芽吹く.自然の摂理には何ひとつ無意味なものはなく,生きとし生けるもののすべての営みは,大自然の法にのっとって過ぎていくものであり,雨に打たれる落葉はそのような森羅万象の原理や理法をふと想い出させてくれる.日本の文化は雨水に根っ子があるのだろうと想う.しかし現代人は幾分に雨水を敬遠するようになったと想うがなぜだろう.

 日本の四季の移ろい,山,川,森,雪,雨など,水をめぐる環境生態の多様性は人びとの認識や意識,ひいては宇宙観に大きな影響を及ぼす.“雨の国,水の国,日本”.日本の文化の根源,吉野・熊野のそれは紀伊山系の杜(もり)の豊かな雨水に根源があり,日本人の感性,美意識や自然観は雨・水そのものに源流がある.健やかな生態にとって雨水は甘露の雨,甘雨(かんう)なのだ.梅雨時や晩秋,初冬の雨の日など,書斎に籠り,雨に打たれる庭の木々や花々をぼんやり眺めながら,濃い目に熱く入れた紅茶をその時の気分に合わせて選んだウェッジウッドで愉しむひとときはとてもいいものだ.雨はいろいろな事柄やいかようにもならない事項などを流して消してくれる気がして,心が落ち着くのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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