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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科51巻2号

2016年02月発行

雑誌目次

視座

新たな専門医制度に向かって

著者: 秋末敏宏

ページ範囲:P.109 - P.109

 2017年4月より新専門医制度が始まろうとしています.しかしながら,多くの医師,初期研修医,医療関係者,さらに一般の市民には,新専門医制度が始まること,また,それは何を目指しているのか,何か変わるのか変わらないのか,理解されていないのが現状ではないでしょうか.2004年(平成16年)に新医師臨床研修制度(いわゆる初期研修制度)の必修化が開始されたとき,さまざまな問題点や本来目指した目的とは異なる方向への副作用,特に地域医療の崩壊を招きました.新専門医制度も現状の専門医制度における問題点を改革すべく,設計されてきたものと思われます.しかし,制度施行まで約1年となり,新制度での専門研修プログラムのもと研修を受ける医師は,2015年度に初期研修を開始した研修医でありますが,その概要を熟知した初期研修医,医療現場で実際に指導を行う指導医はいまだ限られているように感じます.

 今回の専門医制度改革は,2013年厚生労働省「専門医の在り方に関する検討会」の最終報告が出されて以来,「日本専門医制評価・認定機構」が中心となって,「質の高い専門医育成」を掲げ制度設計が議論され,その後,2014年に「日本専門医機構」が設立され,2017年には新制度が開始されることとなりました.これまでの専門医制度では以下のことが問題とされました.各学会が独自で制度設計をして専門医を認定しおり,「一定の外形基準を有する学会」が認定する専門医の広告が可能となったことで(平成14年厚生労働省公示),学会専門医制度が乱立し,専門医の質の低下への懸念が生じています.また,患者さんに“専門医”が必ずしも理解されておらず,受診の指標になっていません.さらに専門医を取得した医師に特別なインセンティブはありません.これらの問題を解決すべく,専門医の質を担保し,患者に信頼され,受診のよい指針になり,専門医が「公の資格」として,国民に広く認知されて評価され,「プロフェッショナル集団としての医師」が誇りと責任を持ち,患者の視点に立ち自律的に運営することが基本理念とされています.これらの理念を具体化する専門医制度改革は,非常に重要ですがこれまで取り組まれて来なかったものであり,高く評価すべきと思います.

誌上シンポジウム MISの功罪

緒言 フリーアクセス

著者: 土屋弘行

ページ範囲:P.110 - P.110

 「Big surgeon, big incision」という言葉を外科医であれば誰もが一度は耳にしたことがあるであろう.訳するまでもなく「偉大なる医師は大きな皮膚切開のもとで手術を行う」という意味だ.誰もが駆け出しの頃は「下手なうちは大きく切って,しっかり視野を確保して手術しろ!」と指導されたはずで,それはもちろん現在でも全世代に共通する医学的教訓である.しかしながら,時代の流れとともに患者も医者も欲張りになってきて,正確に目的を達するために他の部位の多少の侵襲は目をつぶるというかつてのやり方では満足されなくなってきた.正確に目的を達し,なおかつ侵襲も可能な限り少なくしたいというのが現代医療のトレンドだ.そのような時代の流れのなかで「MIS:minimally invasive surgery」という言葉がすっかり定着した.

 MISとはその名の通り最小侵襲手術であるが,人工関節などの手術では傷も小さく回復も早い,素晴らしい手術であるといった美辞麗句がマスコミやインターネットで取り上げられている.しかしながら,侵襲を少なくし組織温存に努めるがゆえに,手術手技が煩雑になり,より技術と経験を求められる,克服すべきラーニングカーブが長い,より医師のストレスが増える,教育向きでない,特殊な機器を要する,などいくつかのデメリットがあるのは否めない.そこで,2000年後半以降からの日本におけるMISの変遷と進歩,反省,展望をまとめるべく「MISの功罪」という特集を企画させていただいた.

人工股関節全置換術におけるMISの功罪

著者: 加畑多文 ,   前田亨 ,   楫野良知 ,   多賀正 ,   長谷川和宏 ,   井上大輔 ,   山本崇史 ,   高木知治 ,   大森隆昭 ,   土屋弘行

ページ範囲:P.111 - P.116

 低侵襲人工股関節全置換術(MIS-THA)と称される手術にもさまざまなものがある.単に皮膚切開長を短くしただけのものもあれば,可能な限り筋腱切離を行わないもの,可能な限り骨の切除量を減らして骨温存するものなどがあげられる.それぞれに対し,メリットとデメリットが存在するが,最も大きなデメリットは,ラーニングカーブの存在であり,それを克服しないと決して低侵襲とはいえない.さらにその低侵襲性が,長期的にみた場合にどれくらいのメリットがあるかは,それぞれの術式で異なる.しかしながら,手術侵襲を少なくするという目的の追究姿勢は重要である.工夫をし,より低侵襲な手術手技を確立していく必要がある.

人工膝関節置換術におけるMISの功罪

著者: 松本知之 ,   高山孝治 ,   黒田良祐 ,   黒坂昌弘

ページ範囲:P.117 - P.122

 Minimally invasive surgery(MIS)の概念が人工膝関節全置換術(TKA)に導入されて10年以上経過し,その適応の是非が論じられてきた.TKAにおいて,正確な骨切り・インプラント設置による下肢アライメントの再現,適切な軟部組織バランスの獲得が良好な術後成績に重要である.MIS-TKAにおいてもこれら2つのessential partが担保可能か否かが議論の中心となっており,真のMIS-TKAであるquadriceps sparing approachは淘汰されることとなった.現時点では無理のない広義のMIS-TKAが主体となっており,その普及・定着のためには従来型TKAを凌駕する優位性を見極める必要がある.

脊椎手術におけるMISの功罪

著者: 中川幸洋

ページ範囲:P.123 - P.131

 脊椎外科における低侵襲脊椎手術(MISS)には,脊椎内視鏡の使用やアプローチを工夫した低侵襲脊椎除圧手術と脊椎固定や制動を目的とした低侵襲脊椎制動術(MISt)に大別される.除圧手術におけるMEDをはじめとした脊椎内視鏡の導入,経皮的椎弓根スクリューシステムの導入,XLIF/OLIFによる側方進入椎体間固定術の導入は脊椎外科の低侵襲治療にパラダイムシフトをもたらした.除圧,固定,矯正,制動といった脊椎手術の主要手技のほとんどにMISで対応できるようになっている.しかし,新たな技術の裏には特有の合併症の存在があり,技術的なlearning curveの克服とともに合併症やその予防策を熟知することは必須である.

手根管症候群に対する関節鏡下手根管開放手術の功罪

著者: 橋詰博行 ,   佐藤亮三

ページ範囲:P.133 - P.137

 当院における日帰り手術では,手根管症候群に対する関節鏡下手根管開放手術が圧倒的に多い.過去10年間に当院で手根管症候群に対して前腕遠位の1つの挿入口から鏡視と屈筋支帯切離の操作が行えるuniversal subcutaneous endoscope(USE)システムにより手術した例は2,016例2,375手で,手術成績は優1,441手(61%),良758手(32%),可97手(4%),不可79手(3%)であった.可・不可の成績不良例176例の内訳は高齢者のGrade 3の例が146手(83%),しびれ・痛みの残存例が19手(11%)であった.局所麻酔下の低侵襲手術で早期社会復帰を可能とする方法と考えるが,術中,術後を通じての疼痛対策が大切である.

骨折治療におけるMISの功罪

著者: 正田悦朗

ページ範囲:P.139 - P.146

 骨折治療における“minimally invasive surgery:MIS”とは,1)軟部組織の侵襲を最小にする,2)骨折部に対してもよけいな侵襲を加えないこと,と考えられる.経皮ピンニング,創外固定,髄内釘固定はMISと考えられるが,プレート固定は,従来,骨折部を大きくあけてきっちりと整復し,しっかりと固定することが利点とされてきた(open reduction internal fixation:ORIF).しかし,プレート固定においてもminimally invasiveの考え方に基づき,軟部組織をできるかぎり温存するbiological platingが実践され,その究極の形として,MIPO(minimum invasive plate osteosynthesis)が行われるようになってきた.この稿「骨折治療におけるMIS」としては,このMIPOを取り上げて記載する.

論述

頚椎症性神経根症に対する本邦のインターネット情報の質について

著者: 重松英樹 ,   岩田栄一朗 ,   奥田哲教 ,   森本安彦 ,   増田佳亮 ,   中井敏幸 ,   田中康仁

ページ範囲:P.147 - P.150

背景:インターネット(以下,ネット)が普及しているが,本邦のネット情報の質に関する評価は十分ではない.

対象と方法:Google,Yahoo,MSNの各検索エンジンで,「頚椎症性神経根症」と打ち込んで検索した.上位20サイトを抽出し,質を評価した.a)学会,大学,b)宣伝,c)医師,病院,d)代替医療者,e)その他に分けて評価した.

結果:a)とc)の医療関係からのサイトで質が高かったが,全体では質の高いサイトの割合は,半数以下であった.

まとめ:ネット上の頚椎症性神経根症の情報の質は低いものが多いが,医師からの情報は質が高い.

手術手技

外側型腰椎椎間板ヘルニアに対する手術法の工夫—部分的椎弓切除を加えた内側からの摘出術

著者: 清水健太郎 ,   上石聡 ,   谷本祐之 ,   石濱寛子 ,   清水国章 ,   吉川寿一

ページ範囲:P.151 - P.156

 外側型腰椎椎間板ヘルニアの摘出は,Love法では困難である.われわれは椎弓切除の範囲を頭側に拡大することで,内側からヘルニア摘出を可能にする術式を考案した.これまで,外側から直接アプローチする術式,椎間関節を一時的に切離する術式,また近年の内視鏡手術などさまざまな方法が報告されてきたが,本術式は,通常の正中アプローチのみで行うことができ,椎間関節を損傷しないなどの利点を有し,選択肢の1つとなりうる方法と考える.

シリコン製ドレーンの新規固定法—伸縮するドレーンは伸縮性テープで固定する

著者: 石部達也 ,   神庭悠介 ,   千束福司 ,   池田登 ,   三河義弘

ページ範囲:P.157 - P.165

背景:糸によるシリコン製ドレーンの固定は閉塞する可能性があるため,ドレーンにテープを貼付し,それを糸で皮膚に縫着する方法を開発および検証した.

対象と方法:①テープ種類,②貼付方法,③テープの伸縮性の関与,④臨床使用結果を調査した.

結果:①マルチポアドライサージカルテープを,②ドレーンの側方から,③伸縮性の高い向きで貼付したところ,④良好な臨床結果であった.

まとめ:伸縮性の高いシリコンドレーンの固定には,伸縮性のあるマルチポアドライサージカルテープが適している.

Lecture

股関節手術におけるコンピュータナビゲーションの応用

著者: 稲葉裕 ,   池裕之 ,   齋藤知行

ページ範囲:P.167 - P.177

はじめに

 われわれ整形外科医が扱う骨・関節・靱帯・筋肉などの運動器は3次元的な構造物であるが,従来,単純X線像の2方向撮影やCTの横断像から3次元構造を想像するという手法が一般的であった.近年ではコンピュータ技術の進歩により画像の3次元構築が容易となり,さまざまな画像情報を用いた3次元的な術前計画や手術支援,そして詳細な術後評価を行うことが可能となった12)

 股関節外科における代表的な手術として人工股関節全置換術(THA)と骨切り術が挙げられるが,THAにおける3次元術前計画,コンピュータ支援技術は,ほぼ確立しているといえる.コンピュータソフトウェアを用いた3次元術前計画では,日常生活動作で必要な股関節可動域の中でインプラントインピンジメントが生じにくいような最適なインプラント設置角の計画や,脚長やオフセットの3次元的な補正量の計画が可能である.そして術中支援としてコンピュータナビゲーションを使用することにより,術前計画を正確に遂行することが可能である9,15).股関節骨切り術には,骨盤骨切り術,大腿骨骨切り術があり,どちらも詳細な術前計画と高度な手術手技が要求される20).骨切り術では,骨切り部位の計画や骨切り位置の術中確認にコンピュータ支援技術は有用であるが,まだ開発段階であり,THAに対するコンピュータ支援技術ほど普及していない.

 われわれはTHAとともに股関節骨切り術においてコンピュータ支援技術を用いて3次元的な術前計画を行い,その術前計画の実施においてCT-basedコンピュータナビゲーションを使用している.本稿では,当科で行っているコンピュータナビゲーションを使用したTHA,股関節骨切り術の実際を紹介し,今後の展望について論述する.

連載 東アフリカ見聞録・2

国立マケレレ大学ムラゴ病院

著者: 馬場久敏

ページ範囲:P.178 - P.179

 ウガンダ共和国は1962年に英国から独立した.この時期には多くのアフリカ諸国が英国やフランス,ベルギー王国,ポルトガルなどから独立し,アフリカン・パワーが爆発した時期である.12世紀から13世紀にかけて現在のカメルーンあたりに興ったバンツー系民族は徐々に東方移動を開始し,15〜16世紀にはビクトリア湖北部地方でナイル系部族(ルオ族など)や少数のアラブ系,スーダン系とともに連携し,いつしかそれらの部族は王制を整えていった.17世紀には現在の首都カンパラを中心とする最強の部族国家であるブガンダ王国が台頭して王国国家連邦を形成していたが,1864年にビクトリア朝イングランドの保護領となった.ビクトリア女王の孫にあたるドイツ皇帝ウイルヘルムⅡ世は,女王から湖南地方(現在のタンザニア)を分けてもらう.18世紀まで文字をもたなかったウガンダ部族連邦は,ブガンダ王制でイングランドから急速に文政や産業,軍政を整備していった.

 医学でもメンゲ医学校やムラゴ療養所を整備・発展させ,1922年には国立マケレレ大学を創立,ムラゴ療養所を大学病院とする医学部を創部した.大学は現在22学部,12研究所,学生数6万人を擁するアフリカ有数の大学となっている.医学部は保健系と併せて1学年300名が学び,白人や東洋系学生も多く在学している.大学病院ムラゴ病院(図1)は病床約3,000床,43診療科で構成され,欧米支援のがん・感染症などの研究所7施設を併設する.整形外科は独立した建物で活動し,部長以下常勤医15名,レジデント約10名で活動し,年間手術件数は約1,300件である.手術は毎日あり,整形外科とsub-divisionの外傷科を便宜上分けている(図2).

最新基礎科学/知っておきたい

個体レベルのシステム生物学

著者: 張千惠 ,   洲﨑悦生 ,   上田泰己

ページ範囲:P.180 - P.183

システム生物学とは

 システム生物学とは,生命をシステムとして理解することを目的とした学問である1,2,3).「システム」とは,定義された目的を達成するために秩序立って組み合わされた複数の要素の集合体である.例えば,車のエンジンが燃料からピストンの動力を得てタイヤを回すことができるのは,さまざまな部品が組み合わさり,定義された動的出力(ダイナミクス)を達成するよう駆動するシステムだからである.同じように,システム生物学では,生物を構成する要素とそれらの相互作用を包括的に調べることにより,システム論的にどのようにして生命が成り立ち機能しているのかを理解しようと試みる.

 システム生物学における研究の具体的なプロセスを説明する.まずはじめに(1)システム構成要素とそのつながり(相互作用)を包括的に同定する(同定).次に(2)システムのふるまいを知るために,システムのダイナミクスを正確に測定する(解析).そして(3)システムのダイナミクスがどのようなプロパティで動いているのか仮説を立て,摂動をかけた時に予測通りになるか検証する(摂動).最後に(4)人工的に一からシステムを再構成し,同じ挙動を示すかを確かめることで理解を完全にする(合成).これらのプロセスは実際に哺乳類の時計遺伝子ネットワークの研究4)などで用いられており,哺乳類の概日時計遺伝子ネットワークをシステムとして理解することに貢献した.

臨床経験

腰部脊柱管狭窄症に対する顕微鏡視下椎弓切除術後の入院期間の調査—入院期間延長の原因と短縮への取り組み

著者: 串田剛俊 ,   池浦淳 ,   足立崇 ,   飯田寛和

ページ範囲:P.185 - P.190

 腰部脊柱管狭窄症に対して顕微鏡視下椎弓切除術を行った382例の入院期間について検討した.

 平均入院期間は17.6日であったが,そのうち入院期間17日以内が72%,18〜30日が23%,31日以上が5%であった.入院期間18日以上の症例うち,転院群の「術後7日目以内の歩行器歩行自立」の割合が自宅退院群に比べ有意に低かった.

 よって,術後7日目の歩行能力を参考に転院を考慮する必要があると考えられた.また,合併症20例の平均入院期間が47.6日と長期間となるため,回復期病院などでの機能訓練の必要性についても術前に説明する必要があると考えられた.

下肢静脈エコー/造影CTを用いた人工膝関節置換術後の血栓症精査

著者: 佐藤敦 ,   高木博 ,   浅井聡司 ,   加藤慎 ,   古屋貴之 ,   前川勝彦 ,   川島史義 ,   中田規之

ページ範囲:P.191 - P.196

背景:人工膝関節置換術(TKA)術後の深部静脈血栓症(DVT)と肺血栓塞栓症(PE)はいまだ重大な合併症である.本研究の目的はTKA術後の詳細な血栓症発生頻度を精査することである.

対象と方法:対象は初回TKA34例とし,術後4日目に下肢静脈エコーと造影CTを用いてDVT,PEの精査を行った.

結果:DVT/PEの発生率は20例(58.8%),無症候性PEは5例(14.7%)に認めた.両側TKAと片側TKAの比較検討では,両群間で発生率に有意差は認めなかった.

結語:無症候性PEの発生率は比較的高く,造影CTでのPE精査は有効であると考えられた.

症例報告

Diffuse Idiopathic Skeletal Hyperostosisに伴った脊椎損傷に対するMIS-Long Fixation

著者: 森下緑 ,   岡田英次朗 ,   伊藤修平 ,   矢吹有里 ,   小見山貴継 ,   中山新太郎 ,   亀山真 ,   手塚正樹 ,   柳本繁

ページ範囲:P.197 - P.201

 Diffuse idiopathic skeletal hyperostosis(以下,DISH)は骨性強直のため軽微な外傷で脊椎損傷をきたす.本損傷に対する治療法として早期の脊椎固定術が推奨されているが,高齢者や合併症を有する患者が多く,より低侵襲な方法が望ましい.

 本損傷4例に対してMIS-long fixationを行い,良好な成績を得た.Minimally invasive spine(MIS)-long fixationは本損傷に対して有効な選択肢となり得るが,術中・術後の合併症に対する注意が必要である.

橈尺骨骨折術中の頻脈によりバセドウ病の診断がついた骨粗鬆症の1例

著者: 木下斎 ,   金澤武利 ,   白濱正博 ,   境野昌範 ,   広松聖夫 ,   樋口富士男 ,   志波直人

ページ範囲:P.203 - P.207

 症例は,道路を歩行中に石につまづき右手を突いて橈尺骨骨幹部骨折を受傷した26歳の女性である.麻酔科医が指摘した術前および手術中の頻脈の原因精査がバセドウ病の診断に結びついた.術後の骨密度測定で骨粗鬆症と判明し,リセドロネート製剤と活性型ビタミンD3製剤の投与を開始した.バセドウ病の治療開始から5年が経過し,甲状腺機能が正常化した後も骨密度の減少は持続していた.軽微な外傷で発症した若年者の骨折の際には病歴聴取に留意すること,また,本骨粗鬆症に対するリセドロネート製剤の治療成績は必ずしも良好とはいえないことが示唆された.

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.107 - P.107

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.209 - P.209

あとがき フリーアクセス

著者: 高岸憲二

ページ範囲:P.212 - P.212

 毎年恒例の世相を表す漢字「今年の漢字®」は,日本漢字能力検定協会による全国公募により決定しますが,2015年の第1位は「安」となりました.

 応募者が「安」を選んだ理由としては,1)安全保障関連法案の採否をめぐって国論が二分し,採決に国民の関心が非常に高まったこと,2)イスラム過激派組織による邦人人質事件やパリで起きた同時多発テロ,地球規模の異常気象により日本のみならず世界各地で災害多発したこと,3)建築偽装問題,海外自動車メーカーの排ガス規制違反やワクチン製造にかかる不正などが発覚し,暮らしの「安」全が揺らいだことによると報道されています.医療においても「安」全性が注目されました.本年が平和で「安」心できる年になりますように祈願しています.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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