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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科51巻2号

2016年02月発行

文献概要

最新基礎科学/知っておきたい

個体レベルのシステム生物学

著者: 張千惠1 洲﨑悦生1 上田泰己1

所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻薬理学講座システムズ薬理学教室

ページ範囲:P.180 - P.183

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システム生物学とは

 システム生物学とは,生命をシステムとして理解することを目的とした学問である1,2,3).「システム」とは,定義された目的を達成するために秩序立って組み合わされた複数の要素の集合体である.例えば,車のエンジンが燃料からピストンの動力を得てタイヤを回すことができるのは,さまざまな部品が組み合わさり,定義された動的出力(ダイナミクス)を達成するよう駆動するシステムだからである.同じように,システム生物学では,生物を構成する要素とそれらの相互作用を包括的に調べることにより,システム論的にどのようにして生命が成り立ち機能しているのかを理解しようと試みる.

 システム生物学における研究の具体的なプロセスを説明する.まずはじめに(1)システム構成要素とそのつながり(相互作用)を包括的に同定する(同定).次に(2)システムのふるまいを知るために,システムのダイナミクスを正確に測定する(解析).そして(3)システムのダイナミクスがどのようなプロパティで動いているのか仮説を立て,摂動をかけた時に予測通りになるか検証する(摂動).最後に(4)人工的に一からシステムを再構成し,同じ挙動を示すかを確かめることで理解を完全にする(合成).これらのプロセスは実際に哺乳類の時計遺伝子ネットワークの研究4)などで用いられており,哺乳類の概日時計遺伝子ネットワークをシステムとして理解することに貢献した.

参考文献

1 )Kitano H:Systems biology:A brief overview. Science 295:1662-1664, 2002
2 )Kitano H:Computational systems biology. Nature 420:206-210, 2002
3 )北野宏明:システムバイオロジー.生命をシステムとして理解する.秀潤社,2001
4 )Ukai H, Ueda HR:Systems biology of mammalian circadian clocks. Annu Rev Physiol 72:579-603, 2010
5 )Spalteholz W:Über das Durchsichtigmachen von menschlichen und tierischen Präparaten und seine theoretischen Bedingungen, nebst Anhang:Über Knochenfärbung. Leipzig, S. Hierzel, 1914
6 )Hama H, Kurosawa H, Kawano H, et al:Scale:a chemical approach for fluorescence imaging and reconstruction of transparent mouse brain. Nat Neurosci 14:1481-1488, 2011
7 )Susaki A, Tainaka K, Perrin D, et al:Whole-brain imaging with single-cell resolution using chemical cocktails and computational analysis. Cell 157:726-739, 2014
8 )Tainaka K, Kubota SI, Suyama TQ, et al:Whole-body imaging with single-cell resolution by tissue decolorization. Cell 159:911-924, 2014
9 )Wang H, Yang H, Schivalia CS, et al:One-step generation of mice carrying mutations in multiple genes by CRISPR/Cas-mediated genome engineering. Cell 153:910-918, 2013
10 )Poueymirou WT, Auerbach W, Frendewey D, et al:F0 generation mice fully derived from gene-targeted embryonic stem cells allowing immediate phenotypic analyses. Nat Biotechnol 25-1:91-99, 2007
11 )Ying QL, Wray J, Nicholas J, et al:The ground state of embryonic stem cell self-renewal. Nature 453:519-523, 2008
12 )Kiyonari H, Kaneko M, Abe S, et al:Three inhibitors of FGF receptor, ERK, and GSK3 establishes germline-competent embryonic stem cells of C57BL/6N mouse strain with high efficiency and stability. Genesis 48:317-327, 2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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