臨床整形外科51巻5号

2016年05月発行

誌上シンポジウム 整形外科と慢性腎不全

慢性腎不全患者における手根管症候群とばね指のDay Surgery

著者： 岳原吾一¹

所属機関： ¹那覇市立病院整形外科

ページ範囲：P.437 - P.442

　糖尿病性腎症に由来する透析患者は毎年増加しており，これに関連する手外科領域の代表的疾患として手根管症候群やばね指がある．透析患者の手根管症候群の特徴として，透析時の強い痛みの他に長期透析でアミロイド蛋白の沈着による屈筋腱腱鞘滑膜炎を伴い手指の著明な可動制限を来す例がある．その場合，単純な手根管開放術では改善せず，滑膜切除術の追加や症例によっては肥厚した屈筋腱に対して腱縮小術や浅指屈筋腱抜去術を行う．

　一方，ばね指はトリガリングや痛みが改善すれば患者満足度は高いため，通常の直視下腱鞘切開術の他に，外来処置室で可能な18G針を用いた経皮的腱鞘切開術も簡便で有用な方法である．長期透析例で腱の肥厚に伴い著しく手指の可動性が悪い場合には，先に述べた浅指屈筋腱抜去術を要する例もある．

参考文献

1) 日本透析医学会ホームページwww.jsdt.or.jp(2016年3月29日アクセス)

2) 喜多島　出，山本精三，中道健一・他，長期透析患者の再発手根管症候群に対する浅指屈筋腱抜去術の長期成績．日手会誌2014；31：268-70．

3) 蔡　栄美．糖尿病患者における弾発指に対するステロイド腱鞘内注射後の血糖値の変動について．日手会誌2013；29：790-3．

4) 峯　博子，鶴田俊幸．A2 pulleyを完全切離した指腱鞘炎の長期成績．日手会誌2014；30：552-6．

5) 亀山　真：ばね指の手術法解説．観血的腱鞘切開術．整形外科surgical technique 4：大阪，MCメディカ出版，2014，p.48-51．

6) Nagoshi M, Hashizume H, Nishida K, et al. Percutaneous release for trigger finger in idiopathic and hemodialysis patients. Acta Medica Okayama 1997;51:155-8.

7) 今井　亮，小野利彦，岩元則幸．手背部の透析アミロイドーシスの病態と治療．手伸筋腱狭窄性腱鞘炎．透析会誌2013；46：379-88．