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連載 東アフリカ見聞録・8
黄昏に浮かぶ大地溝帯(West Great Rift Valley in the Twilight)
著者: 馬場久敏12
所属機関: 1福井大学医学部器官制御医学講座整形外科学領域 2
ページ範囲:P.740 - P.743
文献購入ページに移動東部大地溝帯の麓,ケニアとの国境にあるムバーレ県は人口約50万人で,その県都ムバーレ(Mbare・人口は約9万人)はウガンダ東部の要衝で,トロロの大水田地帯を北上し,エルゴン山国立公園の裾野に位置する小さな町だ.巡礼の聖地であるエルゴン山は標高4,900mで,東部大地溝帯にありケニアとの国境をなしている.この地に住む人びとは,本来は遊牧民であるエチオピア系のエルゲヨ族が多く,他にマサイ族やスーダン系ルオ族が住んでおり,そのうちマサイ族ははるかタンザニア南部にまで居住地を拡散させた.地元のエルゲヨ族の言葉はカンパラのガンダ族には通じにくいという.首都カンパラのガンダ族は,都会の主要部族とはいえ,全人口の約20%しかいないのだ.ウガンダは正式に登録されているだけで52部族もある国家である.実はこのことが19世紀以来,度々起こっている部族紛争(戦争・内戦)の原因の一部にもなっている.戦いの原因は牛や羊の盗難,農耕地や牧草地の奪い合いや水資源などである.エルゴン山系はインド洋からの湿った大気が大量の雨をもたらす.西のルウェンゾリ山系とともに,この地は進化生物学では極めて熱い注目を浴びている土地でもある.
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