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症例報告
両側同時発生の上腕骨近位端骨折患者において,振り子運動可能な肩装具が手術後の固定とリハビリテーションに有用であった1例
著者: 中光紳一1 永淵慎一郎1 牛島正博1 中野浩志2 坂井伸朗3
所属機関: 1三萩野病院整形外科 2三萩野病院リハビリテーション部 3九州工業大学先端機能システム工学
ページ範囲:P.763 - P.768
文献購入ページに移動症例は75歳女性で,夜間にトイレに行こうとして布団から立ち上がった際につまずき,壁に顔から激突し転倒した.左右とも外科頚・大結節・小結節に骨折線の入る粉砕骨折で,AO骨折分類の11-B1.1であった.両側とも髄内釘固定術を行った.術後の固定肢位は,肩では生理的基本位(屈曲0°・外転0°・内旋30°),肘は90°屈曲位とした.この体位に合わせたクロスしたストラップを持つ装具を考案した.手術翌日から装着し,食事や読書など,自由な手の使用を許可した.ストラップで肩から肘・前腕を吊るし,座位や立位姿勢で前後方向に振り子運動を行わせた.手術後の手の機能制限は少なく,装具は快適で装着性はよかった.術後8週目で,肩関節にはほとんど疼痛なく,自動で屈曲170°以上の挙上が可能となった.この装具は,上肢に対して適度の固定性と軽度の運動性を持つために,患者にとって術後の他動的可動域訓練の早期導入と快適な生活が可能であったと考える.
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