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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科52巻11号

2017年11月発行

文献概要

視座

報道と現実

著者: 松峯昭彦1

所属機関: 1福井大学医学部整形外科学教室

ページ範囲:P.1023 - P.1023

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 先日,熊本を訪問する機会があった.宿泊のホテルが熊本城のすぐ近くだったため,タクシーの運転手さんにお願いして,熊本城に立ち寄ってみた.平成28年4月の熊本地震での熊本城天守の石垣(清正流:通称武者返し)の状況をぜひこの目で見てみたいと思ったからである.行って大変驚いた.熊本城は,私が想像していたよりはるかに大きな被害を受けているのである.天守の石垣の一部が損壊しているのはテレビの報道番組でみたとおりだが,損壊は天守だけでなく,城内の石垣という石垣が,広範囲に崩壊しているのである.城内の広場では崩れた石垣が番号をつけられ,整然と整理されているが,現状では再建にはほど遠い状況.崩壊しているのは石垣ばかりではない.現存している上級武家屋敷として有数の歴史的価値がある旧細川刑部邸の立派な外塀は,大きく傾き倒壊したままである.立ち入り禁止になっているため,内部の状況をうかがい知ることはできなかったが,大きな被害を受けているようである.

 テレビニュースは,“武者返し”として有名な天守の石垣の崩壊ばかり報道していたように記憶する.崩壊した石垣上で何とか姿を保っている天守をバックに現地の報道担当者がレポートしている様子や,ヘリコプターからの空撮で天守とその下の石垣を映し出しているのを,皆さんも何度も見たのではないだろうか.もちろん,天守の石垣は,今回,熊本城が受けた被害として象徴的なものではあるが,実際はそれ以上の広範な被害を受けているのである.熊本城一帯は重要文化財,特別史跡に指定されている.国民の重要な歴史的財産の被害の全貌が十分に伝わっていなかったのではないかと思った.また,現在の修復状況も十分に伝わっているとはとうてい思えない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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