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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科52巻2号

2017年02月発行

雑誌目次

視座

勝利の女神は細部に宿る

著者: 黒田良祐

ページ範囲:P.111 - P.111

 勝負の鉄則にはいろいろな言葉,名言がありますが,その中で私たち整形外科医にも共感できると感じる勝利の鉄則があります.それが「勝利の女神は細部に宿る」です.これはビジネスの世界でもよく使われる言葉のようです.プロ野球の大谷翔平選手もこの言葉を座右の銘にしています.私も大切にしている言葉の1つです.

 集団で生産的な仕事をするには何が大切か? 神戸大学整形外科分野の教授に就任してからよくこのことを考えます.まず何よりも大切なのは個の力.サッカーの本田圭佑選手もよく言っています.個々がしっかり「hard work」すること.さらに医療のスキルやコミュニケーションのスキルなどを身につけ,単なるhard workではなく「do my best」でなければなりません.しかし,この「best」が難しいのです.自分にとって心地よいことが,自分にとって満足なことが,必ずしもよい結果を生むとは限りません.やはり結果が大切であり,結果にこだわってbestを尽くす,ということになります.

誌上シンポジウム リバース型人工肩関節手術でわかったこと

緒言 フリーアクセス

著者: 高岸憲二

ページ範囲:P.112 - P.112

 平成26年(2014年)4月から本邦で使用が許可されたリバース型人工肩関節(RSA)は,関節側のコンポーネントが凸で,上腕骨側のコンポーネントが凹の構造をしており,腱板機能が喪失した肩関節であっても挙上が可能である.バイオメカニカルな見地からみた本人工関節の特徴として,半拘束型であることによる求心性の獲得ならびに骨頭回転中心が内方化され,三角筋の筋長が増加することによる外転筋力の増強が挙げられる.

 この誌上シンポジウムでは,RSAを数多く経験している肩関節外科医の先生方に執筆をお願いした.玉井和哉先生はRSAの適応とされている腱板断裂性関節症,広範囲腱板断裂,リウマチ肩,上腕骨近位端3パート,4パート骨折などの病態について,RSAに代わり得る治療法を検討していただいた.櫻井真先生は手術時には三角筋を損傷しないことおよび適切な位置にグレノスフィアを設置することが重要であり,後療法として人工関節を脱臼させないこと,修復した肩甲下筋腱が癒合するまでは愛護的に扱うこと,肩関節の可動域・機能を改善・維持させるため三角筋や肩甲骨周囲筋群の強化訓練が重要と述べておられる.水野直子先生は日本で行われた最初の65例の術後6カ月以内の早期合併症を調べ,発生率は6.2%であったことを報告されている.菅谷啓之先生,山門浩太郎先生,橋口宏先生はそれぞれ現在日本で使用されている3機種のRSA,AequalisTM Reversed Shoulder,SMRリバース型人工肩関節,Trabecular Metal Reverse Shoulder System, についてその特徴などについて報告されている.

肩関節機能再建におけるリバース型人工肩関節の位置づけ

著者: 玉井和哉 ,   吉川勝久 ,   富沢一生 ,   山口雄史

ページ範囲:P.113 - P.118

 リバース型人工肩関節(RSA)の適応とされている病態について,RSAに代わり得る治療法を検討した.偽性麻痺を伴う腱板断裂関節症はRSAの最もよい適応であるが,これに代わり得る術式として,小径人工骨頭置換術と肩甲下筋腱移行術の組み合わせがある.偽性麻痺を伴う広範囲腱板断裂においてRSAに代わり得る術式は,自家大腿筋膜を用いる上方関節包再建術である.関節リウマチでは,腱板が不良であっても解剖学的人工肩関節(TSA)を考慮する余地がある.高齢者の3パート,4パート骨折新鮮例に対して一次的にRSAが行われる傾向があるが,重要なポイントを押さえれば人工骨頭置換術で良好な成績が得られる可能性がある.

手術時ならびに後療法のコツ

著者: 櫻井真 ,   柴田陽三

ページ範囲:P.119 - P.124

 本稿ではリバース型人工肩関節置換術(RSA)の手術時ならびに後療法のコツについて述べる.RSAは従来の解剖学的な人工肩関節とは異なり,肩甲骨関節窩側に骨頭コンポーネントが,上腕骨側にソケットが設置される.RSA術後の関節安定性や挙上能力は三角筋に依存しているため,三角筋を損傷しないこと,適切な位置にグレノスフェアを設置することが重要である.術後の後療法は,脱臼を生じさせないこと,修復した肩甲下筋腱が癒合するまでは愛護的に扱うこと,肩関節の可動域・機能を改善・維持させるため三角筋や肩甲骨周囲筋群の強化訓練が重要となる.

AequalisTM Reversed Shoulder

著者: 菅谷啓之

ページ範囲:P.125 - P.131

AequalisTM Reversed Shoulderシステムの術後1年時における短期成績について報告する.上腕骨近位端骨折,骨折続発症に対しては上方アプローチを,その他の疾患に対しては前方アプローチを用いた.術後1年の成績は概ね満足いくものであったが,術前の可動域のよい腱板系の疾患のほうが,また女性より男性のほうが成績のよい傾向がみられた.

SMRリバース型人工肩関節—SMRモジュラーショルダーシステム

著者: 山門浩太郎

ページ範囲:P.133 - P.138

 SMRモジュラーショルダーシステムは,可変性(convertibility),術中の融通性(intraoperative flexibility),アナトミック型からリバース型までを広くカバーする展開性(wide platform)を特徴とする人工肩関節システムである.モジュラリティの向上は人工肩関節設計のトレンドであるが,SMRシステムは上腕骨側におけるモジュラーインプラントの先駆けであり,関節窩側においてはアナトミック型との可変性を有する唯一のリバース型人工肩関節である.本稿では,SMRシステムの特徴と使用における注意点について概説する.

Trabecular Metal Reverse Shoulder System

著者: 橋口宏

ページ範囲:P.141 - P.146

 リバース型人工肩関節置換術は良好な術後成績獲得が困難であった腱板断裂性関節症,一次修復不能な腱板広範囲断裂,高齢者の上腕骨近位部粉砕骨折・脱臼骨折に対して安定した機能改善が得られる手術方法である.Trabecular Metal Reverse Shoulderは独特なポーラスコーティングによりインプラントの良好な生物学的固定性が得られ,ベースプレートの構造的にも関節窩骨移植が容易である.上腕骨外側化とベースプレートのオフセットによって良好な術後可動域の獲得が期待できる有用なシステムである.

本邦における術後早期合併症

著者: 水野直子

ページ範囲:P.147 - P.152

 リバース型人工肩関節(RSA)が2014年4月から本邦で使用可能となった.その術中・術後早期の合併症について調査した.対象は2014年4月〜7月にRSAを施行された65肩である.平均年齢は76.1歳,平均経過観察期間は6カ月であった.病態は腱板断裂性関節症28肩,腱板広範囲断裂16肩,骨折後後遺症6肩,変形性肩関節症が5肩,新鮮骨折が5肩,関節リウマチが3肩,人工骨頭置換術後再置換術が2肩であった.術中合併症として,関節窩の骨折を1肩に認めた.術後早期合併症は,肩峰骨折,肩甲棘骨折,下方不安定症,感染をそれぞれ1肩に認め,発生率は6.2%であった.

最新基礎科学/知っておきたい

がんの骨転移イメージング

著者: 三輪真嗣

ページ範囲:P.156 - P.161

はじめに

 骨は悪性腫瘍の転移臓器として頻度が高く,骨転移は病的骨折,疼痛,脊髄圧迫による神経症状,高カルシウム血症などさまざまな問題を生じ,患者のQOLを著しく低下させる.血液やリンパの流れにより癌細胞は体内のあらゆる臓器に到達が可能であるが,転移巣が形成されるのは到達した癌細胞のうちのごくわずかである.1889年にPaget1)は,癌転移巣の形成が癌細胞と標的臓器の環境によって成立するという,「seed and soil theory」を提唱した.乳癌,前立腺癌は骨転移の頻度が高く,そのことは骨髄環境が乳癌細胞,前立腺癌細胞の生着,増殖,進展に適していることを示唆する.転移病変を形成するためには,癌細胞が原発巣から遊走して循環系に進入し(intravasation),循環系で生存,標的臓器に到達し,脈管から抜け出して(extravasation)標的臓器で増殖するといった多くの過程を要する2).癌の骨転移が進行するには破骨細胞を介した骨吸収が必要であり,腫瘍細胞はPTHrP,IL-8,TGF-β,RANKLなどさまざまな因子を介して破骨細胞を分化・成熟させることが知られており,これまでの基礎研究はゾレドロネートやデノスマブなど近年の骨転移治療の進歩に大きく貢献している.

 がん研究において蛍光イメージングは有用な技術であり,その最も大きな利点は「生体内での腫瘍の可視化」にある.蛍光イメージング以外の方法で腫瘍を観察するためには,マウスを安楽死させ,組織を摘出し,固定したのちに染色する必要がある.この方法で観察した場合,観察時の変化が後にどのような変化をもたらすかを知ることは不可能である.一方,蛍光標識した腫瘍細胞を蛍光イメージング装置で観察すると,腫瘍の増殖や進展,治療効果を非侵襲的かつ継時的に観察することができる3,4).これまでにわれわれは緑色蛍光蛋白(green fluorescent protein:GFP),赤色蛍光蛋白(red fluorescent protein:RFP)を用いることにより,悪性腫瘍の肺転移,リンパ節転移,肺転移,骨転移を生体内で観察する手法を確立してきた5-13).転移臓器の中でも,骨髄は硬い皮質骨に覆われているため,骨転移の初期の変化を観察することが極めて困難である.しかし,近年のレーザー顕微鏡の進歩により,皮質を破壊せずに生体内で骨髄を観察することができるようになってきた14).本稿では,蛍光イメージング技術を用いた骨転移巣の観察について紹介する.

境界領域/知っておきたい

炭酸ガス経皮吸収を用いたリハビリテーション

著者: 酒井良忠

ページ範囲:P.162 - P.165

はじめに

 炭酸ガス(二酸化炭素,CO2)を経皮吸収させることにより,局所への効果を期待する治療法は,古くはヨーロッパにおける炭酸泉治療から始まっている1).この効果については,炭酸ガスによる血管拡張,血流増加作用を中心としており,さらには組織内の炭酸ガス濃度増加によるBohr効果により,赤血球中のヘモグロビンの酸素解離を促進し,組織への酸素供給を促進させることによると推察されてきた.近年では,炭酸ガスを経皮吸収させる方法として,中空糸膜を用いた人工炭酸泉が開発され,間欠性跛行などの血流障害の適応が報告されている2-4).また,ヨーロッパでは天然炭酸泉由来ガス浴が間欠性跛行やレイノー症状に有効とする報告がある5,6).また,炭酸ガスを皮下注射し,皮下脂肪の減少を図る治療も報告されている7,8).ただし,これらの治療は,人工炭酸泉では装置が高価であり,また炭酸泉内の炭酸ガス濃度はその量に限界(1,000ppm)があることや,入浴,足浴などの手間がかかること,天然炭酸泉ガスはそのガス自体の入手が困難であること,さらに,炭酸ガスの皮下注射は手技が煩雑で,感染リスクなども懸念されるなどが挙げられる.その結果,あまり多くの医療機関で利用されているとは言いがたい.

 この問題点を解決するために,われわれは,ネオケミア株式会社と共同で,新たな高濃度炭酸ガス経皮吸収システムの開発と研究を行ってきた.これは炭酸ガス経皮吸収促進剤(ハイドロゲル)を皮膚に塗布し,その上をビニール製の袋で覆うことで密閉し,そこに純炭酸ガスを送気して経皮吸収させるものである.(国際特許公開番号WO2004/002393).このシステムを用い,ハイドロゲルによる炭酸ガスの皮膚透過性の促進効果と,このシステムで炭酸ガス経皮吸収を行うと,施行した局所において,血管拡張,血流増加のみならず,生体内のpHが低下し,赤血球のヘモグロビンの酸素解離を促進し,人工Bohr効果をもたらすことを証明した9).当システムは,以前から推察されていた炭酸ガス経皮吸収の薬理効果の原理を,科学的に証明できている唯一の炭酸ガス経皮吸収手法であると考えられる.

連載 慢性疼痛の治療戦略 治療法確立を目指して・5

NSAIDsの位置付けと使い方

著者: 園畑素樹 ,   馬渡正明

ページ範囲:P.166 - P.168

はじめに

 非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)は鎮痛薬として広く用いられてきた.生薬のNSAIDsは紀元前にさかのぼるとされているが,商品としてのNSAIDsの発売は1899年のアスピリン®(アセチルサリチル酸)が初めてである.NSAIDsの主な作用機序は,炎症,疼痛,発熱の原因の1つであるプロスタグランジンの合成を抑制することにある.炎症部位でのプロスタグランジンは,アラキドン酸カスケードの産物であるが,NSAIDsはアラキドン酸カスケードの律速段階の酵素であるシクロオキシナーゼ(cyclooxynase:COX)を阻害する.COXにはそのアイソザイムとしてCOX-1,COX-2が存在し,消炎鎮痛にはCOX-2により合成されたプロスタグランジンが関与し,COX-1によって合成されるプロスタグランジンは胃・十二指腸粘膜の保護,トロンボキサンは血小板機能のサポートをしている.そのため,COX-2選択的阻害薬がより胃粘膜障害が少ないとされているが,心血管イベントのリスクを高めるとの指摘もある1)

 NSAIDsの鎮痛薬としての有効性はよく知られているが,近年,その副作用についても注目されるようになってきた.特に,運動器の慢性疼痛を抱える患者の多くは高齢者であり,予備能の低下により副作用が重篤化しやすい点が問題である.NSAIDsの位置付けと使い方について,各種ガイドラインを参考に概説する.

「勘違い」から始める臨床研究—研究の旅で遭難しないために・14

その結果からその結論は言えるのか?(前編)

著者: 福原俊一 ,   福間真悟

ページ範囲:P.169 - P.172

 前回は,実際の研究例を題材に,とくに「QOL」,「結果の解釈」をキーワードに解説しました.今回も引き続き,実際の抄録を題材に,抄録の質を評価する「5つのチェックポイント」を用いて,揉んでみたいと思います.この「5つのチェックポイント」を用いることによって,抄録の質を適切に評価することができるとともに,その抄録をよりよいものに改善することもできます.

臨床経験

腰椎手術後の髄液漏に対する静脈血注入療法

著者: 石元優々 ,   川上守 ,   長田圭司 ,   松岡淑子 ,   谷川聖子

ページ範囲:P.173 - P.177

背景:腰椎手術後の合併症の1つである髄液漏については現在に至るまで定まった処置がなく,各施設や個々の外科医の経験に基づいて処置がなされているのが現状である.

対象と方法:われわれは,当センターで腰椎手術後に生じた6例の髄液漏に対し,ドレーン孔からの静脈血注入療法を行った.

結果:全例において処置の翌日には髄液漏はおさまり,歩行可能となった.

まとめ:静脈血注入療法は髄液漏に対する新しい簡便な処置であり,術後髄液漏に遭遇した場合にまず試すべき処置であると考える.

化膿性膝関節炎に対するオープンドレナージ法を併用した鏡視下滑膜切除の治療成績

著者: 山裏耕平 ,   三谷誠 ,   藤林功 ,   森裕之 ,   尾﨑琢磨

ページ範囲:P.179 - P.183

背景:化膿性膝関節炎は不可逆性の関節機能障害を来し得るため,早期治療が重要である.

方法:2006年2月〜2014年1月に手術を施行した13例15膝を対象とし,オープンドレナージ法併用鏡視下滑膜切除術を行い,治療成績について検討した.術後荷重は早期荷重群と非早期荷重群に分類し,統計学的検討を行った.

結果:全例で感染が鎮静化し,高度な可動域制限を来した症例は認めなかった.早期荷重群は入院期間が有意に短かった.

まとめ:化膿性膝関炎においてオープンドレナージ法併用鏡視下滑膜切除術は有用な治療法である.

成長期腰椎分離症急性期患者の臨床経過に関する検討

著者: 大山隆人 ,   杉浦史郎 ,   青木保親 ,   西川悟

ページ範囲:P.185 - P.189

背景:成長期腰椎分離症急性期患者の各種腰痛の臨床経過を調査すること.

対象と方法:若年者の急性腰痛患者をMRIで成長期腰椎分離症(47例)と若年性非特異的腰痛症(31例)に分類し,初診時と初診後1カ月時の3種の状況別VAS(動作時痛,立位時痛,座位時痛)を調査し,両群間で比較検討した.

結果:成長期腰椎分離症急性期患者は初診後1カ月の3種の状況別VASにおけるすべての状況で,腰痛の改善が良好であった.

まとめ:成長期腰椎分離症急性期患者は,その他の腰痛患者と比べ早期に腰痛が軽快する傾向が認められた.

肩関節周囲炎患者の夜間痛残存に関連する因子

著者: 伊藤創 ,   葉清規 ,   川上照彦 ,   石島ゆり野

ページ範囲:P.191 - P.193

背景:夜間痛を有する肩関節周囲炎患者の治療経過において,1カ月後の夜間痛の残存に関連する因子は明らかではない.

対象と方法:調査可能であった肩関節周囲炎患者67例の,理学療法開始1カ月後の夜間痛残存に関連する因子を検討した.

結果:67例中32例が初回評価時に夜間痛を有し,1カ月後に夜間痛が残存したのは12例であった.夜間痛の残存に対して,肩関節下垂位外旋可動域が危険因子であった.

まとめ:理学療法開始1カ月後の夜間痛残存に対して,肩関節下垂位外旋可動域が関連していた.

症例報告

小児Turner症候群患者に生じた胸腰椎多発椎体骨折の1例

著者: 葛原絢花 ,   長谷川敬二 ,   飯田泰明 ,   横山雄一郎 ,   土谷一晃 ,   高橋寛 ,   和田明人

ページ範囲:P.195 - P.199

 思春期前Turner症候群患者に生じた多発椎体骨折の稀な1例を経験した.10歳女児で,約1mの高さから墜落し受傷,T12からL4にかけて連続した多発椎体骨折の診断で入院した.骨密度は0.443g/cm2と低値であった.3カ月間の体幹ギプスおよび硬性装具による外固定で骨癒合を得た.受傷後1年の時点で軽度の椎体楔状変形を認めるが,腰背部痛はなく体幹運動制限も認めない.今後,骨密度改善のための治療介入と,成長に伴い遺残椎体変形,脊柱後弯化に対する経過観察が必要である.

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.109 - P.109

書評 THE整形内科 フリーアクセス

著者: 井樋栄二

ページ範囲:P.155 - P.155

 まず,書名を見て驚いた.整形外科診療の中でメスを持たない診療形態に対して整形内科という言葉を会話で使うことはあるが,書籍のタイトルになっているのを見たのは初めてだからである.本書は,月刊誌「治療」の特集「THE 整形内科」が爆発的に売れたことを受けて,現場のニーズに応えようと特集内容を1冊の本にまとめたものである.編者は隠岐で僻地医療に携わる白石吉彦先生・裕子先生ご夫妻,エコーの伝道師と言われる秋田市で開業する皆川洋至先生,そして弘前大学病院に勤務する総合診療医,小林只先生という異色の組み合わせである.この4人を結びつけるキーワードは僻地医療,総合診療医,エコーである.僻地医療を担う医師には高い専門性よりも広くすべての疾患に対応可能な総合診療医としての能力が求められる.僻地医療ではとくに高齢者の運動器疾患の占める比重が大きい.運動器疾患の的確な診断と治療はMRIやCTがなくてもエコーを上手に使えば十分に可能である.これが本書の伝えようとしているメッセージである.

書評 軟部腫瘍のMRI フリーアクセス

著者: 松田秀一

ページ範囲:P.200 - P.200

 MRIは軟部腫瘍の診断,治療には必須のものである.まず腫瘍の有無からはじまり,解剖学的な局在,そして軟部組織の質的診断にMRIの情報は非常に重要であることは論を俟たない.本書には,MRIを用いた軟部腫瘍の診断に必要な情報が基礎から応用まで幅広く,しかもコンパクトに記載されている.また,診断のためには軟部腫瘍の病理組織や臨床像の知識も必要である.軟部腫瘍は組織型も多く,すべてを頭に入れておくことはなかなか難しいが,本書には頻度も念頭に置き,代表的な軟部腫瘍の特徴がきれいに整理されて解説されている.本書は一言で言うと,軟部腫瘍の診療上非常に有益な本である.以下にこの本の素晴らしさを列記させていただく.

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.201 - P.201

あとがき フリーアクセス

著者: 松山幸弘

ページ範囲:P.204 - P.204

 今回の誌上シンポジウムでは,リバース型人工肩関節手術(RSA)が取り上げられています.私は脊椎脊髄外科が専門なので,このリバース型人工肩関節を使用して手術を行ったことはありませんが,私の医局でも高齢者の広範囲腱板断裂症例に適応しています.非常に便利な人工関節システムのようで,2014年から本邦で使用可能となり,すでに多くの症例に使用されています.しかし,どれほど便利で有効なシステムでも,適応や手術手技,そして合併症の予防や対応を誤ると問題が生じてきます.脊椎脊髄外科領域でも同様で,最近では腰椎側方椎体間固定(LLIF)がそうでした.このような新規医療機器を採用する場合には,より慎重な態度で進めていってほしいものです.まず適応については十分な検討のもとに決め,そしていざ手術を行う場合は解剖を熟知し,起こりうる合併症を予測しながら慎重に行うことが重要と考えます.私たち外科医にとってはOne of Themであっても,患者さんにとってはOnly Oneであることを忘れてはなりません.どれほど素晴らしい手術であっても,取り返しのつかない大きな合併症が生じれば,その手術は台無しとなります.悲しみしか残らないからです.

 今回の誌上シンポジウムでは,そのシステムのよさ,手術適応,手術手技,起こりうる合併症,そして術後のリハビリテーションについて,日本の肩関節領域のトップランナーが論述しています.未経験の読者はもちろんのこと,経験のある整形外科医にとっても,より自分の知識を高めるうえで素晴らしい内容となっていると確信しています.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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