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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科52巻2号

2017年02月発行

文献概要

連載 慢性疼痛の治療戦略 治療法確立を目指して・5

NSAIDsの位置付けと使い方

著者: 園畑素樹1 馬渡正明1

所属機関: 1佐賀大学医学部整形外科

ページ範囲:P.166 - P.168

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はじめに

 非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)は鎮痛薬として広く用いられてきた.生薬のNSAIDsは紀元前にさかのぼるとされているが,商品としてのNSAIDsの発売は1899年のアスピリン®(アセチルサリチル酸)が初めてである.NSAIDsの主な作用機序は,炎症,疼痛,発熱の原因の1つであるプロスタグランジンの合成を抑制することにある.炎症部位でのプロスタグランジンは,アラキドン酸カスケードの産物であるが,NSAIDsはアラキドン酸カスケードの律速段階の酵素であるシクロオキシナーゼ(cyclooxynase:COX)を阻害する.COXにはそのアイソザイムとしてCOX-1,COX-2が存在し,消炎鎮痛にはCOX-2により合成されたプロスタグランジンが関与し,COX-1によって合成されるプロスタグランジンは胃・十二指腸粘膜の保護,トロンボキサンは血小板機能のサポートをしている.そのため,COX-2選択的阻害薬がより胃粘膜障害が少ないとされているが,心血管イベントのリスクを高めるとの指摘もある1)

 NSAIDsの鎮痛薬としての有効性はよく知られているが,近年,その副作用についても注目されるようになってきた.特に,運動器の慢性疼痛を抱える患者の多くは高齢者であり,予備能の低下により副作用が重篤化しやすい点が問題である.NSAIDsの位置付けと使い方について,各種ガイドラインを参考に概説する.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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