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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科52巻8号

2017年08月発行

文献概要

Lecture

首下がり

著者: 豊根知明1 白旗敏之1 工藤理史1 松岡彰1 丸山博史1 石川紘司1 男澤朝行2

所属機関: 1昭和大学整形外科学講座 2千葉労災病院整形外科

ページ範囲:P.781 - P.785

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はじめに

 1986年,Langeら1)はfloppy head syndromeと称して,首下がり12例を報告した.首下がり(dropped head)とは,顎が前胸部に接触する“chin-on-chest deformity”を来す病態であり,前方注視困難となり日常生活にさまざまな支障を来す.頚部伸筋群の筋力低下が主因と考えられるが,前頚筋の過剰緊張も一因とされる.原因疾患は,運動ニューロン疾患・筋疾患・パーキンソン症候群なども含め多岐にわたる.診察においては,頚部筋以外の筋力低下,筋萎縮のほか,眼瞼下垂や錐体外路症状の有無などをチェックするが,疑わしい場合には神経内科にコンサルトし,その上で明確な原因のない首下がりとして整形外科が主治療科となることが多い.後弯変形がflexible(頚部後屈により改善)な症例においては,装具やリハビリテーションによる治療が優先され,筆者の経験ではその多くで症状の改善が得られる.変形がrigidな症例に対しては外科的な治療が考慮される.胸腰椎の成人脊柱変形に対する手術治療は,骨盤パラメータの解析と,それに基づくformulaの構築により,正確な術前のプランニングが可能となり,手術成績の向上と合併症の軽減が図られてきた.一方で,前方注視困難な首下がり症例に対する手術治療戦略はいまだ確立されているとは言えず,さらにデータを積み上げていく必要がある.

参考文献

1) Lange DJ, Fetell MR, Lovelace RE, et al. The floppy head syndrome. Ann Neurol 1986;20:133.
2) 中村隆一,斎藤 宏,長崎 浩.臨床運動学(第3版).東京,医歯薬出版.2013,p.406.
3) 林 康子,長岡正範.パーキンソン病の姿勢障害に対する理学療法—特に首下がりについて.MB Med Reha 2013;135:45-53.
4) Kisner C, Colby LA. Therapeutic Exercise:Foundations and Techniques. 5th ed. Philadelphia:FA Davis;2007. P.391.
5) 林 欣霓,長岡正範,林 康子・他.種々の疾患にともなう首下がり症候群の病態生理学的分析—表面筋電図所見と理学療法の効果から.臨床神経2013;53:430-8.
6) 豊根知明,男澤朝行,志保井柳太郎・他.20度以上の後弯をともなう圧迫性頚髄症に対する前方矯正除圧固定術.J Spine Res 2011;2:1853-5.
7) 豊根知明,男澤朝行,稲田邦匡・他.50度以上の頚椎後弯に対する変形矯正手術の意義.J Spine Res 2014;5:418.
8) 豊根知明,出沢 明,金森康夫・他.頚椎前方除圧固定術—術式のスタンダードと進歩.頚椎後弯変形に対する前方除圧固定術.脊椎脊髄2014;27:607-10.
9) 鐙 邦芳.脊柱変形の矯正手術の実際:頚椎部および頚胸椎移行部.脊椎脊髄2017;30:369-76.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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