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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科53巻5号

2018年05月発行

文献概要

誌上シンポジウム 外傷後・術後骨髄炎の治療

マイクロサージャリーを用いた治療

著者: 土田芳彦1

所属機関: 1湘南鎌倉総合病院外傷センター

ページ範囲:P.377 - P.382

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 四肢開放骨折に対してFix and Flapの原則に則り治療したとしても,深部感染の危険性は常に存在する.深部感染の原因の主たるものは局所的要因である.それは①不十分なデブリドマン,②死腔や血腫の存在,③骨の不安定性,④不十分な軟部再建,そして⑤遅延した軟部再建などである.

 不幸にして急性期感染がコントロールできずに骨髄炎となってしまった場合の治療原則は,「病巣部郭清と抗菌薬投与による感染のコントロール」,「健常な軟部組織による病巣部被覆」,そして「骨再建」である.

 最も重要な病巣部郭清は組織欠損を拡大化させ,その後の再建を困難にする.そして逆に再建の困難さが病巣部搔爬の質を不十分なものする.どのように大きな組織欠損となっても再建できる手段を有していることにより,十分な病巣郭清を行うことが可能となる.

 感染コントロール後に骨軟部組織を再建するが,この軟部組織再建は治療の要である.骨欠損が軟部欠損よりも大きな場合は,骨移動術(仮骨延長法)によって同時軟部組織再建が可能な場合もある.しかし,その軟部組織の質は不良であり,感染再燃に対する抵抗性は弱い.状況が重篤であればあるほど,「遊離皮弁術」を用いた軟部組織再建が最適である.

 骨欠損治療には現在のところ,Masquelet法,仮骨延長術,そして血管柄付き骨移植術の3通りが存在する.感染巣が十分にコントロールされ軟部状態が良好であり,しかも骨欠損が6cm以内であればMasquelet法の成功率は高い.しかし,分節状の骨欠損が6cmを越えるか,感染巣のコントロールに不安がある場合には,仮骨延長法あるいは血管柄付き骨移植術が有利である.どちらを選択するかは手技の得手,不得手に左右されるが,創外固定装着の長さと煩わしさを考慮すると,10cmを越える分節状の骨欠損には血管柄付き骨移植術がより適していると考える.

 患者が悲嘆にくれるような重篤な感染症には,マイクロサージャリー手技を用いた治療が最大の効果を発揮する.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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