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サルコペニアと漢方医学
著者: 板倉英俊1 中田英之1 辰巳礼奈1 萩原圭祐1
所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科先進融合医学共同研究講座
ページ範囲:P.432 - P.436
文献購入ページに移動サルコペニアは,加齢による筋量・筋力の低下を意味し,寝たきりを引き起こす重要な因子として,近年注目されている.その発症機構には,加齢に伴って低下する身体活動,栄養状態の悪化,各種ホルモンの低下,炎症性サイトカインの上昇に加え,慢性閉塞性肺疾患や糖尿病なども関与する,いわゆる複合病変である1,2)(図1a).サルコペニアが進むことで疼痛を生じ,疼痛や筋力の低下から,移動能力が低下し,社会参加や生活活動に制限が生じる.高齢社会を迎えサルコペニアを抱える人口の増大が言われているが,サルコペニアに対しては有効な治療法は確立していない.というのは,複合病変であるサルコペニアに対して,複雑なさまざまな薬剤介入を行うと,かえって多剤併用による有害事象につながっていくからである3,4).
一方,漢方はもともと複数の生薬で構成され,少量の化合物が多段階的に作用し,生体内において,複雑に動的に反応を引き起す.複数の生薬が体内で相互に作用し,どのような主作用を示し,どのような副作用を起こすか,何百年もの治験を積み重ねてきた歴史がある.そこから得られた知識を有効に活用すれば,サルコペニアに対して,安全で有効なアプローチが可能だと,われわれは考えている.
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