icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科53巻5号

2018年05月発行

文献概要

境界領域/知っておきたい

サルコペニアと漢方医学

著者: 板倉英俊1 中田英之1 辰巳礼奈1 萩原圭祐1

所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科先進融合医学共同研究講座

ページ範囲:P.432 - P.436

文献購入ページに移動
サルコペニアの病態と漢方における腎虚の概念

 サルコペニアは,加齢による筋量・筋力の低下を意味し,寝たきりを引き起こす重要な因子として,近年注目されている.その発症機構には,加齢に伴って低下する身体活動,栄養状態の悪化,各種ホルモンの低下,炎症性サイトカインの上昇に加え,慢性閉塞性肺疾患や糖尿病なども関与する,いわゆる複合病変である1,2)(図1a).サルコペニアが進むことで疼痛を生じ,疼痛や筋力の低下から,移動能力が低下し,社会参加や生活活動に制限が生じる.高齢社会を迎えサルコペニアを抱える人口の増大が言われているが,サルコペニアに対しては有効な治療法は確立していない.というのは,複合病変であるサルコペニアに対して,複雑なさまざまな薬剤介入を行うと,かえって多剤併用による有害事象につながっていくからである3,4)

 一方,漢方はもともと複数の生薬で構成され,少量の化合物が多段階的に作用し,生体内において,複雑に動的に反応を引き起す.複数の生薬が体内で相互に作用し,どのような主作用を示し,どのような副作用を起こすか,何百年もの治験を積み重ねてきた歴史がある.そこから得られた知識を有効に活用すれば,サルコペニアに対して,安全で有効なアプローチが可能だと,われわれは考えている.

参考文献

1) Pedersen BK, Febbraio MA. Muscle as an endocrine organ:Focus on muscle-derived interleukin-6. Physiol Rev 2008;88:1379-406.
2) Arnold AS, Egger A, Handschin C. PGC-1α and myokine in the aging muscle. a mini-review. Gerontology 2011;57:37-43.
3) 江頭正人.サルコペニアの臨床.サルコペニアに対する治療の可能性—栄養,薬物.日老医誌2011;48:55-6.
4) Sayer AA, Robinson SM, Patel HP, et al. New horizons in the pathogenesis, diagnosis and management of sarcopenia. Age Ageing 2013;42:145-50.
5) Kishida Y, Kagawa S, Arimitsua J, et al. Go-sha-jinki-Gan (GJG), a traditional Japanese herbal medicine, protects against sarcopenia in senescence-accelerated mice. Phytomedicine 2015;22:16-22.
6) 鈴木隆雄(研究代表).後期高齢者の保健事業のあり方に関する研究.平成27年度厚生労働科学特別研究.2016.
7) 前島貞裕,片山容一.脳神経外科と漢方.脊椎脊髄疾患.漢方と最新治療.2004;13:232.
8) 中村哲郎,Sauza ACA,大内尉義.腰痛症に対する牛車腎気丸の効果.第4回東京内科漢方研究会講演内容集.1989,4,p.24.
9) Nakanishi M, Nakae A, Kishida Y, et al. Go-sha-jinki-Gan (GJG) ameliorates allodynia in chronic constriction injury-model mice via suppression of TNF-α expression in the spinal cord. Mol Pain 2016;12:pii:1744806916656382.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら