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症例報告
舟状骨偽関節後のDISI変形に伴う遅発性正中神経麻痺の1例
著者: 森田浩介1 高木岳彦2 小林由香1 渡辺雅彦1
所属機関: 1東海大学医学部外科学系整形外科学 2国立成育医療研究センター臓器・運動器病態外科部整形外科
ページ範囲:P.1069 - P.1074
文献購入ページに移動45歳女性,約30年前に転倒し右手関節痛を生じた既往があり,半年前から右手指掌側のしびれを自覚した.右母指〜環指橈側のしびれと感覚鈍麻,snuff boxの圧痛を認めた.単純X線像では骨硬化像を伴う舟状骨腰部骨折Herbert Type D2,DISI変形を認めた.電気生理学検査では正中神経の遠位潜時の延長と伝導速度の低下を認めた.舟状骨偽関節のDISI変形に伴う手根管症候群と診断し,舟状骨偽関節手術,手根管開放術を施行した.月状骨の掌側への突出がみられ,これにより正中神経が圧迫されたものと考えられた.術後,手指しびれは改善を認め,術後6カ月で遠位潜時,伝導速度ともに正常範囲内に改善された.術後1年の現在,画像上舟状骨の骨癒合が得られ,月状骨の矯正位が維持されていた.DASH scoreにおいても改善がみられた.
舟状骨骨折後の偽関節はDISI変形を伴うことが知られているが,月状骨の掌側転位により受傷後長期経過で手根管症候群の症状を呈する,いわゆる遅発性正中神経麻痺の状態になることを念頭に置かなくてはならない.
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