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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科54巻2号

2019年02月発行

雑誌目次

誌上シンポジウム 足部・足関節疾患と外傷に対する保存療法 Evidence-Based Conservative Treatment

緒言 フリーアクセス

著者: 熊井司

ページ範囲:P.124 - P.124

 足部・足関節に発生する疾患は,近年の生活様式の欧風化とともに急増しており,日常診療においてより適切な治療が求められるようになってきています.直立二足歩行を特徴とするヒトにとって,足の痛みはすべての運動の基本ともいえる「立つこと」,「歩くこと」に大きく影響を与えることになり,就労やスポーツといった足に負荷のかかる局面だけでなく,日常の生活動作への支障も計り知れないものがあります.

 そういった足部・足関節疾患で来られる患者さんに対し,first responderとなる整形外科医が,その場でできる治療はいったいどういったものなのでしょうか.整形外科の多くの教科書には,さまざまな手術の適応や成績,術式が詳細に記載されていますが,第1選択になるべき保存療法については,ごく簡単な記述にとどまっていることがほとんどです.病院で容易に手術を選択することのできる勤務医にとっては,確かに有用な情報かもしれませんが,外来診療での治療が要求される開業医やクリニックでの整形外科医にとっては,直接の治療にあまり生かされません.足の疾患の保存療法にはどういったものがあるのか.その中で病期や進行度によって最適な治療法はどの方法なのか.治療によってどういった経過をたどるのか,疑問は尽きません.

アキレス腱障害に対する保存療法

著者: 篠原靖司 ,   熊井司

ページ範囲:P.125 - P.132

 アキレス腱障害は近位のアキレス腱症(non-insertional Achilles tendinopathy:NIT)とアキレス腱付着部症(insertional Achilles tendinopathy:IAT)および踵骨後部滑液包炎(retrocalcaneal bursitis:RB)に分類されるが,いずれも変性を基盤とした病態であるためアスリートだけでなく,中高年にも発症する.診断は圧痛部位やX線,MRI,エコーなどの画像検査で行うことができる.保存療法が第一選択となり,伸張性運動(eccentric exercise)を軸とし,体外衝撃波(extracorporeal shock wave therapy:ESWT)やブロック注射を必要に応じて組み合わせて行うと効果的である.ブロック注射は腱の断裂を避けるためにエコーガイド下で実施する.適切に診断し,病態に応じた治療を選択することがポイントとなる.

アキレス腱断裂に対する保存療法

著者: 天羽健太郎

ページ範囲:P.133 - P.138

 現在,アキレス腱断裂における保存療法の治療プロトコールは変革期の中にある.身体所見のみで診断し,ギプスで長期間免荷で治療する時代は過去のものになりつつある.その評価にはエコーが,そして治療にはブーツや専門装具が必要とされ,早期のリハビリテーション開始が大きな流れとなっている.治療方針決定のための評価を行い,患者との話し合いの結果,保存療法が選択されたならば,安全な範囲で適切な装具を使用して,できるだけ早く荷重をかけることが治療の鍵となる.

新鮮足関節外側靱帯損傷に対する保存療法—エビデンスに基づく最新の知見

著者: 宮本亘 ,   安井洋一 ,   三木慎也

ページ範囲:P.139 - P.144

 新鮮足関節外側靱帯損傷に対する4つのエビデンス,①保存療法の治療経過に関するエビデンス,②functional treatmentに関するエビデンス(キャスト固定による保存療法との比較),③functional treatmentに関するエビデンス(内外反を制動する固定材料の違いによる比較),④保存療法vs.手術療法に対するエビデンス,に関する現時点における最新の知見を明らかにするために記述的レビューを行った.

足底腱膜炎に対する保存療法

著者: 服部惣一

ページ範囲:P.145 - P.151

 足底腱膜炎では多くの症例で保存療法が奏功する.病態としては,腱膜の変性,炎症,異常な新生血管・神経の増生,滑走不全が挙げられる.保存療法には,リハビリテーション,ステロイド注射,ヒアルロン酸注射,体外衝撃波治療(extracorporeal shock wave therapy:ESWT),多血小板血漿療法(platelet rich plasma therapy:PRP)などが含まれる.エコーガイド下に治療することで,病態に対するピンポイントの治療が可能となり,治療成績の向上が期待できる.

扁平足に対する保存療法

著者: 平野貴章

ページ範囲:P.153 - P.157

 扁平足の原因は,後脛骨筋腱機能不全(posterior tibial tendon dysfunction:PTTD)をはじめとし,距舟関節・Lisfranc関節の変形性関節症,関節リウマチ,ばね靱帯などを含む骨・関節外傷,神経病性関節症(Charcot foot),足部の麻痺や腫瘍のほか,腓骨筋痙性扁平足(peroneal spastic flatfoot:PSFF)が挙げられる.治療では主たる原因を見極めたうえで加療することが重要である.また保存療法の限界を理解したうえで治療することが重要である.

外反母趾に対する保存療法—運動療法

著者: 佐本憲宏

ページ範囲:P.159 - P.166

 外反母趾患者は近年増加し,手術も増加傾向にあるが,まず保存療法を行うことが治療の第一選択となる.それには靴の指導,運動療法,足底挿板などの装具療法と薬物治療があり,それらを組み合わせて治療することが多い.運動療法は非常に重要な保存療法であり,エビデンスに基づいた母趾外転筋運動訓練,Hohmann体操や足趾のストレッチなどがある.特に母趾外転筋運動訓練は軽度外反母趾では変形を改善させる効果が証明されている.重度の外反母趾や多趾の変形を合併した場合でも母趾や第2趾の関節拘縮を軽減させる効果がある.

外反母趾に対する保存療法—装具療法

著者: 山口智志

ページ範囲:P.167 - P.171

 外反母趾に対する装具療法は,最も広く行われている保存療法の1つだが,その効果に関するエビデンスは少ない.適切な靴の指導は除痛効果と発症予防効果が期待できる.足底装具(インソール)は,除痛には有効だが変形矯正効果はない.母趾を外転位に保つ装具は,軽度から中等度の変形に対して除痛効果と多少の変形矯正効果を期待できるが,変形が強い例では着用により痛みを生じることがあり注意が必要である.テーピングも,外転装具と同様に除痛効果と多少の変形矯正効果が報告されている.実臨床では,患者の症状や希望に合わせてこれらを適宜組み合わせて治療を行う.

Morton病に対する保存療法

著者: 黒川紘章

ページ範囲:P.173 - P.178

 Morton病は深横中足靱帯による足底趾神経の絞扼性障害で,前足部の疼痛と知覚障害を主訴とする.Thumb index finger squeeze testやMulder's clickなど症状の誘発試験と,MRIや超音波診断装置による画像所見から総合的に診断する.初期治療として,靴の指導やインソールの作製,ブロック注射などの保存療法があり,保存療法に抵抗性の症例に対しては必要に応じて神経切除術,神経周囲の剥離や深横中足靱帯の切離による神経除圧術などが選択される.本稿では解剖を中心とした病態の概説や,過去の報告を基にした保存療法を中心に報告する.

変形性足関節症に対する保存療法

著者: 神崎至幸 ,   黒田良祐

ページ範囲:P.179 - P.183

 変形性足関節症には原因疾患を有さない一次性と有する二次性があるが,いずれも内反型の変形を呈することが多い.治療に際しては,疼痛部位が足関節に限局しているのか,その他の疾患が合併していないかを的確に診断する必要がある.病期が進行すると距骨下関節の代償機能も働きにくくなり,保存療法の効果が薄くなってくる.したがって初期の変形にこそ積極的な保存療法を行うべきであり,保存療法が無効な末期の変形に対しては手術を考慮すべきである.

外脛骨障害に対する保存療法

著者: 田中博史

ページ範囲:P.185 - P.189

 外脛骨は正常足の約10〜21%に存在するとされ,Veitch分類Type Ⅱで症候性に移行しやすい.発症原因として外傷やオーバーユース,扁平足や後脛骨筋の筋力低下に伴う慢性疼痛など様々である.保存療法には運動療法,装具療法,局所注入療法,固定などがあり,発症原因別にそれぞれのタイプによって保存療法の使い分けや組み合わせが必要である.個々の症例の病態を詳細に診察,把握することで,その病態に応じた積極的な保存療法が可能となると同時に治療成績が向上する.

Lecture

Minimal Clinically Important Difference(MCID)の概念と算出方法

著者: 有馬秀幸 ,   松山幸弘

ページ範囲:P.190 - P.195

はじめに

 近年の整形外科における臨床研究では,痛みや機能障害といった患者の主観を評価する患者立脚型質問票(patient reported outcome:PRO)が重要視されている.整形外科の治療目標は,患者のquality of life(QOL)を向上させることであるため,患者の主観的なQOLに関連した障害を定量化する必要性がある.PROは一般的に複数項目のアンケート調査によって構成され,全般的な健康関連QOLを評価するShort Form-36(SF-36)やEQ-5Dのほかに,疾患に関連した健康関連QOLを評価する質問票がある.例えば腰痛に関連した健康関連QOL調査票ではOswestry Disability Index(ODI)やJOA Back Pain Evaluation Questionnaire(JOABPEQ)などが挙げられる.

 PROの中には,患者の疼痛や機能障害だけでなく,心理的因子や満足度を測定している質問票があり,整形外科のみならずリハビリテーション,神経分野でも,その重要性が認知されている.まず,これらのPROを臨床研究などで使用するにあたり,その質問票がすでに信頼性,妥当性,そして治療反応性が確認されているかどうかを知っておく必要がある.その上で複数の質問項目から算出されるスコアをどのように解釈するかが重要である.痛みの程度を評価するVisual Analogue Scaleでは,簡単にそのスコアや変化値を理解することが可能である.しかしながら,複数項目からなるPROでは,算出されたスコアや治療前後の変化値を,どのように解釈すればよいかを理解することは難しい.例えば,上記に挙げたODIは,腰痛に関する10個のアンケート項目を用いた質問票で,腰痛関連障害を0〜100(%)で評価する.その中で40(%)はどんな意味を持つのか,もしくは10(%)改善したことがどのような意味を持つのかを,そのPROに慣れていない臨床家や研究者には理解ができないと考えられる.

 ここで,1989年にJaeschkeら1)が提唱したMinimal Clinically Important Difference(MCID)という概念がある.これはPROにおいて,患者における変化が有益であると解釈できる最小の変化値という概念である.ODIのMCIDが15(%)であれば,治療後にODIが20%減少していればその値がMCIDより大きいために,治療により臨床的に意味を持った改善がなされたと判断できる.つまりPROを用いた研究では,あるグループにおいて治療前後のスコアの差を統計学的に差があるかどうか検討するだけでなく,個々の症例がMCIDに達しているかどうかを判断することで臨床により即した解釈となる.しかしながら,MCIDは整形外科医にとって直感的にわかりにくく,さらに同様の概念のキーワードも多いため(表1),敬遠しがちである.本章では,MCIDの概念とそれらの算出方法を中心に記載し,実際の臨床研究や臨床におけるMCIDの考え方,そして問題点についても言及する.本稿では,論文の体系的なレビューではなく,過去のMCID関連の論文を読み,筆者の臨床研究の経験も踏まえて整形外科の臨床研究におけるMCIDの意義について記述する.

最新基礎科学/知っておきたい

椎間板の微小環境

著者: 酒井大輔

ページ範囲:P.196 - P.199

 椎間板の機械的機能は,中心となる髄核,それを囲む線維輪,上下を挟む終板軟骨のすべてのコンポーネントの状態に左右される.生化学的には髄核内の豊富なプロテオグリカンが多くの水を保持することで約80%が水分という特徴を持つ.線維輪も内層ではプロテオグリカンとⅡ型コラーゲンに富むが,外層にいくにつれてⅠ型コラーゲンが豊富な線維性軟骨組織になり,強度と安定性の保持に大きく関わっている1).終板軟骨は椎体と椎間板を結合し,人体最大の無血管臓器といわれる椎間板の栄養と代謝の80%以上をその末梢血管からの拡散により賄っている.椎間板変性とは椎間板の退行過程に起こる様々な変化をさす総称であり,その病態生理はいまだ明確には整理されていない.しかし,加齢,外傷,ストレス,喫煙,遺伝的要素など様々な要因が関与し起こるとされるため,その進行機序は十人十色である2)

連載 いまさら聞けない英語論文の書き方・6

英語論文のお作法(その4) 略語は侮れない

著者: 堀内圭輔 ,   千葉一裕

ページ範囲:P.200 - P.202

 前回までの内容で,英語論文執筆に必要な基礎知識をご理解いただけたかと思います.文面が整った整合性のある英語論文原稿は,指導医・Principal Investigatorの立場からみても気持ちがよいものです.基本的なミスの少ない原稿は,注意深く時間をかけて論文執筆に臨んだ証しです.指導医の評価が悪くなるはずがありません.

 さて今回は,意外に誤りの多い,略語の使い方を中心にお話しします.

臨床経験

大腿骨近位部骨折早期手術システムによる周術期合併症の検討

著者: 穂積崇史 ,   岸田俊二 ,   小谷俊明 ,   赤澤努 ,   佐久間毅 ,   佐々木裕 ,   上野啓介 ,   中山敬太 ,   平松翔 ,   大鳥精司 ,   南昌平

ページ範囲:P.203 - P.208

背景:大腿骨近位部骨折に対する入院後24時間以内の早期手術を目標としたシステムを2015年4月に導入し,前年度の治療成績と比較した.

対象と方法:2014年度症例(従来群)と2015年度症例(早期群)の手術待機日数,術後入院日数,周術期合併症,抗血栓薬内服症例の術中出血量を比較した.

結果:早期群では待機日数が有意に短く,肺炎,尿路感染症といった術前合併症を認めなかった.術後入院期間,術後合併症,術中出血量に有意な差を認めなかった.

まとめ:早期手術は術後成績を悪化させず術前合併症を減少させた.

下肢切断術におけるバイポーラー型パルス出力血管閉鎖装置の有用性

著者: 田島康介 ,   小川広晃 ,   坂崎多佳夫 ,   村上大樹 ,   西村朝之 ,   荒井勲 ,   平川昭彦 ,   植西憲達 ,   岩田充永

ページ範囲:P.209 - P.212

緒言:術中・術後の出血を軽減することを目的に,バイポーラー型パルス出力血管閉鎖装置を使用し下肢切断術を施行し(使用群18肢),従来の電気メスでの切断例との治療成績(非使用群22肢)を比較した.

結果:使用群では手術時間が短く出血量が少ない傾向を認めた.周術期濃厚赤血球輸血量および輸血症例数は,使用群で有意に少なかった(p<0.05).

考察:組織凝固や血栓に依存した止血を行う電気メスによる切断よりも,弾性組織を変性させることによりシーリングし確実な止血を行う本装置の使用は,術後の出血予防に有利であった.

椎弓根内側に頭側移動した腰椎椎間板ヘルニアに対する経皮的内視鏡下経椎弓的ヘルニア摘出法(PETA)

著者: 浦山茂樹

ページ範囲:P.213 - P.222

背景:椎弓根内側に頭側移動した腰椎椎間板ヘルニアを低侵襲で摘出する.

対象と方法:22例を経皮的脊椎内視鏡を用いて経椎弓的に手術し平均2年間追跡した.手術は硬膜外出血や硬膜損傷を回避するため,椎弓を内板まで薄く切除し黄色靱帯付着部を判別した後に,黄色靱帯の背側で内板を穿孔した.

結果:神経根腋窩部のみならず腋窩より頭側やヘルニア孔のヘルニアも摘出できた.3例が再発し,うち2例を再手術した.下肢痛は21例で初回術後平均16日で消失し,VAS値は術前平均75mmから最終1.4mmになり,JOAスコアは術前平均12.8点から最終28点になった.

まとめ:本手術法により,低侵襲で有効にヘルニアを摘出できる.

症例報告

胸椎硬膜内に発生した血管周皮腫の1例

著者: 藤田友樹 ,   中島浩敦 ,   酒井康臣 ,   高津哲郎

ページ範囲:P.223 - P.226

 症例は50歳,男性.2カ月前からの左下肢のしびれと右下肢の脱力を主訴に当科を受診した.MRIでは,第7胸椎レベルで強く造影される硬膜内髄外腫瘍を認め,脊髄は左側へ強く圧排されていた.Dural tail signを認め,髄膜腫と考え腫瘍摘出術を行った.術後病理診断は血管周皮腫であった.術後に歩行障害は改善した.中枢神経系発生血管周皮腫は主に頭蓋内に発生し,脊柱管内,特に硬膜内発生は極めて稀である.画像上,髄膜腫との鑑別が困難である.治療は全摘出が推奨される.再発率が高く,長期経過後の再発もあり,長期の経過観察が必要である.

書評

脊椎脊髄ハンドブック 第3版 フリーアクセス

著者: 松本守雄

ページ範囲:P.228 - P.228

 日本大学整形外科学分野の德橋泰明教授と脊椎班の先生方による『脊椎脊髄ハンドブック』第3版が刊行された.前回の第2版から8年の歳月を経ての改訂であるが,その間,社会の高齢化による成人脊柱変形や骨粗鬆症などの加齢性疾患の増加,疼痛診療の集学化,画像検査法の進歩,各疾患の診断基準や診療ガイドラインの改訂などにより,脊椎脊髄領域の診療にも大きな変化が生じている.一例を挙げると,成人脊柱変形では,spinopelvic balanceの重要性が最近広く認識されており,新規の分類法やX線学的パラメーターが治療時の指標とされている.今回の改訂版には,このような8年間で加わった新たな情報が豊富に追加記載され,大変充実した内容になっている.一方,脊椎脊髄診断学の根幹をなす局所診察法や神経学的所見の取り方については,その神経解剖学的根拠や読者の理解を助ける大変わかりやすい図とともに詳細に記載されており,初版からの変わらぬコンセプトも貫かれている.本書が初版以来18年間にわたり根強い愛読者を獲得し続けている所以である.

 德橋教授をはじめとする日本大学の脊椎班の先生方は,非常に高いアクティビティをもって脊椎脊髄疾患診療に取り組まれている.その広く深い臨床経験から診療上で重要なものが何であるかを洞察され,本書の項目立てをされているので,整形外科医のみならず,あらゆる診療科の医師にとって効率よく脊椎脊髄診断学のエッセンスを学べる書になっている.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P. - P.

欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.123 - P.123

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.229 - P.229

あとがき フリーアクセス

著者: 金谷文則

ページ範囲:P.232 - P.232

あとがき

 特集「足部・足関節疾患と外傷に対する保存療法 Evidence-based Conservative Treatment」は熊井司先生の素晴らしい企画です.足部・足関節疾患のevidenceが近年蓄積されています.足関節外側靱帯損傷の保存療法は「一般的に思われているほど治療成績がよくない」こと,新鮮例の20〜40%が陳旧例に移行すること,さらに現時点で手術療法が保存療法を上回るエビデンスもないことから,今後エビデンスを重ねて手術適応を明確にする必要があります.足底腱膜炎では各種の保存療法が評価されており,エコーの進歩による病態の解明に伴い診断や手術適応が明確になることが期待されます.扁平足には後脛骨筋腱機能不全,腓骨筋腱痙性扁平足,足根骨癒合症,足根洞症候群そして踵骨骨折後変形治癒などの様々な病態があり,病態に応じた保存療法が必要です.外反母趾に対する保存療法のエビデンスは少なく,靴の指導,インソール,母趾外転装具,テーピングについて著者の経験を踏まえて詳述されています.アキレス腱断裂では固定ブーツ装着下での早期荷重が有効であり,エコーによる断端間隙の評価が治療方針の決定に有用なことも示唆されています.外脛骨障害の原因として外傷,扁平足,オーバーユース,後脛骨筋筋力低下があり,それぞれ固定,装具,運動制限,運動療法が適応になります.Morton病,変形性足関節症についても解説されています.

 最新基礎医学・知っておきたい「椎間板の微小環境」は人体最大の無欠陥組織である椎間板の形態,病態について極めて興味深いreviewであり,椎間板の研究と治療は今後の大きな発展が期待されます.連載「いまさら聞けない 英語論文の書き方」第6回「英語論文のお作法(その4) 略語は侮れない」は,若い医師が論文を書く前に是非読んでおいてください.臨床経験「下肢切断術におけるバイポーラー型パルス出力血管閉鎖装置の有用性」は外科腹腔鏡手術で用いるLigasure®を使用した下肢切断術の報告であり,Ligasure®は四肢切断術には適応になっていませんが,高リスク患者では手術時間短縮や出血量の減少が期待できます.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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