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骨折リスクを考慮したHIVの治療戦略
著者: 佐藤信吾12 平川弘幸1 潟永博之3
所属機関: 1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科細胞生理学分野 2東京医科歯科大学医学部附属病院腫瘍センター 3国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター
ページ範囲:P.614 - P.618
文献購入ページに移動まず,PIもしくはINSTIで治療されたHIV感染者30名のART開始前と1年後における血清中の骨質劣化マーカー〔低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC),ペントシジン〕を比較した.その結果,治療開始後,PI治療群ではINSTI治療群に比べて,血清ucOCおよびペントシジンの値が有意に増加していた.次に,同一患者においてPIとINSTIの作用を比較するため,2年以上PIで治療を継続後,INSTIに変更されたHIV感染者10名における血清中の骨質劣化マーカーを薬剤変更前後で比較した.その結果,PIからINSTIへの薬剤変更により,血清ucOCおよびペントシジンの値が有意に減少した.さらに,HIV感染自体が骨質に与える影響を除外するため,PIを野生型マウスに4週間経口投与したところ,骨密度の有意な低下は認められなかったものの,3点曲げ試験で骨強度の低下が確認され,血清ucOC値の増加も認められた.
以上の結果から,PIを含む多剤併用療法は骨質を有意に低下させ,骨脆弱性を誘導することが明らかとなった.骨折のリスクが高いHIV感染者に対しては,PIを含まないレジメンによる抗HIV治療が推奨される.
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