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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科55巻10号

2020年10月発行

雑誌目次

座談会

withコロナ時代と整形外科診療

著者: 松本守雄 ,   長谷川直樹 ,   奥村潤一郎 ,   吉井俊貴 ,   田中真砂史

ページ範囲:P.1101 - P.1110

新型コロナウイルス感染が医療現場に大きな打撃を与えている.整形外科診療も外来・手術が激減し,難しい運営を強いられている.

制限された状況の中,整形外科の現場でいまなにが問題か,不安にどう対応するか,感染症専門医を交えてお話しいただいた.

(2020年6月29日・WEBで収録)

論述

鼠径部痛を有する変形性股関節症患者の異なる病期でのMRI所見の比較

著者: 鬼頭和寿 ,   杉浦史郎 ,   豊岡毅 ,   中村恵太 ,   大山隆人 ,   大森康高 ,   岡本弦 ,   西川悟

ページ範囲:P.1113 - P.1118

背景:変形性股関節症患者のosteoarthritis grade分類によるmagnetic resonance imaging(MRI)所見を比較調査すること.

対象と方法:変形性股関節症と診断され,X線写真,MRIを撮影し,鼠径部痛を有した30名を対象とし,診療録を振り返り調査した.骨髄浮腫(bone marrow edema:BME)と関節水腫のMRI出現頻度について,X線による初期群と進行・末期群を比較し統計処理した.

結果:カイ二乗検定を行った結果,関節水腫のみは初期が有意に多く(6/15名:40%)(p<0.01),関節水腫とBMEを両方認められたものは進行・末期群が有意に多い結果となった(11/15名:73%)(p<0.05).

まとめ:変形性股関節症を有する症例は,X線写真上,初期股関節症でも鼠径部痛がある場合は,MRI撮影により,関節水腫が認められる可能性が示唆された.

連載 やりなおし! 医療制度 基本のき・10

みなしPT

著者: 田辺秀樹

ページ範囲:P.1120 - P.1121

はじめに

 皆様「みなしPT」制度をご存知だろうか? 理学療法士(PT)の人数が少なかったころ,PTの多くは脳血管リハビリテーションに従事していて,運動器疾患を担うPTは少なかった.特に外来のリハビリテーションに従事するPTは少なく,外来患者のリハビリテーション治療には難渋している.そこで,日本整形外科学会と日本運動器科学会の二学会共同で,新たにPTの代役として働ける「セラピスト制度」を立ち上げた.学会主催の1日講習会を受講し,試験に合格したものを「セラピスト」として認定した.この制度は診療報酬と直結しており,運動器リハビリテーションⅡの施設基準を取得している施設で「セラピスト」がPTの代わりに行ったものに対して,運動器リハビリテーションⅢの点数が算定できるようになった.これがいわゆる「みなしPT制度」である(みなしPTという言葉そのものは,青本には入っていない).

いまさら聞けない英語論文の書き方・26

語るに語れないauthorshipの諸問題①—Authorshipの取り扱い方

著者: 堀内圭輔 ,   千葉一裕

ページ範囲:P.1122 - P.1125

 アカデミアの世界で,authorshipのことを敢えて問い質すことは,個人のプライバシーや金銭に絡む話題を口にするように,不粋で青臭い雰囲気があります.しかしながら,組織の一員として勤務している医師・研究者のみならず,広く共同研究がなされている昨今,authorshipの問題は避けることができません,今回と次回の2回に分けて,それぞれ論文のauthorshipの取り扱い方(あまり当たり障りのない話題),およびauthorshipのより深い問題(やや話しにくい内容)を中心に取り上げます.Principle investigator(PI)や指導医の方々には,いまさらお話しする内容ではありません.ご了承ください.しかし,若手の医師・研究者にはおそらく誰も教えてくれませんので,ここで取り上げたいと思います.

臨床経験

癌治療科主治医は癌の脊椎転移に対し,脊椎外科医に何を期待しているのか?—当院の意識調査から

著者: 田中誠人 ,   重松英樹 ,   城戸顕 ,   川崎佐智子 ,   須賀佑麿 ,   山本雄介 ,   田中康仁

ページ範囲:P.1127 - P.1131

背景:当院では院内の骨転移患者の早期把握に努めてきた.しかし,現状の方法ではまだ不十分な印象がある.

方法:当院のがん診療科主治医に対して,脊椎転移患者に関するアンケートを行った.

結果:脊椎転移の診療経験は74%であり,その多くは治療方針に難渋していた.キャンサーボード(CB)の認知度は42%であり,活動内容の認知度,症例提示の経験はさらに少なかった.

まとめ:CBの認知度は低く,脊椎転移患者への早期対応が十分ではないことが判明した.CBの周知徹底と対応窓口を新たに設置する必要があると考えた.

Calcar Femoraleに沿って挿入したショートテーパーウェッジステムのステムアライメントと骨反応

著者: 久留隆史 ,   湯朝信博

ページ範囲:P.1133 - P.1136

背景:ショートテーパーウェッジステム(short taper wedge stem:STW)は単軸性で左右対称のくさび型を呈する近位固定型ステムであり,髄腔占拠型ステムとは目指すべきステムアライメントに違いがある.

対象と方法:仰臥位前外側アプローチで行ったTHAのステムアライメント,および骨反応を検討した.

結果:ステムは平均3.1°に前傾位に設置されていたが,ステム固着性および骨反応は良好であった.

まとめ:STWは前方系アプローチにとって挿入しやすい形状である反面,前傾位に設置されやすいステムである.しかし,軽度前傾位に設置されたステムは,短期的には骨反応に影響を及ぼしていなかった.

動物咬傷の疫学的検討—月齢と咬傷発生の関連

著者: 清水太一 ,   善家雄吉 ,   小杉健二 ,   佐藤直人 ,   真弓俊彦 ,   酒井昭典

ページ範囲:P.1137 - P.1141

目的:当院における動物咬傷症例を月齢(月の満ち欠け)に着目し,後ろ向きに調査した.

対象と方法:当院の動物咬傷168例を対象とし,動物の種類,患者の性別・年齢・受傷部位などの種々の患者因子,咬傷発生日の月齢について検討した.

結果:受傷部位は手部・上肢で105例(62.5%)と過半数を占めた.動物の種類は,犬が70例(41.7%)と最も多かった.また,満月の日に発生した犬咬傷は17/70例(24.3%)と有意に多かった.

結語:動物咬傷は犬に多く,満月の日に有意に多く発生した.満月と犬咬傷発生の関連性が強く示唆され,満月時期における犬咬傷発生に対する注意喚起は有用であるかもしれない.

術中透視と術中CTナビゲーションを用いたSingle Position Surgeryのケージ設置位置の比較検討

著者: 檜山明彦 ,   渡辺雅彦

ページ範囲:P.1143 - P.1148

目的:術中透視と術中CTナビゲーションを用いた,腰椎側方進入椎体間固定術(lateral lumbar interbody fusion:LLIF)によるsingle position surgery(SPS)のケージ設置位置の違いを比較することを目的とした.

対象と方法:腰部脊柱管狭窄症やすべり症患者32例37椎間を対象に,ケージ設置や硬膜管面積,硬膜管前後径を比較検討した.

結果:術中CTナビゲーションによるSPSではケージがより後方に設置されていたが,硬膜管面積や前後径に両術式で有意差はなかった.

結語:ケージ設置位置に有意差はあったが,両術式間で術直後の硬膜管の拡大率に差はなかった.

肩関節鏡視下手術における手術用グローブのピンホール発生率と縫合回数の関連

著者: 金子誠 ,   高橋憲正 ,   松木圭介 ,   横山健一 ,   上田祐輔 ,   星加昭太 ,   菅谷啓之

ページ範囲:P.1149 - P.1153

背景:肩関節鏡視下手術において,合成ゴム製手術用グローブのピンホール発生率と縫合操作の関連について調査した.

対象と方法:鏡視下バンカート修復術50例の術後に術者よりポリクロロプレン製グローブ200枚を回収し,electrical conductivity testと水密性試験でピンホールを同定した.また縫合操作の回数を記録した.

結果:ピンホールは200枚中10枚(5%)に生じており,8回以上の縫合操作を行った症例で発生率が高い傾向であった.

まとめ:肩関節鏡視下手術において,手術用グローブのピンホール発生率は,縫合操作の回数増加によって増える傾向であった.

電気生理学的重症度別での手根管開放術後1年におけるCTSI-JSSHの変化

著者: 金谷貴子 ,   原田義文 ,   高瀬史明 ,   名倉一成

ページ範囲:P.1155 - P.1159

背景:手根管開放術後の手根管症候群自記式質問表日本手外科学会版CTSI-JSSHの変化を検討した.

対象と方法:238手を電気生理学的重症度に分類し(Stage1〜5),重症度スコア(SS)と機能的状態のスケール(FS)回復を術前・術後1年で比較した.

結果:全StageでSS,FSは術後改善し,Stage2〜5では有意であった.Stage間の比較では術前の差はなかったが,術後Stage3,4-Stage5間にSS,FSの有意差を認めた.

まとめ:術後1年にCTSI-JSSHの改善がみられ,手根管開放術による治療効果が確認できた.

症例報告

大腿部に発生した紡錘形細胞脂肪腫の1例

著者: 川村大悟 ,   中山隆之 ,   金子卓男 ,   大原関利章 ,   土谷一晃 ,   池上博泰 ,   武者芳朗

ページ範囲:P.1161 - P.1164

 今回,紡錘形細胞脂肪腫は比較的稀な良性の脂肪性腫瘍で,好発部位として項部,背部,肩が挙げられる.

 大腿部に発生した紡錘形細胞腫瘍の71歳男性の症例を経験した.

 病理組織診断を受けて辺縁切除を行った.術後4年の現時点で,再発および転移は認めていない.

若年者に生じた足底部の感染性皮膚潰瘍の1例

著者: 内山照也 ,   辻井雅也 ,   加藤次朗 ,   湏藤啓広

ページ範囲:P.1165 - P.1168

 感染性皮膚潰瘍の治療は困難であるが,特に踵部では荷重部位であるために再建部位の選択にも苦慮し,感覚障害によるものでは再建術の適応の可否を検討する必要があり,下腿切断術に至ることもある.今回,われわれは腰椎椎間板ヘルニアの術後に足底部に感覚障害が遺残し,同部に瘻孔と踵骨骨髄炎を伴う感染性皮膚潰瘍に対して再建術を施行した1例を報告する.

胸郭出口症候群における造影3D-CTと血管造影検査の比較

著者: 鈴木拓 ,   木村洋朗 ,   松村昇 ,   岩本卓士

ページ範囲:P.1169 - P.1172

 圧迫型の胸郭出口症候群2例に対して,造影3D-CTと血管造影を施行し,絞扼部位を評価した.造影3D-CTは血管造影と比較して絞扼部位の診断に関しては劣るものではなく,低侵襲で有用な検査であると思われた.

骨髄炎と鑑別を要した母趾末節骨類骨骨腫の1例

著者: 本橋正隆 ,   小柳広高 ,   瀬川裕子 ,   佐藤信吾 ,   大西威一郎 ,   吉井俊貴 ,   大川淳

ページ範囲:P.1173 - P.1176

 骨髄炎と鑑別を要した母趾末節骨類骨骨腫を経験したので報告する.症例は8歳男児で,母趾爪の横径肥大および母趾のばち指様変化,疼痛を主訴に受診した.単純X線,CTから母趾末節骨の慢性骨髄炎または類骨骨腫などの腫瘍性病変を疑い,病巣搔爬術を施行した.術中細菌培養は陰性であり,病理診断は類骨骨腫であった.術翌日から疼痛は速やかに改善し,術後4カ月の現在,腫瘍の再発は認めず経過良好である.足趾末節骨に発生する類骨骨腫は稀だが,骨髄炎など他疾患との鑑別に難渋する場合があり,念頭に置く必要がある.

化膿性脊椎炎術後に非閉塞性腸管虚血症を発症した1例

著者: 佐藤宏陽 ,   相澤俊峰 ,   橋本功 ,   菅野晴夫 ,   衛藤俊光 ,   半田恭一 ,   井樋栄二

ページ範囲:P.1177 - P.1180

背景:非閉塞性腸管虚血症(non-occlusive mesenteric ischemia:NOMI)は術後合併症として生じ得る急性腸管虚血症の1つで致死率が高い.救命には早期診断が必須だが,整形外科領域では報告例が少なく,一般には認識されていない.

目的:症例報告

症例:糖尿病がある66歳女性の腰椎化膿性脊椎炎に対し,前方病巣搔爬および骨移植を行った.術後6時間で血圧が低下し,腹部膨満感などを訴えた.術後18時間の造影CTでNOMIと診断したが,救命し得ず術後42時間で死亡した.

考察:心不全,透析,糖尿病,感染症などの危険因子を有する患者では,術後に血圧低下や循環血漿量減少が重なるとNOMIを発症する可能性があるので注意を要する.

書評

整形外科レジデントマニュアル 第2版 フリーアクセス

著者: 中島康晴

ページ範囲:P.1181 - P.1181

 このたび,田中栄先生のご編集による『整形外科レジデントマニュアル 第2版』が医学書院より上梓された.本書は東大整形外科学教室の先生方が中心となって初期および後期研修医を対象に,整形外科診療の基本をまとめられたものである.通読して感じた本書の特徴は,決して疾患の羅列ではなく,目の前の患者さんの症状をどのように捉え,どのように診断し,治療法を選択していくかといった考える過程が極めてわかりやすく記載されている点である.加えて,整形外科の教科書には載っていないが日常診療ではとても重要なこと,例えば他科へのコンサルトやカンファランスでの発表の仕方なども詳しく書かれている.これから整形外科を学ぶ若いレジデントにとって,本書は診断・治療の考え方を養える指南書であると同時に「即役立つ」書籍である.

AO法骨折治療[英語版Web付録付]第3版 フリーアクセス

著者: 大鳥精司

ページ範囲:P.1182 - P.1182

 AO法は骨折治療に携わる多くの医師に多大なる恩恵をもたらしてきました.1958年の創設以来60年以上にわたり,研究,臨床,教育に貢献してきました.『AO Principles of Fracture Management』は2000年に原書初版が出版され,その後さまざまな改良が加えられ2007年に原書第2版,それから10年を経て第3版が発刊されました.このたび,日本語版総編集の田中正先生,日本語版編集代表の澤口毅先生らを中心に待望の日本語版『AO法骨折治療 第3版』が完成いたしました.1016ページからなる大作です.

高齢者ERレジデントマニュアル フリーアクセス

著者: 関口健二

ページ範囲:P.1183 - P.1183

 良質な研修病院で研修を行うことのメリットは何でしょう.僕が米国臨床留学で感じたそのメリットとは,「十分な知識や経験がなくても,その施設でルーチンとなっている診療がスタンダードな診療であるため,それらを体で覚えられること」でした.

INFORMATION

第47回関東膝を語る会 フリーアクセス

ページ範囲:P.1131 - P.1131

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P. - P.

欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.1099 - P.1099

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.1185 - P.1185

あとがき フリーアクセス

著者: 山本卓明

ページ範囲:P.1188 - P.1188

 今年は「特別な夏」を過ごされた方が多いのではないかと思います.私について言えば,博多に夏の到来を告げる祇園山笠の中止にはじまり,花火大会がない,近所で夏祭りがない,TVから高校野球の応援歌が聞こえてこない,お盆の帰省をしない,など季節を感じさせるイベントがほぼ「ない」夏でした.

 また,これまでを振り返ると,今年入局した先生とまだ一度も全員で食事をしたことがありません.彼らとの会話は,すべて院内で交わされたものです.その他,歓送迎会中止,納涼会中止,同門会懇親会中止,日整会野球大会の九州地区予選会中止,などほぼすべてのイベントが現在まで「ない」状態です.また,来年度の後期研修説明会も,WEBで対応しています.初対面の相手と画面のみで対話するのは,やはり違和感があります.こちらの熱意がうまく伝わらないのでは? 相手の本当の気持ちが推し量れないのでは?と不安になる時もあります.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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