特集 女性アスリートの運動器障害—悩みに答える
緒言
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著者:
片寄正樹1
所属機関:
1札幌医科大学保健医療学部理学療法学第二講座
ページ範囲:P.1290 - P.1290
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近年,女性アスリートの活躍は国際的にも国内的にも大きな広がりを見せている.特にハイパフォーマンスレベルの女性スポーツへの関心の高まりを背景に,女性アスリートをとりまく運動器障害の診療に関する様々な知見も整理されるようになってきた.米国スポーツ医学会が,利用可能エネルギー不足,視床下部性無月経,骨粗鬆症の3つを「女性アスリートの三主徴Female Athlete Triad(以下,FAT)」として広く啓蒙したことは,女性アスリートの運動器障害に潜む背景が重要であることを示唆した.その後も国際オリンピック委員会からは,総エネルギー消費量に対する少ないエネルギー摂取量による負のバランス状態を「RED-S」として,パフォーマンスにかかわる身体システムへの悪影響を指摘している.昨今ではこれらを基盤とした治療や予防が進む中,女性特有の身体特性そしてライフイベントに伴う心理変化も女性アスリートの診療とサポート上のpitfallとして留意すべきものと認識されるようになってきた.一方で,女性アスリートの運動器障害の発症に影響する足部骨格形態の性差など,新たなるメカニズム追究も進んでいる.
本特集では,疫学と診断治療にあわせて女性アスリート運動器障害の特有なメカニズムにせまる多様な背景要因について着目した.結果として,女性アスリートの運動器障害の診療とサポートの最前線で活躍する多様な職種の先生にご執筆をいただいている.整形外科,女性診療科,栄養指導,心理サポート,理学療法,そしてアスレティックトレーニングと多岐にわたる視点での解説とCOVID-19の影響を受けたスポーツ現場からの女性アスリートサポートの最前線報告は,女性アスリートに寄り添う多様な専門職の連携が重要であることを改めて認識させてくれる.多忙を極める中,ご執筆をご担当いただいた先生方には心より感謝申し上げたい.