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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科56巻1号

2021年01月発行

雑誌目次

特集 パラスポーツ・メディシン入門

緒言 フリーアクセス

著者: 田島文博

ページ範囲:P.16 - P.16

 2020年オリンピック・パラリンピック開催地に東京が決まったのは2013年であり,日本国中が湧き上がった.しかし,その時の報道の多くが「東京オリンピック開催決定」であったことに私は不満があった.「東京オリンピック・パラリンピック」である.少し年配の方なら覚えておられるだろうが,1988年オリンピック開催にあたっては名古屋とソウルが立候補し,一騎打ちとなった.日本人は誰もが名古屋開催を確信していたが,投票の結果,52対27という大差でソウルが選ばれ,開催にも成功した.

 なぜソウルが成功となったかについての私見を述べたい.1981年当時の情勢は,モスクワオリンピックで西側諸国は参加を見合わせ,次のロサンゼルスオリンピックは東側諸国が不参加を示唆していた.加えて,ロサンゼルスオリンピックは商業主義的と非難されていて,パラリンピックは別の地域で開催された.韓国は何としても東西両陣営に参加してもらった上で,商業主義的色彩を消したいと考えた.そこで,パラリンピックに光を当て,オリンピックと同じ会場で同等に開催することとしたのである.東西が分裂しにくく,脱商業主義としても非常にわかりやすかった.以後,パラリンピックはオリンピックと同等となり,多くの人に感動を与え続けている.

パラリンピックの歴史とレガシー

著者: 陶山哲夫 ,   鳥居昭久 ,   菊地みほ ,   武井圭一

ページ範囲:P.17 - P.20

はじめに

 1943年頃から英国のStoke Mandeville Hospitalで脊髄損傷者に導入されたスポーツは,身体機能の改善や社会復帰にも有効性がみられ,次第に在宅者や施設で生活する障がい者にもスポーツが広がり,ついには競技性志向の強い1960年ローマパラリンピック,1964年東京パラリンピック開催に至り,2020年の現在までますます興隆している.

 当初,障がい者がスポーツを行うと危険との理由で禁止された時代もあるが,医学的管理下では安全に行えることが国際的にも証明されるに至っている.障がい者スポーツは心身機能の向上のみならず,障がい者がスポーツを頑張っている姿を見ると,社会の障がい者への理解が進み,障がい者の社会生活の施策が振興し,障がい者との共生社会の促進につながる.パラリンピックはオリンピックとともにスポーツの祭典後にも影響するポジティブなレガシーを模索することとなった.

日本における障害者スポーツの先駆者 中村裕

著者: 中村太郎

ページ範囲:P.21 - P.26

 中村裕は,国立別府病院(現 独立行政法人国立病院機構別府医療センター)整形外科科長時の1960年に,英国のストーク・マンデビル病院(Stoke Mandeville Hospital),ルードヴィヒ・グットマン(Ludwig Guttmann)のもとへ留学し,スポーツを用いた脊髄損傷者のリハビリテーションを学んだ.1961年には,大分県身体障害者体育大会を開催した.1962年には脊髄損傷の自分の患者2人を選手として連れて,日本初の国際Stoke Mandeville競技会参加を果たした.その後,1964年の東京パラリンピック開催に尽力し日本選手団団長を務めた.1965年に,障害者の働く場として社会福祉法人太陽の家を創設した.1975年にはフェスピック連盟(現アジアパラリンピック競技委員会)を組織し,第1回大会を大分市・別府市で開催した.1981年には,大分国際車いすマラソンを提唱した.1964年の東京パラリンピック以降,5大会連続でパラリンピック夏季大会の日本選手団団長を務めた.この世を去った1984年のStoke Mandeville病院でのパラリンピックでは,開催中にその訃報が知らされ,会場には半旗が掲げられた.

医師としてのパラスポーツ入門—パラアスリートの医学的特性

著者: 尾川貴洋

ページ範囲:P.27 - P.30

 パラスポーツ選手の特徴とは,アスリートでありながら「障がい」を持っているということである.そのため,障がい者特有の生理機能や運動機能を理解し,選手に接することが望ましい.障がいの原因は脳性麻痺,脳卒中,多発性硬化症,脊髄損傷,切断など多くある.また,先天性四肢欠損,視覚障害などの選手も障がい者スポーツで活躍している.これらの障害を,今回は四肢欠損,上下肢の機能障害,体幹の障害,視覚障害,自律神経障害に分類し,それらの診療の盲点となる障がい者の注意点について述べる.

パラリンピックに必要な医療体制

著者: 山田睦雄

ページ範囲:P.31 - P.38

 パラリンピックに必要な医療体制のうち,フィールドに着目した医療体制の構築について総論的な意見を述べる.スポーツのフィールドにおける医療体制づくりのためには,緊急行動計画(emergency action plan:EAP)を作成し,さらにEAPに必要な人材養成および環境整備を含めた基本プランを策定し,それに沿って当日に向けて準備を進めることにより,世界レベルのmedical standardを満たす医療体制ができる.今回の大会は,コロナ予防対策も踏まえた医療体制の構築が必要であり,大会後には感染予防対策を含めた医療体制に関するレガシーが残ると思われる.

パラスポーツ選手と整形外科医の関わり—車椅子選手の肩肘問題や褥瘡など

著者: 西村行秀

ページ範囲:P.39 - P.42

 パラスポーツ選手の障害も他のスポーツ同様,運動器の障害が多い.特に脊髄損傷者など日常生活でも車椅子を使用しているパラスポーツ選手は,上肢を酷使することとなる.また,麻痺や長時間の車椅子の使用により褥瘡を発症しやすい.これらの病態を定期的に診察し,その障害に対する診察と予防を行う必要がある.整形外科医は運動器に対する専門家であるが,皮下や筋に対しての知識も深い.したがって,パラスポーツ選手の障害の管理を行うにあたり整形外科医は適任な診療科の1つであり,整形外科医のパラスポーツへの関わりが期待される.

パラスポーツの競技種目とクラス分け

著者: 三井利仁 ,   安藤佳代子 ,   兒玉友 ,   指宿立

ページ範囲:P.43 - P.45

 パラスポーツにはオリンピックのように健常者のスポーツにはない,独特のシステムが存在する.リハビリテーションの一環として始まったスポーツが競技となり,その平等性を得るために進歩しているクラス分けも,現在は多くの問題を抱えるようになった.結果を求める競技スポーツに参画するためには,どのような問題があるか考える必要がある.

パラスポーツ競技における整形外科的メディカルサポート—特にクラス分けに関連して

著者: 小林章郎

ページ範囲:P.47 - P.51

 パラスポーツ競技において整形外科的なサポートは多岐にわたるが,特にクラス分けの過程で重要である.国際パラリンピック委員会はClassification Codeによってクラス分けの基本的考え方を定義し,それに従って各種目において詳細なクラス分けルールが決められている.肢体不自由のクラス分けに際し,それらの内容に精通した整形外科医による事前診断書(Medical Diagnosics Form)の作成は極めて重要で,さらに障害を客観的に証明する筋電図やMRIなどの追加検査を求められる場合があり,整形外科医の関与・判断が結果を左右する.

パラスポーツにおける義肢装具と車いす

著者: 根本明宜 ,   中村健

ページ範囲:P.53 - P.60

 日本の障害者スポーツの始まりである1964年の東京パラリンピックと比較すると,パラアスリートが存在するようになり選手の競技力が向上した.義肢装具,車いすも併せて進歩し,競技力の向上に寄与している.本稿では,競技に特化した義手,走るための義足部品,組み合わせや特殊なスパイクなど競技に合わせた義足,陸上用車いすやバスケット,ラグビー,テニスなど競技のための車いす,冬期競技用の車いすなどを紹介する.パラスポーツに取り組むためにはスポーツ用の義肢装具,車いすが望ましいが,高額であるなど経済的な問題もある.参加のための障壁を下げる取り組みが必要である.

パラアスリートにおけるドーピングの特殊性

著者: 草野修輔

ページ範囲:P.61 - P.64

 ドーピングは,スポーツ活動において競技能力を高める目的で不正に薬物を使用するか,不正な方法を用いることであるが,世界アンチ・ドーピング規程で示されているドーピング違反について概説し,その基準となる禁止表国際基準について紹介する.禁止表国際基準は,健常アスリートとパラアスリートの区別なく運用され,パラアスリートにおける特殊性は特にないが,障がい者に特有の禁止方法として,世界パラリンピック委員会が独自に規定している“boosting”について紹介する.

暑熱環境におけるパラスポーツ競技:パラスポーツ選手のための暑熱対策—和歌山県立医科大学のパラ陸上選手への取り組み

著者: 上條義一郎 ,   指宿立 ,   伊藤倫之 ,   河﨑敬 ,   田島文博

ページ範囲:P.65 - P.69

 夏場に練習や競技をする際,どんな種目においても熱中症発生のリスクがある,という認識が必要である.障がい者スポーツ選手に対する暑熱対策は,各選手の競技特性はもちろんのこと,障害や病態背景,生活状況,社会的背景などさまざまな方面から検討し,個別に対応しなければならない.そのために,ヒトの高体温時における体温調節を理解した上で,障害の特性を踏まえ,指導者のみならず選手自身も,自分の体調と気象条件など,その時の状況に合わせて,熱中症予防・暑熱対策を各自で判断し,行うのが理想的である.

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を想定したパラスポーツにおける感染予防策

著者: 三上幸夫 ,   吉川達也 ,   川崎真嗣 ,   指宿立 ,   坂光徹彦

ページ範囲:P.71 - P.77

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは,新型コロナウイルス(SARS-CoV2)によって引き起こされる感染症である.新型コロナウイルスの主な感染経路は接触感染と飛沫感染である.そこでCOVID-19を理解した上で,手洗い,咳エチケット,密集・密接・密閉回避などの感染予防策を行うことが重要である.また,日本障がい者スポーツ協会などでは障がい者アスリートのための感染症予防指針を提示している.現在,COVID-19の感染状況は変化しているが,COVID-19研究やワクチン・治療薬開発も急ピッチで進められており,最新の情報を入手して,感染予防策を講じる必要がある.

視座

Surgeon Scientistのすゝめ

著者: 宮本健史

ページ範囲:P.3 - P.3

 近年のリバースショルダーや様々なタイプのLIFなどの新たな手術手技,またナビゲーションやロボット手術,分子標的治療薬や再生医療技術の登場など,整形外科医療の進歩には目を見張るものがある.しかし,これらの技術は突然我々の前に現れたものではないことは言うまでもない.これら1つ1つの技術の臨床応用までには年余にわたる積み重ねがあり,おそらくはその影には多くの失敗や条件設定もあって,世間に登場したものはそれらの中のごく一部,ということであろう.1人の天才が突然思いついて完結できるものではない.多くの診療医が様々な症例と長い年月対峙する中で,様々な試行錯誤が生まれ,何らかそれら多くの医師の無数の努力の積算として発明が生まれる.完全に空間的にも時間的にも独立して取り組んでいるはずなのに,中にはあるとき同時的に異なる地域や国から同じコンセプトのものが生まれることもあり,世界各地での取り組みがほぼ同時に結実することがあるのも,場所は違っていても必要と感じて取り組んでいることは共通していることを表している.しかし,こうした取り組みに共通しているのは,「必要」と感じるものに対する「挑戦」であり,漫然とやり過ごすことのないメンタリティであろう.

 「研究」というと臨床とは関係ない,診療とは離れた自分とは無縁の世界のことのように感じている者も少なからずいるような気もしている.しかし,何も難病的な難しい疾患ばかりではなく,普段の診療でよく遭遇するCommon diseaseや手術手技にも小さな挑戦や改良があってもよく,日常診療で受け持った患者から学ぶことも多い.そうしたことを勉強したり記載したり,時に発表する.それはもはや研究であり「science」である.そうした取り組みをしない,あるいはおろそかにする人は,診療医としての成長も見込めない.当初,横一線でスタートした同級生の中でも,そうした小さな積み重ねを実践し継続する者としない者とで,ある期間が経過したときに,臨床力に大きな差がついてしまうことは自明である.こうした小さな取り組みの延長に,大学院や学位研究があってもよいし,あるいはそうした学位研究をきっかけに,興味あるテーマや,ライフワークになるような課題を見つけ,深く追究してもよいだろう.学びの楽しさに目覚めると,そもそも医師は知的好奇心が旺盛な人が多く,整形外科医には凝り性な人も多いので,ハマったり継続したりすると,そのうちそうした領域のエキスパートになっていることもある意味納得である.

座談会

ラグビーワールド・カップからみえてきたスポーツ医学の実際と課題

著者: 田島卓也 ,   守屋拓朗 ,   高森草平 ,   井澤秀典 ,   大野均 ,   德永祥尭 ,   黒田良祐

ページ範囲:P.4 - P.14

 2019年,ラグビーワールドカップ(W杯)が日本で開催され,日本代表は初のベスト8をつかんだ.激戦の裏側で選手たちを支えていたのが,スポーツドクターとアスレティックトレーナーである.スポーツ現場では何が求められ,どう答えるか.今回,日本代表・トップリーグ経験のあるスポーツドクターとアスレティックトレーナー,代表選手お二人に参加いただき,W杯からみたスポーツ医学の実際とこれからの課題についてお話しいただいた.

 (2020年9月2日・WEBで収録)

論述

オスグッド病の重症度と関連する因子の検討

著者: 篠崎公則 ,   杉浦史郎 ,   志賀哲夫 ,   高田彰人 ,   大森康高 ,   豊岡毅 ,   古手礼子 ,   武田大輝 ,   岡本弦 ,   西川悟

ページ範囲:P.79 - P.82

背景:オスグッド病(Osgood-Schlatter disease:OSD)は,小中学生に多くみられる疾患で,そのほとんどは予後良好な疾患とされている.しかし,臨床では脛骨粗面の終末期像を呈した難治例をしばしば経験する.そこで本研究の目的はOSDの重症度と関連する因子を検討することとした.

対象と方法:X線を撮像しOSDと診断された105例において,性別,年齢,罹患期間,障害側を調査し,X線画像の重症度との関連因子を検討した.

結果:性別,罹患期間の項目において重症度との間に関連が認められた.

まとめ:男児で罹患期間が長い症例ほど重症度が高まる可能性が示唆された.

Lecture

遺伝子改変T細胞によるがん免疫療法

著者: 影山愼一

ページ範囲:P.83 - P.87

はじめに

 遺伝子改変T細胞には,腫瘍抗原を認識するT細胞受容体(T cell receptor:TCR)遺伝子を自己リンパ球に導入するTCR遺伝子導入T細胞(TCR-T)と,腫瘍細胞の表面抗原を認識するモノクローナル抗体の結合部位遺伝子とCD3zetaなどの遺伝子とのキメラ遺伝子を導入するもの(キメラ抗原受容体[chimeric-antigen receptor:CAR]-T)の2つの遺伝子改変細胞療法がある(図1,表1).

 TCR-T療法は,患者自己リンパ球を拡大培養しながら,ウイルスベクターなどを用いる遺伝子導入技術により腫瘍抗原特異的TCR遺伝子をT細胞に導入し,再び患者に輸注する細胞療法である.CAR-Tの標的抗原はCD19などの細胞表面にある分子であるのに対し,TCR-Tは細胞内で抗原プロセシングを受け,主要組織適合抗原(major histocompatibility complex:MHC)に提示されたペプチドを遺伝子導入したTCRが認識するため,標的抗原は主に細胞内抗原である.TCR-Tの抗原は,CAR-Tに比べ,多種な抗原が知られていて,メラニン色素産生細胞に由来するメラノーマ関連抗原(MART-1,gp100),がん精巣抗原(NY-ESO-1,MAGEファミリー遺伝子群)がある.

 TCR-T療法の臨床試験の初めての報告は,2006年にアメリカ国立がん研究所(National Cancer Institute:NCI)からScience誌に掲載されたメラノーマ17例での治療研究である1).腫瘍抗原ペプチドを認識するTCRの遺伝子をクローニング技術で同定し,そのTCRα鎖とβ鎖遺伝子をウイルスベクターなどでT細胞に導入し,養子細胞療法として輸注するものである.これまでの臨床試験の報告を合わせると,メラノーマ,滑膜肉腫,食道癌,大腸癌および複数のがん種(乳癌,骨髄腫など)の文献報告があるが,メラノーマと滑膜肉腫を対象にした臨床試験が多い.本稿では,メラノーマと整形外科領域での診療対象となる軟部肉腫のTCR-T療法の臨床的成果,意義および課題について解説する.

境界領域/知っておきたい

皮膚科からみた乾癬性関節炎の実際

著者: 今福信一

ページ範囲:P.88 - P.90

はじめに

 乾癬は,皮膚病の分類では炎症性角化症という項目に入り,後天的に炎症によって皮膚の角化に異常が生じる状態とおおまかに理解されている.体を保護する体毛を失ったヒトの表皮は他の動物と比べ極めて厚くなっており,垢となって剥がれ落ちるまでに6週間という長い時間をかけてゆっくり角質へと分化(角化)する.ある種の炎症を伴うと,この角化の過程が促進され,十分に成熟しないまま皮膚が脱落するという現象が生じる.乾癬の皮疹部ではそのサイクルが4〜7日に短縮している.乾癬は皮膚の病気であるが,乾癬を発症する患者には独特の全身的な背景がある.またその背景がさまざまな合併症を発症させるが,乾癬性関節炎(psoriatic arthritis:PsA)はその中で最も重要なものである.

 本稿では皮膚科医からみた関節炎を有する患者の特徴について述べる.PsAの病変に関する詳細は多くのリウマチ科,整形外科の解説があるのでそちらを参照してほしい.

連載 いまさら聞けない英語論文の書き方・29

データ取り扱いの基礎(1) “n”(検体数,実験回数)

著者: 堀内圭輔 ,   千葉一裕

ページ範囲:P.92 - P.95

 “英語論文の書き方”から若干逸脱しますが,番外編として,“n”,“エラーバー”,“t-testとP値”の3回に分けて,データ取り扱いに関してお話しします.いずれも基礎的ではありますが,ないがしろにされがちなのではないでしょうか.統計学の込み入った話ではありませんので,気楽に構えてください.今回はまず,“n”を取り上げます.

Debate・1【新連載】

変形性膝関節症—UKA vs. TKA

著者: 松本知之 ,   松田秀一

ページ範囲:P.97 - P.102

症例:79歳,女性,身長151.6cm 体重57.4kg BMI 25.0

主訴:5年前より特に誘因なく左膝関節痛を自覚,近医受診後は変形性膝関節症(膝OA)の診断のもとヒアルロン酸注射・リハビリテーションなどの保存的治療を行っていた.症状に軽快なく,徐々に疼痛が増強し,紹介され当院を受診した.痛みは立ち上がりや坂道などの荷重時,階段昇降時が主体である.夜間痛・安静時痛はなし.

臨床経験

日本人特発性側弯症患者におけるDistal Radius and Ulna(DRU) Classificationを用いた骨成熟度評価

著者: 山本雄介 ,   重松英樹 ,   田中誠人 ,   奥田哲教 ,   川崎佐智子 ,   須賀佑磨 ,   増田佳亮 ,   田中康仁

ページ範囲:P.103 - P.110

 Distal radius and ulna(DRU)classificationは橈尺骨遠位骨端線のみを細分化した新しい骨成熟度評価法で,非常に簡便であることに加え,客観性,再現性,信頼性に優れるとされる.日本人特発性側弯症患者207人を対象としDRU classificationと暦年齢,初潮からの時期,Risser signとの関連性を調査した.DRU classificationはRisser signと有意な相関関係があり,DRU classificationはRisser signよりも暦年齢や初潮からの時期と強い正の相関関係にあった.またDRU classificationは腸骨骨端核出現前の骨成熟度も評価可能であった.DRU classificationは本邦の特発性側弯症患者の骨成熟期の指標として有用である.

書評

疼痛医学 フリーアクセス

著者: 菊地臣一

ページ範囲:P.111 - P.111

 今という時代,疼痛の診療や研究が,少し前と比較しても,劇的に変化してきている.その変化は,従来われわれが認識していた以上に大きい.今や,疼痛は専門家だけがかかわっていれば良い時代ではなくなっている.また,先進諸国では,疼痛対策が政府の主要な政策目標の一つになっている.

 評者が大学卒業後間もない1970年代初頭,腰痛の患者が受診すると,問診と身体所見の評価の後に,必ず単純X線写真を撮影した.当然,脊椎には変性所見が認められるので,「骨棘が痛みを起こしています.歳のせいですね」と説明するのが一般的であった.治療は,安静,けん引を含む理学療法,そして薬物療法が主体であった.腰痛を生涯の研究主題としてきた評者にとっては,当時,疼痛診療の最前線が今のような変貌を遂げるとは想像もできなかった.

高齢者ERレジデントマニュアル フリーアクセス

著者: 岩田充永

ページ範囲:P.112 - P.112

 本当に挑戦的なマニュアルが出版されたものである.

 救急が好きな人間は,「18歳バイク事故で,血圧60で……」とホットラインで聞いた瞬間にアドレナリンが放出されるが,「82歳男性,今日はベッドから起きてくることができません……」と聞くとどのような反応になるであろうか?

INFORMATION

第15回骨穿孔術研究会 フリーアクセス

ページ範囲:P.38 - P.38

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P. - P.

欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.1 - P.1

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.113 - P.113

あとがき フリーアクセス

著者: 黒田良祐

ページ範囲:P.116 - P.116

 世界各地で感染が拡大する新型コロナウイルスは,2020年3月中旬に世界的大流行,いわゆるパンデミックになりました.あれから9カ月,この原稿を執筆している2020年12月には第一波,第二波よりさらに大きな第三波が押し寄せ,陽性患者数,重症者数ともに増え続け,不安な日々をお過ごしのことと思います.そんな中,ワクチンの開発が急ピッチで進み,イギリスを皮切りに今年中にも接種が始まるようです.2021年東京オリンピック・パラリンピックはなんとしても開催していただきたいものです.

 本号では,昨年日本中を熱狂の渦に巻き込んだラグビーW杯2019を振り返り,スペシャル座談会「ラグビーワールド・カップからみえてきたスポーツ医学の実際と課題」を掲載しております.日本代表チームのドクター,トレーナー,選手にご参加いただき,ここでしか聞けない貴重な座談会となっております.特集は来年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックへ向けて,「パラスポーツ・メディシン入門」と題し,読者の皆様にパラリンピックを深く知っていただこうと企画いたしました.境界領域では皮膚科からみた乾癬性関節炎の実際を今福信一先生(福岡大学皮膚科学教室)にご執筆いただきました.新連載「Debateディベート」が始まりました.第1回は「UKA vs. TKA」と題し,松田秀一先生(京都大学大学院整形外科)と松本知之先生(神戸大学大学院整形外科)に熱いディベートを展開いただいております.その他に連載「いまさら聞けない 英語論文の書き方」,論述,臨床経験など有用な情報が満載です.日常診療や研究に是非お役立て下さい.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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