icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科56巻1号

2021年01月発行

文献概要

視座

Surgeon Scientistのすゝめ

著者: 宮本健史1

所属機関: 1熊本大学大学院生命科学研究部総合医薬科学部門感覚・運動医学講座整形外科学分野

ページ範囲:P.3 - P.3

文献購入ページに移動
 近年のリバースショルダーや様々なタイプのLIFなどの新たな手術手技,またナビゲーションやロボット手術,分子標的治療薬や再生医療技術の登場など,整形外科医療の進歩には目を見張るものがある.しかし,これらの技術は突然我々の前に現れたものではないことは言うまでもない.これら1つ1つの技術の臨床応用までには年余にわたる積み重ねがあり,おそらくはその影には多くの失敗や条件設定もあって,世間に登場したものはそれらの中のごく一部,ということであろう.1人の天才が突然思いついて完結できるものではない.多くの診療医が様々な症例と長い年月対峙する中で,様々な試行錯誤が生まれ,何らかそれら多くの医師の無数の努力の積算として発明が生まれる.完全に空間的にも時間的にも独立して取り組んでいるはずなのに,中にはあるとき同時的に異なる地域や国から同じコンセプトのものが生まれることもあり,世界各地での取り組みがほぼ同時に結実することがあるのも,場所は違っていても必要と感じて取り組んでいることは共通していることを表している.しかし,こうした取り組みに共通しているのは,「必要」と感じるものに対する「挑戦」であり,漫然とやり過ごすことのないメンタリティであろう.

 「研究」というと臨床とは関係ない,診療とは離れた自分とは無縁の世界のことのように感じている者も少なからずいるような気もしている.しかし,何も難病的な難しい疾患ばかりではなく,普段の診療でよく遭遇するCommon diseaseや手術手技にも小さな挑戦や改良があってもよく,日常診療で受け持った患者から学ぶことも多い.そうしたことを勉強したり記載したり,時に発表する.それはもはや研究であり「science」である.そうした取り組みをしない,あるいはおろそかにする人は,診療医としての成長も見込めない.当初,横一線でスタートした同級生の中でも,そうした小さな積み重ねを実践し継続する者としない者とで,ある期間が経過したときに,臨床力に大きな差がついてしまうことは自明である.こうした小さな取り組みの延長に,大学院や学位研究があってもよいし,あるいはそうした学位研究をきっかけに,興味あるテーマや,ライフワークになるような課題を見つけ,深く追究してもよいだろう.学びの楽しさに目覚めると,そもそも医師は知的好奇心が旺盛な人が多く,整形外科医には凝り性な人も多いので,ハマったり継続したりすると,そのうちそうした領域のエキスパートになっていることもある意味納得である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら