文献詳細
文献概要
Lecture
骨軟部感染症に対するCLAP
著者: 圓尾明弘1
所属機関: 1製鉄記念広畑病院整形形成外傷センター
ページ範囲:P.1291 - P.1296
文献購入ページに移動骨軟部感染症の治療に難渋するのは,病巣の血流が悪く血腫など死腔が多く存在するため,経静脈的な抗菌薬は局所に移行しにくいこと,さらに病巣にある骨折の内固定材料や人工関節などの金属の表面には細菌がバイオフィルムを形成し,成熟に従って抗菌薬に対して高度の耐性を獲得することが挙げられる1).いったんバイオフィルムが形成されるとその制圧には最小発育阻止濃度(minimal inhibitory concentration:MIC)の100〜1,000倍の最小バイオフィルム撲滅濃度(minimal biofilm eradication concentration:MBEC)が必要とされている2).このためその組織は取り除かない限り感染を制圧することは難しいとされている.
抗菌薬の局所投与は,経静脈的には不可能な高い濃度の抗菌薬を病巣に分布させることができ,なおかつ血中への抗菌薬の移行が少なければ全身的な合併症も引き起こさないので,骨軟部感染症に対しては有用な選択肢となる.われわれは,局所に抗菌薬を持続的に移行させる概念として抗菌薬局所持続灌流療法(continuous local antibiotics perfusion:CLAP)を提唱しており,骨髄には骨髄針からintra-medullary antibiotics perfusion(iMAP)として,軟部組織にはダブルルーメンのセイラムサンプTMチューブ(日本コヴィディエン,東京)からintra-soft tissue antibiotics perfusion(iSAP)として抗菌薬を局所に微量注入しつつ,チューブに陰圧をかけることで目的とする領域に効率よく液を誘導することで臨床応用している3).
参考文献
掲載誌情報