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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科56巻3号

2021年03月発行

文献概要

特集 骨折に対する積極的保存療法

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著者: 神宮司誠也1

所属機関: 1九州労災病院 整形外科

ページ範囲:P.218 - P.218

 新型コロナウイルス感染拡大に注目が集まっているが,わが国は切実な人口問題も抱えている.団塊世代が75歳となる2025年に向けて,感染拡大以前から医療の効率化が進められてきた.絶対的かつ相対的にも高齢者が多くなっており,高齢者骨折患者が整形外科入院手術患者の1/3を占めるようになっている1).80〜90歳以上の患者も多く,しばしば内科疾患や認知症を合併しているため,周術期における老年病専門医を含む多職種連携が強調されている.加えて,骨の脆弱性ゆえに骨折部の固定困難さや癒合不全など局所合併症の問題もある.従来の骨折治療に加えて,生体内に起こる治癒反応を,保存的に,かつ積極的に刺激する治療オプション(骨折に対する積極的保存療法positive conservative treatments for fracture repair:PCTFR)の併用が今後より必要になると思われる.

 低出力超音波パルス(low-intensity pulsed ultrasound:LIPUS)照射はPCTFRの1つで,仮骨形成における細胞分化促進により治癒期間短縮や癒合確実性を上げる効果がある.本邦では,多くの基礎研究結果を背景に,比較的よく使用されている.リアルワールドデータの1つである,ナショナルデータベースを用いた解析では,高齢者脆弱性骨折増加に伴って術後LIPUS治療数が多くなっており,その使用頻度も高年齢ほど多いことが明らかになっている2).骨折患者の早期社会復帰の需要が窺われるデータである.

参考文献

1) 神宮司誠也.ナショナルデータベース(NDB)からみた,我が国における骨折治療の現状.骨折2019;4(2):623-6.
2) Jingushi S, Fukuda H. Low-intensity pulsed ultrasound is frequently used to treat fractures after osteosynthesis in elderly patients:A study using open data from the national database of health insurance claims of Japan. J Orthop Sci 2020. https://doi.org/10.1016/j.jos.2020.08.015
3) 神宮司誠也.骨折治癒過程における成長因子の役割.整・災外1997;40(10):1103-9.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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