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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科57巻2号

2022年02月発行

文献概要

Lecture

後外側骨片を伴う不安定型大腿骨転子部骨折の治療

著者: 徳永真巳1

所属機関: 1福岡整形外科病院

ページ範囲:P.183 - P.192

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後外側骨片とは

 近年,大腿骨転子部骨折の後外側(postero-lateral:PL)骨片が着目されており,全大腿骨転子部骨折中48.3〜88.4%に存在すると報告されている1-4).以前よりJensen分類において近位の骨頭頚部骨片と骨幹部骨片の2つの主骨片のほかに,大転子のPL骨片と小転子を含む後内側骨片が存在することが指摘されていた.PL骨片を伴う3-part骨折をJensen分類type 3,後内側骨片を伴う3-part骨折をtype 4,PL骨片と後内側骨片を有する4-part骨折をtype 5とし,これらは不安定型骨折とされた5).この4-part theoryは3D-CTでも確認されて,中野6)が3D-CT分類を提唱した.PL骨片と後内側骨片が一体となった特徴的なバナナ形状を呈する後方骨片を3-part Bとし4-part骨折と同様に不安定型であるとした(図1).同様に正田7),Choら4),Liら8)は3D-CTを使用して,後外側骨片をそれぞれの骨折型分類として報告されている.

 一方,Hsuら9)は単純X線で遠位主骨片の外側壁損傷に着目し,外側壁の幅が20.5mm以下であれば二次的外側壁損傷が起こりやすいとして,不安定な骨折型とした.これはAO/OTA分類に反映され,PL骨片を含む後方骨片により遠位主骨片の外側壁が20.5mm以下であればAO/OTA 31A2に分類し不安定型とみなしている.これらはsliding hip screw固定の外側壁損傷による術後不安定性を考慮している.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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