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雑誌目次

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臨床整形外科57巻5号

2022年05月発行

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増大号特集 もう悩まない こどもと思春期の整形外科診療

座談会

—抱え込まない。丸投げしない。こどもの「痛い」をあてにしない。—こどもと思春期の診かた フリーアクセス

著者: 鬼頭浩史 ,   澤村健太 ,   今井澄

ページ範囲:P.461 - P.465

企画のねらい

——今回,本誌増大号では「もう悩まない こどもと思春期の整形外科診療」として鬼頭浩史先生にご企画いただきました.鬼頭先生,企画のねらいについてお話しいただけますか.

鬼頭 小児整形外科の専門医でない先生,そして研修中の先生方に,こどもならではの診察のコツ,鎮静・鎮痛の仕方など,日常診療で少しでも役立つような特集が組めたらと考えました.また,健診から整形外科の二次検診に紹介された場合に,果たしてそこで完結できる病態なのか,あるいは専門病院に送るべきなのか,皆さん難しく感じているのではないかと思い,健診からの流れとしての項目も入れました.また,整形外科を受診する理由として一番多いのは,四肢や体幹の「痛み」だと思います.こどもが痛みを訴える場合,必ずしも整形外科疾患だけでなく,若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis : JIA)など小児科がかかわる必要のある疾患も少なくありません.そうした疾患の紹介と,小児科と連携する必要があるかどうかのみわけ方も重要かと思います.その他,外傷や腫瘍,スポーツ障害などできるだけ広い範囲をカバーするような内容としました.

1章 こどもの診察方法と鎮静・鎮痛

小児に対する診察の仕方や工夫

著者: 瀬川裕子

ページ範囲:P.468 - P.474

Point!

●こどもを蚊帳の外に置かない問診.

●年少児でも本人へ説明する姿勢.

●診断の遅れが予後を大きく悪くする疾患を見逃さない.

●専門医への紹介はためらわない.

整形外科での自閉症や発達障害のある児に対する診察

著者: 長谷川幸 ,   伊藤弘紀

ページ範囲:P.475 - P.481

Point!

●発達障害は身近な疾患であり,グレーゾーン例も含めると発達障害児と接する機会は比較的多い.

●発達障害,中でも自閉スペクトラム症児は医療現場において困難な状況が多くみられるだろうが,発達障害の特性を踏まえた対応をすることでスムーズな診療につなげることができる.

●発達障害児に特徴的な身体学的所見,尖足歩行や協調運動障害などは覚えておこう.これらの所見が発達障害の診断につながる可能性がある.

こどもに対する鎮静・鎮痛

著者: 北村佳奈 ,   一柳彰吾 ,   宮津光範

ページ範囲:P.482 - P.489

Point!

●安全な鎮静は十分な患者評価から.リスクが高ければ手を出さない.

●気道管理を制する者は鎮静を制する.

●こどもでも非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を使おう.使ってはいけないのはウイルス性感染症の発熱時である.

●アセトアミノフェンとNSAIDsは最大量を投与しよう.

2章 乳幼児健診からの二次検診

発育性股関節形成不全

著者: 村上玲子

ページ範囲:P.492 - P.499

Point!

●乳児股関節について,一次健診の現状,特に「乳児股関節健診の推奨項目と二次検診への紹介」という指針に基づいて行われていることを心得る.

●不安を抱えて二次検診を受診する保護者に接する心構えや対応の仕方を身につける.

●二次検診時における問診の目的と聴取すべき内容,触診の際の注意事項,理学所見のとり方,撮影すべき画像やその読影法を学ぶ.また,それらを総合して二次検診で正しい確定診断ができるようになる.

●Developmental dysplasia of the hip(DDH)診断後の治療の流れや,専門医への紹介のタイミングを理解する.

小児足部変形

著者: 根本菜穂

ページ範囲:P.500 - P.505

Point!

●四肢先天異常は目に見えるため家族の動揺と不安は大きい.

●家族は将来に不安を募らせるため,専門医から自然経過や治療の見通しについての説明を受ける機会をなるべく早期に設けることが重要.

●身体発育,運動・言語発達や合併異常がないか? など,足以外にも目を向けて診察する意識をもつ.

●診断に迷う場合は積極的に専門医へ相談する.

斜頚

著者: 青木清 ,   田中千晴 ,   寺本亜留美 ,   赤澤啓史

ページ範囲:P.506 - P.515

Point!

●斜頚とは,「頭部が斜めに傾いた状態」をいう.「頭部が斜めに傾き,同時に反対側に頭部が回旋している」場合と,「頭部だけが斜めに傾いている」場合がある.

●斜頚の原因は,筋性・骨性・眼性・炎症性・痙性・腫瘍性・耳性に加えて環軸椎回旋位固定,咽頭異物など多様である.

●乳幼児期には,特に筋性,骨性,眼性を念頭に置く.筋性斜頚の相談では,胸鎖乳突筋と股関節のエコー評価をルーティンに!

●感染,腫瘍が疑われる場合や原因がわからないときは,専門医への紹介が望ましい.

下肢アライメント異常

著者: 野村一世 ,   櫻吉啓介

ページ範囲:P.516 - P.524

Point!

●二次検診で来院する下肢アライメント異常は,O脚,X脚,うちわ歩行,そとわ歩行,その他の変形,に大別され,それぞれ受診する年齢が異なる.

●成長により自然矯正されるものが多いが,治療が必要な疾患の鑑別が必要である.

●疾患によっては適切な治療期間が限られるため,時機を逃さず専門医へ紹介する必要がある.

上肢疾患

著者: 柿崎潤

ページ範囲:P.525 - P.530

Point!

●自然経過でも十分に改善が期待できることが多いが,必要に応じて装具治療を行う.

●装具治療を行っても改善しない場合には手術治療を検討する.

●特に,単独指罹患の場合は改善が期待できるが,多数指罹患の場合には装具治療に反応しないことも多いため,早めに専門医に紹介することを検討する.

運動発達遅滞(脳性麻痺)

著者: 藤田裕樹

ページ範囲:P.531 - P.536

Point!

●異常を同定すること,診断をつけることは重要だが,まずは正常を知ることが優先される.

●専門医に紹介する際は,妊娠中からのエピソード,運動発達の推移を記載する.

●紹介状には必ず,自分なりの評価および診断,どの点が気になった(引っ掛かった)ための依頼かを明記する.

●この程度の症状(疾患)で紹介したら……ということを考える必要はなく,迷ったら専門医に紹介するのがベストである.

3章 学校運動器検診からの二次検診

学校運動器検診の目的と実際

著者: 吉川一郎

ページ範囲:P.538 - P.546

Point!

●学校運動器検診の源は,1898(明治31)年に学校医制度が設けられたところに始まる.

●学校検診における運動器検診の法的基盤は1958(昭和33)年に当時の文部省から発令された学校保健安全法である.

●現代のこどもは,身体の二極化現象を来しており,身体活動・運動・スポーツの不足による体力・運動能力の低下減少とその反対であるスポーツ過多によるスポーツ障害が同時に起こっているとみなされる.この二極化したこどもの健康問題を早期発見し,予防に結びつけるために実効を伴う国家的な仕組みとして成立したのが,学校運動器検診である.

●2016(平成28)年4月1日から施行されている学校運動器検診が法制化されたのは,「運動器の10年」日本委員会の啓発運動に関わった多くの整形外科医の努力に負うところが大きい.

脊柱側弯症

著者: 渡辺航太

ページ範囲:P.547 - P.552

Point!

●側弯症で最も頻度が高いのは思春期側弯症である.

●側弯症には構築性側弯症と機能性側弯症があり,鑑別が重要である.なお治療対象となるのは後者である.

●側弯症の確定診断にはX線での脊柱変形を確認する.

●思春期側弯症の治療はX線による定期的経過観察,装具療法,手術(矯正固定術)の3つに分けられる.早期発症側弯症の治療は専門性が高いので,専門医に任せるべきである.

外来で遭遇する脚長不等への対応

著者: 岡佳伸

ページ範囲:P.553 - P.559

Point!

●脚長差を来した原因の診断が重要である.患側がどちらかを見極めつつ治療へと進める.

●脚長差とアライメント不良は併存している場合が多いため同時に評価する.

●骨端線が開存しているか閉鎖しているかで治療戦略の立て方が異なるため,残存成長の予測が重要である.

●脚長差の推移により治療介入のタイミングを考慮し,保護者や本人と決定していく.

4章 痛みや跛行を伴う疾患

小児期の感染症

著者: 中村幸之 ,   和田晃房

ページ範囲:P.562 - P.568

Point!

●小児期は,免疫機能が未熟なため細菌感染が多く重症化しやすい.

●骨関節感染症や化膿性筋炎は,感染部位がさまざまで臨床症状も多様であり診断が難しい.詳細な病歴の聴取や診察によって感染部位を推定し,超音波検査で関節水腫や膿瘍形成の有無を把握することで迅速な診断につながる.

●強い炎症が持続すると骨や軟骨組織が破壊され,永続する変形を残すことになる.

●特に関節周囲の感染は近位と遠位に骨端成長軟骨があるため,適切な治療が行わなければ変形や脚長不等を生じる.造影MRIによって感染部位やその拡がりを診断して治療方針を決定する必要がある.

●化膿性関節炎や骨軟部に大きな膿瘍を形成した例では手術による切開排膿が必要になる.

若年性特発性関節炎(JIA)などの全身性炎症性疾患

著者: 岩田直美

ページ範囲:P.569 - P.574

Point!

●若年性特発性関節炎(JIA)の診療では,炎症の持続で関節破壊が生じるため,早期診断・早期治療が重要である.

●JIA診断に際しては,ほかの全身性炎症性疾患で生じる関節炎を除外する.

●慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)の好発部位である骨幹端部の病変は,悪性疾患や感染性骨髄炎でも生じるため,注意が必要である.

●壊血病やmicrogeodic diseaseで,CRMOと鑑別が必要なMRI所見を呈することである.

神経・筋疾患

著者: 伊藤順一

ページ範囲:P.575 - P.581

Point!

●神経・筋疾患は小児科,神経内科,脳神経外科,整形外科,リハビリテーション科で扱われるが,どの専門科でも本疾患の診断や治療経験のある医師は多くはないのが現実である.

●筋ジストロフィー,潜在性二分脊椎,シャルコー・マリー・トゥース病は乳児例や学童期例などで症状や所見が異なるが,視診,神経所見,画像診断を駆使してその疑いを持って診療することが何より大切になる.

●潜在性二分脊椎は単純X線で読影される無症状成人例が多いが,乳幼児時期では背殿部の正中の皮膚所見,小児期では消化器症状,泌尿器科的症状を聴取することが診断の一助になる.

●脊髄脂肪腫や脊髄係留などの治療に関しては施設間格差があり治療適応もup to dateな領域なので,経験のある施設への紹介が望ましい.

●ギラン・バレー症候群は急性の弛緩性麻痺疾患の鑑別で最も疑うべき疾患であるので,先行感染や薬剤投与歴を聴取して末梢神経麻痺を疑えば,直ちに治療可能な施設への紹介が望ましい.

●自験例であるが,筆者は股関節診療を担当している際に,9歳の股関節違和感を主訴とする症例に出会った.本例は単純X線画像で,臼蓋形成不全と股関節の亜脱臼を診断したが,足部所見や家族歴からシャルコー・マリー・トゥース病を疑い診断に至った.

痛みを伴う小児の脊椎疾患

著者: 中村直行

ページ範囲:P.582 - P.588

Point!

●腰痛を主訴に外来を受診する小児患者の約2〜3割程度しか原因診断に至ることができない.

●環軸椎回旋位固定(AARF)や椎間板石灰化症の診断にはCTが有用である一方,好発年齢を考えると被曝感受性による不利益が無視できず,症状回復を得た後の確認CTは不要である.

●腰痛を主訴とした中学男子のサッカー,野球,陸上選手の40%以上に腰椎分離症は存在する.スポーツ愛好児の場合,治療および復帰においてストレッチやリハビリテーションの重要度が高いため,紹介先は小児整形外科医ではなく,スポーツ整形外科専門医へ.

●脊椎ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)の治療におけるコルセット使用は,疼痛が存在する初期の2,3カ月のみでよく,コルセットの使用期間がその後の椎体高回復率に影響することはない.

股関節疾患

著者: 小林大介

ページ範囲:P.589 - P.594

Point!

●こどもの股関節疾患の場合,膝関節周囲の愁訴を訴える場合があることに留意すること.

●こどもの股関節疾患には大人にはない疾患が存在する.

●それぞれの疾患について特徴的な臨床所見,画像所見がある.これらを見逃さないこと.

●疾患の見逃しがこどもの将来に重篤な後遺症を残す可能性があることを理解すること.

膝関節疾患

著者: 黒河内和俊

ページ範囲:P.595 - P.604

Point!

●小児の膝関節疾患に対しては手術が不要なことも多いが,成人より慎重な診断と治療の判断が必要である.

●直近1年間に当院へ受診した小児の膝関節疾患では,靱帯損傷と円板状半月板が多かった.

●原因として,男児はサッカー,女児では体育やバスケットボールなどのスポーツによる外傷が多かった.

●小児の膝関節疾患に対する診察では,詳細な病歴の聴取と綿密な現症の把握が必須である.

●小児の膝関節疾患では,必ずしも画像検査は必要なく,病歴や現症だけで専門医へ紹介すべき疾患も多い.

●小児の膝関節疾患に対する保存治療は,成人以上に慎重に行い厳密にフォローするべきであり,手術不要と判断しても専門医へ紹介すべき疾患も多く,決して放置してはならない.

足部疾患

著者: 落合達宏

ページ範囲:P.605 - P.613

Point!

●こどもの「あしがいたい」は足に限らないので,全身性疾患を含めて鑑別診断を行う.

●骨端核や副骨骨化核が病変と一致するとは限らないので,症状との関連性を確認する.

●所見がなくても安易に成長痛や精神的なものと断定しない.

●痛みの感受性は個々に異なるので,症状が長引いても丁寧に対応する.

5章 部活動や習い事によるスポーツ障害

陸上競技におけるこども(ジュニアアスリート)のスポーツ傷害

著者: 鎌田浩史

ページ範囲:P.616 - P.624

Point!

●陸上競技の代表的スポーツ傷害として疲労骨折,肉ばなれなどが挙げられる.

●スポーツ傷害予防や,傷害発生後の活動に関しては,トレーニングの量・質を年代に合わせて検討すべきである.

●経験的判断のみではなく,客観的な指標を用いた医学的判断で受傷後の方針を検討すべきである.

●親,指導者などの意見も尊重しつつ,医学的介入,啓蒙を行っていく必要がある.

成長期野球選手と骨軟骨障害

著者: 岩瀬穣志 ,   松浦哲也

ページ範囲:P.625 - P.633

Point!

●成長期野球選手の障害は肘関節に多い.

●障害の多くは骨軟骨障害である.

●骨軟骨障害,特に肘離断性骨軟骨炎では早期発見・早期治療が重要である.

●病態を正確に把握し,繰り返し丁寧に説明することで,選手・保護者や指導者の疾患に関する理解が深まり,治療成功につながる.

こども・思春期で遭遇するサッカースポーツ傷害

著者: 深谷泰士

ページ範囲:P.634 - P.645

Point!

●サッカースポーツ傷害を診療する際には,競技特性を理解して治療にかかわることが非常に重要である.

●成長期はスポーツにおける技術や感覚を飛躍的に向上させる「ゴールデンエイジ」と重なることを念頭に置きながら診療しなくてはならない.

●怪我をしたらむやみに運動中止という選択をせずに,サッカーをしながら治療をする方法も医療者は熟知しなければならない.

●怪我の際に,サッカーを休止すべきポイント,復帰するタイミングをしっかり明示できることが,保護者や指導者との信頼関係を築くうえで重要である.

水泳に関連した発育期のスポーツ障害

著者: 塚越祐太

ページ範囲:P.646 - P.653

Point!

●ジュニア競泳選手でもシニア選手と同様に腰,肩,膝の障害が多くみられる.

●腰部障害予防プロジェクトにより腰部障害は減少傾向だが,肩障害が目立つようになってきている.

●肩障害に関しては男女で相反するリスク因子が指摘されており,予防策を模索中である.

●ルール変更やバイオメカニクス分野の新しい知見により,障害の傾向が変わってくる可能性がある.

ダンス

著者: 竹島憲一郎 ,   石井賢

ページ範囲:P.654 - P.663

Point!

●ダンサーを診療する際は,種目ごとの動きの特徴を理解して診療にあたると障害の特徴などが理解しやすい.

●バレエでは下肢(特に足部・足関節)の障害,ブレイクダンスなどでは手関節や肩関節,脊柱の障害の頻度が高い.

●診察時にはコミュニケーションを取りやすくするように,それぞれの種目で使われる専門用語などを積極的に使用する.

●医学的に正しい動きがダンスでよいとはされないこともあるため,今までのテクニックを医学的観点から頭ごなしに否定するのではなく,筋力やバランスなどの弱い点の修正を通してパフォーマンスを上げられるように提案する.1人のダンサーとして成長していけるように,保護者や教師とも連携を取りサポートを行っていく.

6章 外傷

小児肘周辺外傷の診断と治療

著者: 大塚純子 ,   洪淑貴

ページ範囲:P.666 - P.673

Point!

●肘の屈曲は摂食・整容動作に重要で,現代社会における機能的屈曲可動域は130°と言われており,また肘の伸展制限は整容的に問題となる.

●内外反変形は整容面での問題のほか,遅発性後外側回旋不安定性や遅発性尺骨神経麻痺の原因となる.

●小児では肘関節部の骨化が不十分で,単純X線像の読影が難しく,したがって小児肘外傷の診断・治療は難しい.

●本稿では小児肘関節単純X線像の読影のポイントと,頻度の高い外傷および見逃しやすい外傷について概説する.

下肢外傷

著者: 金城健

ページ範囲:P.674 - P.680

Point!

●歩行開始してまもない乳幼児期には,転倒しただけで容易に下肢不全骨折を起こしやすいことを知っていると見逃さない.

●小児期に膝関節腫脹や膝関節可動域制限が明らかな場合ははっきりとした外傷機転がなくても円盤状半月板損傷の除外が必要で,外傷以外にも股関節疾患や若年性特発性関節炎の鑑別が必要になる.

●骨盤裂離骨折で上前腸骨棘裂離骨折や脛骨粗面裂離骨折は年齢や受傷機転(走行中,ジャンプなどのスポーツ中)や身体所見,画像と合わせて診断は比較的容易である.しかし下前腸骨棘裂離骨折と坐骨結節裂離骨折は単純X線では診断が難しいことがあるので,注意が必要である.

7章 腫瘍性疾患

骨腫瘍

著者: 尾﨑敏文

ページ範囲:P.682 - P.688

Point!

●最も基本的で重要な検査法は単純X線検査である.

●臨床情報,単純X線所見,そしてMRIなどの各種画像検査を組み合わせることにより,腫瘍の良悪性,組織型を推測できることが多く,良性が確定的なら画像診断のままで経過をみることがある.

●一方,悪性疑いなら生検により病理組織検査が行われる.

●原発性悪性骨腫瘍のうち,骨肉腫やEwing肉腫は10代の小児に好発する.悪性骨腫瘍は希少がんであり,診断と治療には高度の専門性が要求される.

●外科療法では適切な広範切除が標準治療であり,患肢温存手術が一般的に行われる.

軟部腫瘍

著者: 筑紫聡

ページ範囲:P.689 - P.694

Point!

●大きくなっている,もしくは5cm以上の腫瘤は専門病院への紹介を考慮すべきである.

●軟部腫瘍の単純切除はガイドラインを遵守すべきである.

●理学所見と合わない疼痛や麻痺があった場合に,悪性腫瘍を鑑別の1つに入れるべきである.

●軟部腫瘤の診療では悪性腫瘍と感染を鑑別することが重要である.

8章 その他

被虐待児症候群

著者: 古川理恵子

ページ範囲:P.696 - P.701

Point!

●被虐待児に対する画像検査で発見される病変では,頭蓋内損傷と骨折の頻度が高い.

●乳幼児の骨折の評価には全身骨撮影を行う.全身骨撮影は,頭部,体幹部,四肢,手足の骨を分けて撮影する.

●乳児の肋骨骨折や骨幹端損傷は虐待に特異度が高い.

●乳児の微細な骨折や潜在性骨折を検出するためにも,全身骨撮影は夜間や忙しい救急外来では行わず,患児を安全な場所に保護した後,適切な条件で行う必要がある.

栄養不足による骨代謝障害

著者: 澤村健太 ,   鬼頭浩史

ページ範囲:P.702 - P.708

Point!

●現代でも特定の栄養素の摂取不足により骨代謝障害を発症する.

●ビタミンD欠乏性くる病のリスク因子で特に注意を要するのは完全母乳栄養,食事制限,日光曝露不足である.

●原因不明の下肢痛を訴え,極端な偏食のエピソードがある場合には壊血病も疑う.

●栄養不足による骨代謝障害に特徴的なX線所見は骨端線周囲(特に骨端軟骨の成長が著しい膝関節)に生ずる.

身体症状症—四肢の疼痛性障害を中心に

著者: 汐田まどか

ページ範囲:P.709 - P.715

Point!

●こどもの痛みには,身体的要因と心理社会的要因がそれぞれどの程度関与しているかをアセスメントし,心身両面にアプローチする.

●整形外科的な異常がみつからないもの,および器質的・機能的異常所見があっても痛みの程度や持続期間が説明できないものを,診断基準に従って疼痛性障害と診断する.

●若年性線維筋痛症,複合性局所疼痛症候群は確定診断が必要である.

●治療は環境調整,リハビリテーション,認知行動療法などを集学的に行い,痛みと付き合えることを目指す.

睡眠関連運動障害

著者: 田中肇

ページ範囲:P.716 - P.720

Point!

●むずむず脚症候群(RLS)の主症状は下肢を中心とした四肢の不快感や異常感覚だが,小児は症状の表現が拙いため親が脚の痛みを主と捉え,整形外科を受診することも少なくないと思われる.

●RLSは有病率が決して低くないにもかかわらずその認知度は低く,日常診療において見逃されやすい疾患である.

●RLSは睡眠障害の重要な原因疾患である.適切な診断と対応は患児や家族のQOLの改善にも結びつき,小児整形外科診療において認識されることが強く求められる疾患である.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.458 - P.459

column目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.460 - P.460

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.723 - P.723

あとがき フリーアクセス

著者: 仁木久照

ページ範囲:P.726 - P.726

 日本では新型コロナウイルスのオミクロン株による流行第6波が高止まりしていた2022(令和4)年2月24日,ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まりました.核を保有する大国が一方的に力で他国を侵略するという暴挙は,第二次世界大戦後の秩序を根底から覆し,第三次世界大戦を引き起こしかねない情勢を生んでいます.一刻も早い政治的解決を祈ります.

 さて,本増大号は「もう悩まない こどもと思春期の整形外科診療」と題し,あいち小児保健医療総合センターの鬼頭浩史先生に企画していただきました.各項目の最初に「ポイント」が記載されており,本編を読むのにとても役立ちます.小児の診療では,こども本人に加え,家族への配慮が必要ですが,ほぼ全ての項目で「家族への説明/IC」の要点も記載されています.また,スポーツ関連では「指導者への説明」,腫瘍,被虐待児症候群,栄養障害,睡眠関連では「見逃してはいけない点」,さらに「専門医への紹介」ではどのタイミングで専門医へ紹介すべきか,など小児整形外科診療に長らく携わってこられた鬼頭先生ならではのご企画です.各項目の最後のコラムでは,各著者が小児診療に携わる中でのモットーや思わず微笑んでしまうエピソードが書かれており,大変親しみやすい内容となっています.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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